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第一話 人形剣士は鞘を求める

新連載です。

腹黒い令嬢が主役のラブコメです。

よろしくお願いいたします。

 はぁ……、見込み違いだったわ……。

 若い未婚の娘を集めた晩餐会。

 会場は王宮。

 玉座に座るは最近即位したばかりのシルト・ケーニヒ陛下。

 年は二十五。

 となれば王妃探しの会だと思うじゃない!

 なのに陛下は挨拶したらどこかへいなくなり……。


「シュヴェアート様! 次は私とお話いたしましょう」

「はい」

「次は私でよろしいですか!?」

「はい」


 会場に残された陛下の直属剣士シュヴェアート・レーレの嫁探しの様相を呈している……。

 私以外の令嬢は黄色い声を上げて、シュヴェアートを取り囲んでいた。

 まぁ顔だけは整っているものね。

 絹糸のようにたなびく銀色の髪。

 蒼い瞳が飾る涼やかな目元。

 しかもその美形が崩れる事はない。


「きゃー! つまずいてしまいましたわー!」

「大丈夫ですか」


 露骨に抱き付かれても、眉一つ動かないシュヴェアート。

 整いすぎた顔立ちと、心が無いかのような無表情。

 付いた呼び名が『人形剣士』。

 観賞用には良いでしょうけど、身分は国王直属剣士。

 領地も爵位もない男なんて、結婚相手には向かないわ。


「あの、ハイルング様はレーレ卿とお話されないのですか?」


 横に来た侍女の言葉に、私はすぐさま笑顔を作って応対する。


「えぇ、レーレ卿が皆様とお話をし終えたら、最後に少しご挨拶をいたしますわ。……それより陛下はどちらに?」

「隣室で休息なさっていますわ」

「ありがとうございます」


 となれば閉会の際には出てくる可能性が高いわね。

 そこでまず一声かける!

 シュヴェアートに令嬢達が気を取られている今日こそ好機!

 私の狙いは王妃一択!

 それで私を見下したモイスヒェンに一泡吹かせてやるんだから!

 あぁ、早く閉会にならないかしら……。

 あ、それまでの間に陛下の情報を集めないと……。


「ちなみに陛下のお好きなものとか教えて下さらないかしら?」

「え、あ、はい……。やはり陛下はこの国と国民を心より愛されておりますわ」


 そういう事じゃなくて!


「何か食べ物でしたり娯楽でしたり、そういったものでお好きなものは……」

「そうですね……。甘いものはあまり好まれないご様子ですね」

「そうですか……」


 くぅ、うちの領内で作らせてる蜂蜜菓子は献上しない方が良さそうね……。


「遠乗りとかはなさるのかしら?」

「馬に乗られるのはあまりお好きではないようで、領地の視察に行かれる時は馬車にお乗りになる事が多いですわ」

「そうですか……」


 馬も駄目か……。

 最近牧場で良い馬が育ってきてるのに……。


「それでしたら今日この席に出されているお料理の中で、一番お好きなのは……」

「うーん……、普段こういったものはあまりお口になさいませんので……」

「そうですか……」


 普段はもっと豪華なものを召し上がっているのかしら?

 胃袋から攻める作戦は、一から考え直した方が良いかしら……。

 でも服や宝飾品で陛下の目を引くのは難しいと思うのよね……。

 領内の特産品をもう一度洗い直して……。


「君」

「はい?」


 顔を上げると彫刻が目の前にあった。

 違った。人だ。シュヴェアートだ。

 改めて近くで見ると、つくづく人間離れした美しい顔立ちね。

 ってあれ?

 さっきまであっちで令嬢達に囲まれていなかったっけ?


「君が良い」

「え?」


 何が?


「私の鞘になって下さい」

「は?」


 ……鞘になって下さい?

 それってどういう……。


「!?」


 そ、それって、男の人の、あ、あれを収める鞘になれって事!?

 な、何考えてるのこいつ!

 今日会ったばかりで、一言も交わしていない女性に……!


「な、何を仰っているのか分かりかねますわ!」

「そうですか。説明が足りませんでした。シルト陛下から『妻を持たぬ男は剥き出しの剣も同然だ。収める鞘となる女性を見つけよ』と言われたのです」

「……シルト、陛下の……?」


 つ、つまりこの会は本当にシュヴェアートの嫁探し……!?

 しかも陛下主催の……!?

 そこに勘違いとはいえ出席して、ここで断ったら……!

 でも何で私!?


「な、何故私ですの……? 他にも令嬢は沢山……」

「君が一番静かでした。だからです」

「……!?」


 ど、どういう事……!?

 本気で妻となる女性を選ぶ気はないのかしら……?

 つまり鞘云々も陛下に言われて嫌々……?

 だから一番自分に興味のなさそうな私を選んだ……。

 ……とすればこれは好機……?

 こいつを足がかりにして陛下に近づき、こいつには適当に大人しそうな令嬢を当てがって関係を解消すれば、私は晴れて王妃の椅子に!


「……初めまして。シャイデ・ハイルングと申します。まずはお互いをよく知るところから始めたいと思いますわ」

「はい。シュヴェアート・レーレです。よろしくお願い致します」


 こうして私はシュヴェアートと仮初の恋人となった。

 でも絶対指一本触れさせない!

 私は王妃になるんだから!

読了ありがとうございます。


シャイデの野望の行方やいかに。


次回もよろしくお願いいたします。

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