中性的な彼……彼女?との恋物語。
そんな風に俺が勝手に彼…いや、彼女?の性別に悶々と悩んでいると、ふと距離が狭まるような出来事が起きた。
それは数学の授業の最中だった。
「それじゃあ、ここの答えを答えてもらおう……仁科!」
隣の席に座る仁科和希は、先生に名前を呼ばれたというのにうつらうつらと眠たそうに瞳を擦っていた。
寝ぼけ眼の仁科に、俺はノートの切れ端に答えを書いてそっと渡してやる。
すると仁科は驚いたような表情を浮かべて、切れ端に視線を落とすと嬉しそうに笑った。
そしてそのまま黒板へと答えを書きに行く。
「x=4の2乗です」
そう言って黒板にすらすらと答えを書いた仁科に、先生は頷いて赤いチョークで丸を付けた。
「………昨日夜更かしでもしたのか?」
俺は隣に戻ってきた仁科にそう小声で尋ねる。
すると仁科は、困ったような照れ笑いを浮かべてこう言った。
「そうなんだ、ちょっと好きな作家さんの新刊小説を読んでたら…いつの間にか午前3時を過ぎちゃって」
頬を軽く掻きながら笑う仁科の横顔は、とても綺麗で可愛いと思った。
……この際仁科が男でも女でも構わないんじゃないか、そう心の中で誰かが囁いた気がして俺は余念を振り払うように頭を横に振った。






