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第六話 腹黒令嬢は妹の願いを振り払う

日課のように軽食とお菓子を作り、シュヴェアートの元に運ぶシャイデ。

それを妹モイスヒェンは快く思わないようで……?


どうぞお楽しみください。

 さて、今日は良い海老が入ったからそれをパンに挟んだ。

 お菓子は檸檬と蜂蜜を入れた薄焼き菓子。

 意味はないかもだけど、可愛い袋に詰めて……。

 よし、行きますか。


「お姉様!」

「何? モイスヒェン」

「またそんな侍女のような真似をなさって……!」


 ……何よ、良いじゃない。

 昔は私が厨房に立つと、


『なにをつくっていらっしゃいますの!? わたしとフェストのおやつですわよね!? どうかひとつだけあじみを……!』


 なんて言っていたのに……。

 あぁ、あの頃は可愛かった……。

 今でも容姿だけは抜群に可愛いのだけれど……。


「お姉様はハイルング子爵家の長女なのですから、自覚を持った行動をお願いしたいものですわ」


 言うほど高貴な家柄ではないのに……。

 平民だったひいお祖父様が何かの功績で先々代の国王陛下に爵位と領地を賜ったのが始まりだから、貴族の風習はあまり身に付いていないのよね。

 領地の経営が安定してからは、モイスヒェンとフェストには貴族の家庭教師をお願いしたけど。

 ……まさかそれで私の事を恨んでいるのかしら……?


「それにレーレ卿は王宮にお住まいです。お姉様の作る地味な料理では喜ばれないのでは?」


 まぁ確かに喜んではいない。

 でもお腹を空かせているのだから、やはり何か食べさせてあげたい。


「無駄な事はお辞めくださいな。いくら私が先に婚約者を決めたのが悔しいからといって、料理で歓心を買おうだなんて、みっともないと思いませんの?」

「……そんな風には考えていないわ。ただレーレ卿に召し上がっていただきたいだけよ」

「!」


 モイスヒェンの顔色が変わった?

 私がシュヴェアートの為に料理をするのがそんなに意外かしら?


「……そうですか。ならば今日は私も王宮に連れて行ってくださいませ」


 何言ってるのかしらこの子は……。

 そんなにシュヴェアートに会いたいのかしら?


「……何故そんな事を……?」

「義理の兄になるかも知れない方に会いたいと言うのは自然だと思いますけど?」


 そんな目をしていないでしょう……。

 まるで獲物を狙うような鋭い目……。

 ……これは会わせる訳にはいかない……!


「駄目に決まっているでしょう。王宮への許可証に名前が刻まれているのは私だけなのですから」

「お姉様の付き添いと言えば通れますわよ。それとも何か私がレーレ卿とお会いして困る事でもありますの?」


 ある。

 シュヴェアートが無表情で黙々と食べる姿を見たら何を言われるか。

 それにシュヴェアートも男。

 見た目だけは抜群に良いモイスヒェンを見て、心が動かないとは言い切れない。

 ここは強引に押し切ろう。


「正式に婚約者になったならまだしも、まだお互いを知り合う関係の中で、家族に会わせるのは失礼に当たるわ」

「で、ですが……」

「話は終わりよ。私は王宮に行くわ」

「お、お姉様……」


 モイスヒェン。

 貴女が焚き付けたのが悪いのだからね。

 私は王妃になる。

 その足がかりであるシュヴェアートを失う訳にはいかない。

 たとえ貴女がシュヴェアートに心惹かれていても。

 決意を胸に、私は厨房を後にするのだった。

読了ありがとうございます。


「王の妃に私はなるっ!」どんっ!!!

世は正に大恋愛時代!

……恋愛?


次回もよろしくお願いいたします。

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