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第3話 「うんうん、テンプ…これはテンプレじゃねえ!!!」

「君がテンセイ君だね」


そういって扉から入ってきたのは壮年の男性だ。

優しそうな印象だけど、仕事もばりばりこなしてそうな雰囲気を感じる。


「初めまして。私はこの地を収めるワキヤーク男爵、デイブ・ワキヤークという。この度は娘を救ってくれたこと感謝する」


そう言ってワキヤーク男爵は力強い眼差しでこっちを見てくる。


「いえいえ、たまたま通りがかったので少し手をお貸ししたまでです」


「そうか。君は謙虚なんだね」


そういって柔らかな笑顔を見せる男爵。


僕は男爵の屋敷についた後、客室に通された。

少し経った頃部屋にお嬢様と共に男爵が現れ、先ほどの会話をしたところだ。


「お父様、テンセイさんにお礼をしたいのですが」


「そうだな。せねばなるまい。でなければ貴族としての示しがつかん。いや、そうでなくとも娘の恩人に礼をせず返したとなれば恥でしかない」


僕は別にお礼なんかいらないんだけど、それを言ってもどうしようもないだろう。

諦めてお礼をもらうことにする。


「して、テンセイ君。何か我々にしてほしいことや必要なものはないかね」


「お父様、いきなりそんなことを聞かれてもテンセイさんが困ります。まず金銭のお渡しし、何か困ったことがあるならお助けする、と言った内容はどうでしょうか」


ナイスアシストだお嬢様。僕はなろう小説の鈍感系主人公ではないので図々しく貴族のひとにお願いなどできるはずもない。

それと、お金はいくらあっても困ることはない。

しかも異世界と来た。

今僕は一文なしなので非常にありがたい申し出だ。

ありがたく頂戴することにしよう。


「お嬢様の申し出、ありがたくお受けいたします」


よーし、これでひとまずお金の心配は無くなった。

さてさてこれからどうするか。

近くの宿屋に部屋を借りにいくか。

それともご飯でも食べるか。


「では今夜はうちに泊まって行きなさい。食事も作らせてあるから少ししたら使用人に呼ばせるよ」


有無を言わせない重圧感がそこにはあった。

うん。この父あっての娘だね。

貴族怖い。逆らわないようにしよう。


「では、テンセイさんまたお食事の時に」


お嬢様はそういうとくるりと後ろを向いて男爵と共に部屋を出ていった。

使用人が扉を閉める際、何かあればお申し付けくださいとだけ言い残し、出ていった。

え、なに。僕一人?暇なんだけど。

魔法の練習とかスキルの確認色々したいけど、ここじゃ無理だし。


「はあ。なんか疲れたな。」


主に精神的に。

ドカっと客室のソファに座り全身の力を抜く。

なんか眠くなってきた。

ちょっと寝るか。






「…セイさん…テンセイさん!!!」


「ハッ!」


微睡の中から目を開けるとそこには涙目のお嬢様がいた。


ん?なにこれ。

って……


「は?」


なんか部屋が燃えてる!!

えっなに、どゆこと。

眠ってる間にもしかして寝ぼけてファイアでも撃っちゃった??


「昼間のワイバーンと同じ種類が屋敷を襲い、ブレスを放ったのです!」


「うんうん、テンプ…これはテンプレじゃねえ!!!」


どうなってんだこの異世界。

異世界だからこれが普通なのか?

だめだ、わからない。


「うん、まずは逃げようか」


僕はお嬢様とそのそばにいた使用人と共に外へと逃げ出した。

外に出るとそこは地獄だった。


「うそ…だろ…」


街が燃えていた。

あまりの出来事に逆に冷静になってきた。

考えてみればこれもまたテンプレのうちなのかもしれない。

うん、そうだ。そうに違いない。


「やれやれ」


「なぜそんなに落ち着いているのですか!?」


「やっぱりテンプレだったからさ」


お嬢様はすごく取り乱している。

さっきまで泣いてたし情緒がやばい。

まあ、それが普通の反応だろうし、僕も泣きたい。

おうち帰りたい。


「それにテンプレってなんですか!?馬車の中でもいっていましたよね?」


「お決まりってことだよ。世界のお約束。定められた運命ってとこかな?」


うん。こんな運命決めたの誰だよ!ぶん殴ってやる!

幻想であってほしい。

あわよくばその幻想をぶち壊してほしい。

ハハ。現実逃避がとても捗る。


「うーん。これどうしよっか」


「どうにかできるのですか!?」


いやそんな意味で言ったのではない。

絶望的な状況を前に地域住民に意見を求めたにすぎない。

郷にいれば郷に従え。

地球にいた僕はこんな時にどうしていいかのマニュアルなんて当然持ち合わせていない。

したがって、現地民の判断を仰ぐのは当然だ。

どうしよもなく死を待つだけとか言われたらどうしよ。

うう、胃が痛い。

おうち帰りたい!!!










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