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第二十話:虚無に沈む魔術師の告白

カレンと時間の魔術師・エオラスの対話が始まった。


エオラスは疲労を滲ませた口調で、自らの『虚無の力』の過去を語り始めた。


「私は、君と同じ力を持って生まれた。物語を虚無に変え時間を操る力。私は、世界をより良い物語へと導けると信じていた。戦争や悲劇を消し去り、人々に永遠の幸福をもたらす『完璧な物語』を創造しようとしたのだ」


エオラスの語りには、かつての傲慢な希望と、現在の深い諦念が混じっていた。


「そして、私は失敗した」


「私は一度、人であることを捨て、思考だけの装置になろうとさえ考えた。感情も痛みも排し、ただ世界を正確に計算し続ける存在へと。だがそれは、神の理を盗もうとした愚者の行い──。傲慢で、あまりにも浅はかな妄想にすぎなかった」


エオラスは自身の能力を制御しきれず、大規模な物語の虚無化を何度も行ってしまったという。


「物語を虚無に変えるたび、私自身の心に空虚な穴が空いた。そして、その穴を埋めるために私はさらに大きな物語を吸収し、さらに深く虚無に沈んでいった。君がアウレリウスで感じた感情の虚無。それは私にとっては日常だった」


彼は続けた。


「君と私の最大の違いは『創造』の有無だ。私は古い物語を破壊することしかできなかった。破壊した後の空白に、私自身の感情が耐えられなかったのだ」


エオラスは、カレンをまっすぐ見つめた。


「君は、森を、そしてアウレリウスを再生させた。古い悲しみの物語を終わらせ、新しい希望の物語を生み出した。しかし私はその能力を制御しきれず、ついには『時間そのもの』にまで手を出し始めた」


彼は『時の狭間の塔』の存在理由を語った。


「私は、私の力が、この世界に残存するすべての物語を虚無へと変えてしまうのを恐れた。だから私はこの塔を創造した。この塔は私の力の流れを一時的に停止させ、私自身を世界の時間軸から切り離して幽閉するための檻なのだ」


エオラスは、孤独な『破壊者』として、自らをこの場所に閉じ込めるという、悲劇的な結論を選んでいた。


「カレン。君は『創造者』としてここに辿り着いた。私にはできなかった方法で、感情の反動を克服し、新しい物語を紡ぎ始めている。私の知識は、君の『創造の旅』を助けるだろう。だが、私自身は、この『幽閉の物語』を終わらせる術を、未だ見つけられずにいる」


彼は、カレンの前に一本の古い、銀色の鍵を差し出した。それはこの塔の時間操作を制御するための鍵だった。


「その鍵を受け取れ。そして、私に、君の創造の物語を見せてくれ」

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