第三話 父
「「ありがとうございました!!」」
姉と2人で今日最後の客に頭を下げながら声をかける。
血酒酒場は世襲制であり王国から認可をもらった一家が代々受け継ぐもので、血魔石という、ともすれば誰でも力を得られる特異性のために、王国内の治安を保つため一家内で酒場を運営しなければならないという決まりがある。
なのでどれだけ忙しくても従業員は2人なのだ。
「しっかし、毎日毎日客が来すぎだよなあ
絶対に血魔酒の需要と供給のバランスが見合ってない」
と、卓に突っ伏しながらぼやく。
「せめてあと1人か2人くらい欲しいよお
私妹も欲しかったんだけどなあ」
姉さんも同じように突っ伏しながら母さんをチラ見する。
「それはもう諦めた方がいいよ……年齢的に」
余計な俺の一言に対して姉さんが呆れた視線を向ける。
そしてカウンターのほうから何やら殺気が漏れてるが気にしないふりをする。見たら最後、破滅が待っている。
「アレン!!馬鹿なこと言う暇があるんだったら早く片付けな!そろそろタルスも帰ってくるんだから」
はーいと2人揃って返事をして動き出す。
タルスとは父さんのことであり、この血酒酒場を代々運営しているウォーカー家の現当主である。
血酒酒場はその特性上人々の生活に欠かせないものであり、王国にとって一大事業でもあるため男爵位相当の権限が与えられる。ウォーカーと名乗るのもそのためだ。
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それから程なくして父さんが帰ってくる。
「ただいま〜」
「おかえり父さん」
「おかえりなさい」
「貴族を相手にするのはやっぱり骨が折れるねえ〜
商人の値踏みするような視線も毎日キツすぎるよ
頼むからリンかアレン、どっちか早く家を継いでくれ!」
「リンはともかく俺はまだ15だよ……
あと30年くらい頑張れ!父さんなら余裕だよ!」
従業員として働くのはいいけど当主ってなると色々
しがらみとか面倒そうだしなあ
しかもこっちと違って向こうは息が詰まるし
父さんは俺たちが接客する血酒酒場から少し西にある建物で、血魔酒を提供している。なぜ2つに分けているのかというと、こちら側は冒険者などの庶民的な客をターゲットにしているのに対して、逆に父さんのところは富裕な商人や、貴族など、上流階級の客をターゲットにしているからだ。
まあ日本で例えるなら大衆居酒屋とバーみたいな感じだ。父さんは貴族兼バーテンダーという事だ。
「また調子のいいこと言って……
まあ30年は無理だけど、当分は愛する家族のために頑張りますよ」
「なんて家族思いの父親なんだ……
愛してるよ、父さん!」
「私もだよ、アレン」
ゴンッ
「「ッッッッッッ……」」
「もう日をまたぐんだよ!
明日休みとはいえ、とっとと働かんかい!!」
調子に乗っていたらいつの間にか背後に立っている母さんのゲンコツを食らってしまった……
この俺の気配探知を潜り抜けるとは恐ろしや
母強しだな
「ふふふ」
そんな光景をみていつものように姉さんが微笑む。
とまあこんな感じで転生後は
性格the酒場の女亭主、外見美人な母さん
どこか気の抜けた感じのある父さん
おっとり美少女の姉さん
に囲まれてこの血酒酒場で生きてきた。




