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第十一話:古い歴史を刻む街

『時間の魔術師』の残した手がかりを追って、カレンとキリアンは東へ旅を続けた。キリアンの古い地図に示された次の座標は、世界の記録からほとんど消えた「アウレリウスの残影」と呼ばれる廃墟の街だった。


「魔術師は、物語が濃密に淀んだ場所を好む傾向にある。この街はその意味では最適だ」


キリアンはそう言い、地図を指でなぞった。


「何世紀もの歴史が、崩れた石壁の一つ一つに染み込んでいる」


廃墟の街アウレリウスは、強固な城壁に囲まれていたが、内部は時間の流れに侵食され、巨大な墓標のようだった。カレンが足を踏み入れると、肌に刺すような冷たい感覚が走った。


「ここは、悲しみや絶望だけではない、諦念の物語に満ちています」


カレンは静かに言った。


「かつて栄光と悲劇の両極を極めた街だ。古代の大戦で一度滅び再建されたが、結局は忘れ去られた」


キリアンはそう言い、崩れた図書館の跡地で古い石版を見つけた。


石版には、奇妙な螺旋状の記号が刻まれていた。それはキリアンの地図にあった魔術師のシンボルと完全に一致した。


「間違いない。彼はここにいた」


キリアンは石版を注意深く調べるうちに、ある記録を発見した。それは街の再建時「語り部」と呼ばれる者が、街の過去の物語をすべて記録し、封印したという内容だった。


「魔術師は、この街の過去の『物語』の封印を解くことで、何かを試みたのかもしれない」


そうキリアンは推測した。


カレンは、崩れた円形劇場の階段に座り込んだ。彼女の周囲の空気は、廃墟の物語を吸収しないよう張り詰めていた。しかし彼女の能力は、街の深い層に眠る、ある一つの感情を感知していた。


それは、栄光でも、再建の希望でもない。戦争で失われた、数えきれない人々の最期の瞬間の絶望。街の基盤そのものに、巨大な悲劇の物語が根を張っていた。


「キリアン、この街は……生きています」


カレンは顔を上げた。


「この廃墟そのものが、巨大な悲劇の物語を、永久に再生し続けている」


カレンのその言葉を聞いたキリアンは、ただ一つ、深く頷いた。魔術師の探求の道は、まずこの街の悲劇を終わらせることから始まると、二人は悟った。

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