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第ニ話 何か御用ですか?御用です!

馬車から降りてきた女性はみるからに高貴そうだ。

その女性がこちらを見て言う。


「あの、あなたは?」


「危機も去ったようですし、僕はこれで」


「待ってください!」


女性はこちらに駆け寄り僕の手を掴む。

柔らかな女性の手だ。

力を込めればすぐにでも振り解けそう。

でもそんなことしたら不敬とか言われそうだしなー。


「何か御用ですか?」


「御用です!」


彼女はプンスカしながらいうと手を離した。

彼女はんっんぅと咳払いをすると落ち着きを取り戻す。


「失礼しました。私はワキヤーク男爵が長女、アンナ・ワキヤークと言います。それで、私の予想ではあなたがワイバーンを倒してくださったと思うのですが、どうでしょうか。私の騎士たちでは地面をこのようにすることはできないと思いますので」


まあ嘘をついても仕方ないし、あんまり逃げようとしたら後々さらなる厄介ごとに繋がることになるかもしれない。

僕は諦めたような顔で認める。


「はいそうです。とは言ってもあちらにいる騎士の方々が気を引きつけてくれていたり、ダメージを与えていてくれたおかげですけどね」


あくまで僕1人で倒したわけじゃないことを強調しておく。

実力以上の過大評価別れても困る。

というか実力なんてない。

ワイバーンに勝てたのはただの運だ。

いい条件が重なったからたまたまいい感じに“ぼくのかんがえたさいきょーまほう”を当てられただけだ。


「やはりそうですか。まずは、ありがとうございます。私たちだけでは全滅していたかもしれません」


「いえいえ、できることをしたまでですよ」


「それで、具体的には何をなさったのですか?私は馬車の中にいましたので何が起こったのかまではわからないのです」


「えっと、なんか魔法?を撃ってみたら倒せた?みたいな?」


「大雑把すぎます、、騎士団長、彼のいうことは本当ですか?」


大楯を持った騎士が一歩前に出て答える。


「はい。ワイバーンが距離をとった時、濁流のような炎の塊が彼とワイバーンを一直線に繋ぎ、気づいた時には何も残っていませんでした」


「そんなことが可能なのですか、?いえ今はそんなことを考えている場合ではないですね。」


彼女はこちらを向き言う。


「聞きたいことは沢山あるのですがまずは私の家に来ていただきたく思います。そこで今回の礼をしたいと思います。我が家の名にかけて悪いようにはしないと誓います」


うん、すっごい断りたい。

でもなんかさっき手を掴まれた時に思ったけど、この人我が強そうだ。

多分断れないだろうなー。

うん、さすが貴族だ。

わがままを言うのには慣れてるってわけだ。

それに、家の名にかけるなんて貴族にとっては絶対の覚悟があるんだろう。知らないけど。

こっちもこの世界について聞きたいことはいっぱいあるし、これは渡りに船なのかも?


「わかりました。ついていきます」


「よかったです。あっ、あのそれでお名前は?」


そういえばまだ名乗ってなかった。

あれだよな、苗字は後ろにつけるんだよなこれ。

この男爵令嬢がそうだし。


「僕は天星。天星神宮寺(てんせいじんぐうじ)


「テンセーさんですね。それでは私たちの馬車にお乗りください」


今思えば見ず知らずの俺を馬車なんかに乗せていいのか?

いやまぁもし危害を加えるつもりなら、あれだけの魔法を使えるんだ、小細工なんか必要ないと思われたのかもしれない。

いやーまさか異世界にきて早々貴族の令嬢を助けて、家に招待されるとはね。


「やれやれテンプレだね」


「てんぷれ?」


「いやあなんでもない。それよりその、あなたの家?まではどのくらいかかるのですか?」


「そうですね、いまから馬車で6時間くらいですかね」


6時間?この世界も24時間なのかな?

やばいなーわかんないことだらけだ。

彼女の家に着くまで質問攻めしてやるぜ!!


それから僕たちは馬車でガタゴト野を超え橋を渡り、ついに彼女の家、というよりは彼女の家がある街にたどり着いた。


「うんうん、中世って感じだね」


馬車の中で色々話には聞いていたが、概ね予想通りの街並みだ。

ちなみに時間や距離なんかは地球のものとなぜかほぼ同じだった。

1日は24時間だし、1メートルや1キロなんかも同じだった。

お金の価値は、銅貨、銀貨、金貨、白金貨と上がっていくらしい。

それぞれの価値は〜うん、なんか情報が多すぎてよく覚えてない。

また必要になったら聞けばいいだろう。

それにしても似てるなあ。似すぎじゃない?

そのほうが嬉しいから別にいいけど。


あと彼女には僕が異世界から転生してきたことは一応伏せた。

遠い地からやってきたとだけ告げた。

山で修行でもしてたと適当なことを言ったけど多分信じられてない。

だってまず服が綺麗すぎるし、山籠りなんかしてるわけない。

それに手だってしなやかで柔らかそうで、剣なんて握ったことも無さそうなやつが山で修行なんて嘘にも程がある。

街中を歩く人をみる限り、僕の服装は異世界の一般人みたいな感じらしい。よかった。

馬車のガラスにうっすら映る自分の顔を見ると前世と同じ顔だった。これもよかった。

いきなり違う顔になるなんてごめんだね。


そんなこんなで彼女の家に行くために街中を馬車が走っていると、彼女がこちらに問いかけてくる。


「そんなに珍しいですか?特段変わったところのない一般的な街だと思うのですが」


「僕にとっては全てが新鮮ですね」


だってなんかめちゃくちゃでかい骨付き肉に齧り付いてる冒険者風の人とかいるんだもん。

そりゃ馬車の窓から食い入るように見てしまうだろ。


「そうですか、それではぜひ観光などなさってください。あっ、もうすぐつきますよ」


僕は窓から馬車の前方をみると、何やら大きなお屋敷が見えてきた。

やばい想像してた以上だ。

貴族だから当然お金持ちなのはわかっていたが、考えが甘かった。

男爵だからと舐めていたのかもしれない。

普通に超でかい。学校みたいな規模だわ。

あんなにデカくする必要ある?

まあ権威とかいろいろあるんだろうな。

すごいね貴族。うん怖くなってきた。

帰りたい。おうちかえりたいよ!!


「もしかしてあれですか?」


「はい、あれが我が家です」


うん、やっぱりそうらしい。

僕は自分の能力の確認を終えるまでは舐めた態度を取らないことを誓った。

緊張してきて自然と背筋が伸びる。


「そんなに緊張なさらないでください。取って食べたりすることはないです。今回は客人待遇でお招きするのですから。肩の力を抜いてくださいね」


「善処します」


優しい笑顔で僕にそう言ってくれる彼女ははっきりいうとめちゃくちゃ可愛い。

長い金髪で青い瞳、居住まいは貴族然たる堂々としたもので、凛とした表情からたまに見せる笑顔がそれはもうギャップで超可愛い。

惚れてまうやろー!なんて冗談はさておき。

貴族のしがらみや厄介ごともあるだろうし、僕が惚れることはない(断言)

絶対に!ない!うん!たぶん!しらんけど!

まあそんなこと言っていられるほど僕は能天気じゃないので、普通に不安が勝つ。

この世界に来たばかりなのに、女の子に惚れてる場合ではないのだ。

まずは飯と寝床の確保が最優先である。

いやだーめんどくさいー。

働きたくないなー。

なんか能力をうまいことあーだこーだして稼げるといいんだけど。そしてさっさと人生ファイアしたいな。

ファイアと言わずに人生イグニスファイアストリームしたいよ?うん。わけわかんないね。







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