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私はクールな推しが好きなのに!!!  作者: がくあじさい
1/1

卯月

隣の席のクラスメイトは陽キャで明るい。で私のことがちょい好き?らしい。が、いまだに謎。

 いつぐらいからだろう。彼から話しかけられるようになったのは。たぶん、私の人生はつまらないせいぜい漫画の脇役程度だったと思う。校則を破らず、まじめに生きている陰キャ。でも、もしそれが変わって私を主人公にしてくれる、そんな人がいたら?私がどんなに二次元のクールなキャラが好きでも、太陽みたいなその人に恋をしてしまうのは仕方がないことだろう。とはあんま思わんし、正直陰キャ1番楽なんだけどなー。


 私は女子にしては背が高い。だから、そのせいで背の順ではいつも一番後ろ。不審者が来た時、一番に襲われないかいつもひやひやしていた(訓練でね)。男子より背が高くて、黒板なんて楽々消せた。身長なんていらないから、もっとかわいく生まれてくればよかったのに。私はいつも両親にそういうけど、『背が高いのは良いことだよ』の一点張り。それは次第にコンプレックスになっていた。


 そして彼は、チビだった。いつもクラスの中で明るくて運動が出来たり、面白くて生徒会長だったり、クラスで十人以上にモテてるイケメンだったり、そういう人たちの会話の中心となって話していた。ほんとに現実世界でもいるのね、こんな人たち。一方休み時間本を読みふけって過ごしている日々。一番楽しいのは、本を読み終わって自分が主人公の家族だったら、恋人だったらどうするのかを考えること。つまり私たちは、別世界にいるの。なのに、私と隣とか、ダル。なんか絡まれそうだしやだな。


 休み時間。話しかけてくる。クラスメイトの義務だから、当然答える。

「何の本読んでんの?」

「『スチュワーデス物語』だけど…。」

「楽しいの?」

「うん、おもしろいですよ…?」

『面白いの?』???ふーん、つまんなそ。今度貸してよ。それぐらいは考えられた。でも、楽しい?私は本が好きだから読んでいるだけ。楽しい…の?

 言葉に詰まる。上目遣いで反応を見る。彼は言う。

「楽しそうじゃないから聞いてんの。つまらなくはないでしょ、それ。有名だし。」

「え、まあ。いやあのですね、えっと…」

「別にそんな固くなるなって。てかさ、俺らと一緒にドッジやりに行こうぜ。ほら。」

「え?暑いので嫌ですが」

「まあまあそんなこと言わずにさー、ほら!」

 何か知ってる、この軽さ。このノリ。教室を出て、なんか手捕まえられて、走って階段を下りる。てかほとんど引きずられてるんだけど、速い。何も考えられない。いや、もちろん、肺で呼吸が出来なくて酸素が回ってないから。そんな中、ただ、頭の中に浮かんだのは一言。『こいつチビなのに!』


 昼休み。図書室にいて本を借りて読む。毎日通っているから、図書の先生とは仲良しこよし。奴はまたやってくる。今日は外遊びの日じゃないのに。身構える。

「今日は何読んでんの?」

「『嫌われる勇気』アドラー心理学をテーマにした話です。」

「ふーん。難しそうな本。」

 ちょっと沈黙。早く行けと、本を読みながら念を送る。それで、つい上目遣いに見てしまったのがいけなかったか。それとも、花粉症で目が潤んでいたのがいけなかったか。すぐに、爆弾。私は音楽止まって、持ってた人。

「ねぇ、俺のこと好きなの?」

 息が止まって、手が止まって、目がとまって

 ついでに心臓もとまった。出てきた言葉は、いつぞやの少女漫画のセリフのパクリ。

「え、なに私のこと好きなの?」

「…」

 沈黙は暗黙の了解なんですけど。

「好きになって貰えるようなになれば?」

 男になれば?って言いかけてやめる。こいつはチビだ。私は空気だ。意識を無くして。本を読むために、自分の領地を守るために。てか、タメ語…。やっちゃった。

「え~、六時間目は班で、計画を練ってください。もうすぐ、伊能忠敬記念館に行きますから。とまあその前に、しおりを配ります。表紙は明日。大事なとこは各自でマーカーひいといて。はい、じゃ質問は?」

