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-3- 袋

 妙なもので、世相の変化で暮らし向きが厳しくなると、人は物を大事にする傾向が高まる。それまで捨てていた物を捨てなくなり、洗ったり修理したりすることで、もう一度使おう…と思う訳だ。実に結構なことである。^^ その逆で、暮らし向きが良くなるにつれ、困ったことに物を粗末に捨てたり使わなくなったりするのは困りものだ。その最も分かりやすい一例が袋である。私は、これを経済指標の一つと捉え、袋係数と呼んでいる。エンゲル係数[全家計支出に占める食費の割合]のようなものが袋係数[全家計支出に占める蓄えた袋枚数の割合]だ。^^

 篠川は一週間前までゴミとして捨てていたコンビニやスーパーの袋を大事に畳んで残しておくようになった。というのも、食品を買ったときの袋がレジで有料化され、… … と思うでなく思うようになったからだ。^^ 感心、感心っ!^^

「一夜漬けか…」

 一念発起、篠川はパソコンの検索で得た知識を利用し、過去にもらったコンビニやスーパーの袋で一夜漬けをすることにした。

「父さん、何してるの?」

 とある深夜のキッチンである。受験勉強をしている長男の幸起が、冷蔵庫を開けてガサゴソ探している篠川に小声をかけた。

「んっ!? お前と同じ一夜漬けだ。…妙だな? ここに入れておいた袋、お前、知らないか?」

「知る訳ないだろ。…あっ! 母さんが腐ってるわ、とかなんとか言ってたよ」

 幸起は自分の勉強を一夜漬けと言われたことに、僕の受験勉強は一夜漬けじゃないっ! と、少し怒れたから、不機嫌に返した。

「そうか、ちょうど食べ頃だったんだがな…」

 篠川は未練っぽく冷蔵庫を閉め、お茶漬け海苔を茶碗に入れた冷えたご飯にふりかけた。篠川の心境は、袋の一夜漬けを摘まみながら軽く一杯の茶漬けを…という思いだった。

「父さん、今頃どうして?」

「会社の残業でな、食い損ねたんだ…」

「ふぅ~ん…」

 父さんも世相が右肩下がりで大変なんだな…と幸起は哀れみっぽく父親を窺うと、勉強部屋へ撤収した。

 袋にもお金がいる世相です。庶民は大変なんですよ! 政治家諸氏っ!!^^


                  完

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