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第九話 腹黒令嬢は王宮に部屋を得る

王宮侍女メートヒェンに、シュヴェアートの世話のために王宮に住むよう勧められたシャイデ。

国王シルトに近付けると喜び勇んで王宮へと向かったシャイデでしたが……?


どうぞお楽しみください。

 ……流石に早朝だと王宮も静かね。

 王宮侍女メートヒェンの話だと、一日も早くシュヴェアートの世話役が必要みたいだし、モイスヒェンの妨害も心配だったから、日の昇る前に王宮へやってきた。

 この時間なら遅いと言われる事はないだろう。

 メートヒェンからは、


「シュヴェアート様のお部屋は、シルト陛下のお隣になります。場所は……」


 と事前に説明されているので、案内も必要ないし。

 ここを曲がると……。


「!」


 部屋の前に人影……。

 こんな時間に一体誰が……?


「……どなたですか」

「れ、レーレ卿!?」

「……シャイデ様」


 シュヴェアートが何故部屋の外に!?

 私を待っていた!?

 まさか!

 ……ん? よく見ると……。


「……あの、レーレ卿……? そこで寝ていらっしゃったのですか……?」

「はい」


 いや、『はい』って……。

 何ですぐ近くに自分の部屋があるのに、陛下の部屋の前に椅子を置いて、壁にもたれて寝てたの……?

 そして天を衝くかのような寝癖……。

 初めてシュヴェアートの髪を梳かした時は、何故こんな寝癖が付くのかと思ったけれど、こういう事だったのね……。

 という事は……。


「……あの、レーレ卿は毎晩そこで陛下の護衛を……?」

「はい」


 ……嘘でしょ……?

 確かに陛下は若くして即位されたけれど、その譲位は実に平和的なものだった。

 ここまで厳重に警護する必要はないと思うけど……。

 それとも私が知らないだけで、陛下の身辺は危険なのかしら……?


「まだ睡眠の時間ですので、シャイデ様は部屋でお休みください」

「部屋、と言いますと……?」


 メートヒェンに聞いた時には、


「行けば分かるようになっていますから、ご安心ください」


 とだけ言われたから、それ以上は聞かなかったけれど……。


「そこの部屋です」

「え、でもそこはレーレ卿のお部屋では……?」


 ……まさか!


「はい。どうぞお使い下さい」


 シュヴェアートと相部屋だなんて……!

 話が旨すぎると思った!

 このままでは、本当に鞘にされてしまう……!


「私は着替えの時位しか使用しませんので、どうぞ遠慮なく」

「え?」


 ……確かに毎日陛下の部屋の前で椅子にもたれて寝るのなら、寝室としては使わない……。

 寝る時でさえそうなら、休息の時間もなく陛下の警護をしているという事……?

 つまり交代もなく一人で陛下の側で守っている……。

 シュヴェアートは何故そこまでして陛下に仕えているの……?


「申し訳ありません。側に人がいると眠れませんので、部屋に入って頂けますか」

「あ、は、はい。申し訳ありません……」


 言われるまま部屋に入る。

 寝台と衣装箪笥。

 椅子と小さな卓。

 それ以外は何もない……。

 本当に空き部屋のようだ……。


「……」


 寝台に手を触れる。

 侍女が整えているのだろう。

 埃が乗っているような事はないけれど、使われている様子も感じられない。

 シュヴェアートの言っていた事が事実だと分かり、貞操の安堵を感じると同時に疑念が頭を支配する。

 わざわざシュヴェアートの結婚相手を探す陛下の、ともすれば行き過ぎのように感じられる配慮。

 しかしその実シュヴェアートは部屋で眠る事もなく、陛下に仕えている。

 ……まぁいい。

 王宮に部屋を得たのだ。

 ここから調べていけば良い。

 陛下の事も、シュヴェアートの事も。

読了ありがとうございます。


同室でドキドキ、とはならないようで……。


次回もよろしくお願いいたします。

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