「せんせ~、表紙の色は?」

「確か、薄い赤だったかな。」

「えー、もえ、ビビットピンクがよかった~」

「ビビ…?はい、ほかに?ないなら配るよ。向き逆にならないように気を付けろよ~」

 伊能忠敬記念館か。確か天文学者・地理学者・測量家の人じゃなかったっけ?ていうか、班か。班長私なんだよね。信用度はまあまあまあある方だと思ってるけど。てか、そのために行動してるけど。班になって司会をする。いつもはうっさいチビが今日は静か。真面目そうな顔をしてなんかぶつぶつ言ってる。暖房病のせいだろ、顔赤いし。私は、大事なところをピンクの蛍光色で引く。


 一時間目、遅刻してきたチビはそのまま寝てる。起きてんのは国語の授業ぐらい。でも、その気持ちは分かる。国語の授業はいつも面白い。そもそも先生が面白い。そういう大人にならないけど、なりたくなるような大人。人生経験を積んだだけ物事が良く分かるっていうのは、こうゆう先生のことを言うんだと思う。先生には奥さんがいて、子供も二人いる。たぶん先生のお気に入りの話は娘さんが帝王切開をして生まれてきたってやつ。帝王って言うと、ドラゴンボールの北の界王を思い出す。個人的にあの人好き。なんかゆるキャラっぽくて、あとぽっちゃりしてて。 


 今日の給食はきなこ揚げパン。食べる方法って素手かティッシュかはしじゃない?ちな私ははし派。ふと横を見るとチビがいない。そっか、給食当番じゃん。前を向いてたらふいに、学級委員長がパンを落とした。まじか。仲、いいけど、パンは好きだし…。明るいその人も、ちょっとおろおろ。で、チビが異変に気付いた。

「あ、リコ、パン落としたの?」

 ちょいちょい。あんま目立たせるなって。ほら、クラス全員がそっち見てんじゃん。あんたの声がでかいから。

「先生、パン洗ってきます!」

「「「アハハハハ!!」」」

 キラーん。見たよ、私は。リコの顔が染まるを。ていうか、水びだしになったパンって…。まずそ。でも、ピンチを救える(?)のって…。まあ…。私のカイト様もそんなこと(創作小説で)してたな。


 転校最初の週に宿題を忘れてからかわれてる主人公に向かって

「俺も、忘れた」

「えー?でもカイトのつくえにあんじゃ…」

「忘れた。黙れよお前ら。邪魔だ。」 主人公をからかっていた幼馴染とその取り巻きは、すごすごと引きさがって。主人公は礼を言うけど。

「別にいいって。あんたのためじゃないし。」

 とかいっちゃてさ~。まじカッコイイ。やっぱ二次元サイコー‼

 ちなみにカイト様っていうのは私の推しで、現役Vtuber!無所属なんだけど、企業に負けないくらいのリスナーをお持ちで、ゲームバリうま!Vtuberなのにあんましゃべらないってレアで良いよねぇ…。

「おい、お~~い、おい!」

「ひゃっ!」

 突然耳もとで大きな声がしたから、変な声が出ちゃったじゃん。

「な、なに?」

「給食始まってるよ。食べないの?」

「えっ?」

 チビに驚かされたのは癪に障るけど、給食は実際始まってた。

「あ、ありがとう。」

 礼を言いたくないけど。

「別にいいって。給食…じゃなくて、かわいそうだったからさぁ。」

「え?あっ、うん。」

 良かった、きなこ揚げパン食べそびれないですんだ。もぐもぐ。

 うん?あれ待って、何気なくひどいこと言われそうじゃなかった、さらって。

『別に(しょうがないから)いいって、給食(のおばさんがかわいそうだろ、残ってたら。でもこれは言わん、怒られるし)…(えっと)かわいそうだから(くれぐれも君の事じゃないからね)さぁ。』

 なんなのよ、思考回路が、小5の男子だよ!!なんか、こいつのことが一ミリも分からん。

乞うご期待

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