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第一話 やれやれテンプレだね

「いっつつ」


後頭部を打ったような痛みがする。

頭をさすりながら顔をあげるとそこは延々と広がる緑の大地だ。


「どこだ、ここ」


そう言いながら起き上がる僕の名前は神宮寺天星(じんぐうじてんせい)

日本にいた頃、急な頭痛と共に意識を失い、目が覚めると僕は平原にいた。

すると頭の中に声が響いてきた。


「君は死んでこの世界に転生することになった。あらゆる能力を底上げしといてあげるから、まあ楽しんでよ。じゃあね」


そう言って言葉は途切れる。


「やれやれテンプレだね」


どうやら僕は異世界に転生したらしい。

死ぬ前の頭痛が原因で死んだのだろう。

脳卒中とかかな?わからないけど。

なんにしろこの世界でこの身一つで生きていくと考えたらかなり不安だ。


「うん、泣きそ」


というかさっき脳内に響いた声を信じるなら、能力が底上げされたらしい。

能力って何。筋肉?才能?計算能力とかも?うんわからないね。

もしかして魔法の能力とかってあったりするのかな?

前方に手をかざし適当に呟く。


「ファイア」


すると、直径1メートル以上はありそうな火の玉が目の前に突如として現れ、前方へと飛んでいった。


「、、、」


うんうんそうだよね。テンプレだ。だとしてもちょっとサイズ感おかしくない?

なんか火の玉の着弾点が爆散してるし。怖。

脳内の声さんは魔法の力も底上げしていてくれたようだ。


「さてさて、これからどうしようか」


いくあてもなければ、ここがどこなのかもわからない。

と言うかもう帰りたい。おうち帰りたいよ。

始まったばかりの異世界転生を半ば諦めていたところ、女性の声が響いた。


「キャー!!」


切迫したその叫びは生命の危機すら感じさせる。

僕は悩んだ。日本にいた頃ならまだしも、ここは異世界だ。

何があるか全く予想ができない。

モンスターや盗賊なんかがいるかもしれない。

女性の叫び声を真似るモンスターだっているかもしれない。


「でもなあ」


もし、万が一女性が何か危機に陥ってるとして、それを見過ごすのはなあ。

あと、さっきのファイアとかいうなんちゃって呪文で飛び出した魔法があるし、敵がいたら倒せるのではないかとも思う。まあ全然効かない可能性もあるんだけどね。


「いくか」


腹を括り、声のした方へと駆け出す。


「はひ?」


とんでもない加速と共に景色が目まぐるしく変わっていく。

身体能力も底上げされているらしい。

うーん、チートだね。

風を切り、とんでもない速さで走っていくと声の発生源であろう箇所を見つける。

豪華な馬車とそれを取り囲むように守る騎士風の人たち。

それに対峙するは大きな飛龍。


「ワイバーンかな?」


全長5メートルはありそうなそのモンスターは見るからに凶悪な顎と牙で噛みつきをくりだしたり、尻尾で薙ぎ払ったりして騎士と戦っている。

時には、飛龍が大きく口を開け火のブレスなんかも放っている。

ブレスに対し、重装備の騎士が前に出て何やら大声で叫んだ後体が淡く光り、大楯でガードする。

しかし、一度ブレスを受けただけでその大楯使いの騎士はよろめいて、膝をついてしまう。


「これはまずそうだね」


急いで援護に入りたいけど、普通に怖い。

だって5メートルだよ?もう恐竜だよね。

前世で行った博物館で飾られていた恐竜の化石くらいでかいよアレ。

いやでも、アフリカゾウくらいか?

それならまだ、、、うんどっちにしろでかいや。

魔法を打つにしてもこの世界はフレンドリーファイアは当然ONだろうし、射線を考えないとな。

僕は戦闘に夢中担っている両者を余所に、気配を殺して機を伺う。

気配を殺したことなんかないから適当に息を潜めているだけなんだけどね。

30秒ほど経った頃、一人の騎士が何やら剣に光を纏って飛龍を切りつけ、飛龍は後ろに大きく距離をとった。


「ここだ!」


僕は手を前に突き出し大きく叫んだ。


「イグニスファイアストリーム!!!」


すると、炎を凝縮したかのような熱線がありえない量出て、瞬く間に飛龍に迫り跡形もなく消し去った。

地面には赤く溶けた地面が飛龍の方向へと一直線に露出しており、それは地平線まで続いている。

うん、思った以上に高火力だ。

だってさ、ファイアで倒しきれなかったらもっと厄介な事態になってたかもしれないジャン?

だから、希望的観測を込み込みのマシマシでもっと強そうな呪文唱えたらもっと強い魔法出るかなーってやってみたら結果は期待以上。

というか、強すぎて怖い。

モンスターが燃えて力尽きると思ってたのに、何。なんで跡形もなく消滅してるの?

人に当たらなくてよかったー。

僕は冷や汗を流しながら呟く。


「これもテンプレだよね。だよね?」


もうテンプレが嫌いになりそう。

何はともあれ倒せたならそれでオッケーじゃないか。

うんうん。終わりよければすべてよし。

僕は思考を放棄することで平静を取り戻す。

そこで馬車の中から一人の女性が降りてくる。


「この地面は、、、それにあのワイバーンはどこに行ったのでしょうか?」


その時、騎士全員がこちらを見る。

うん、そんなに見ないでよ。照れるじゃないか。

嘘です。この空気いたたまれないです。やめてください。




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