学校1の美少女が夜中に俺の部屋に侵入していた~俺のパンツ盗んで自家発電しているってマジですか?~
「あれ…おかしいな…」
俺の名前は桜田伊月、2カ月前に高校2年生になったばかりの容姿、頭脳共に平凡な男子高校生だ。
そんな俺だがあることに気づいた。
「パンツがない…」
俺のお気に入りの青のボクサーパンツがない。昨日たたんでタンスにしまっていたはずだが見当たらない。一応ベランダや部屋中を探したが見つからない。
仕方なく俺は違うパンツを適当にタンスから取り制服に着替えた。
◇
「いってきまーす」
見送ってくれる人はいないのについ癖で言ってしまう。
俺の通う神崎高校は家から通うには遠かったため1人暮らしを始めた。妹を除いて両親は心良く俺の背中を押してくれた。
「いたっ!?」
突如、後頭部を鈍器のようなものでしばかれた。
とは言っても犯人は分かっている。
「おいラケットで俺の頭を叩くな、俺はボールじゃないぞ?」
幼馴染の柳木芽衣。
明るめな茶髪のポニーテールにくりっとした大きな目、部活動で鍛えたであろう身体は引き締まっており、胸もそこそこある。無駄に容姿が良い。
スポーツ女子と言われれば、学校の全員が芽衣と答えるだろう。
「伊月はわたしのボールだから」
「なんだそのジャイアン方式は!」
さっき俺の後頭部をしばいたラケットをブンブンと振り回していてたまらず叫んだ。去年の芽衣の誕生日にプレゼントしたラケットが俺を苦しめている。部室に置いていたらいいのにいつも持ち歩いている。
「まあでも県内の期待のエースのボールになれるなんてある意味誇らしいな」
芽衣はテニスで全国的に活躍するであろうと言われている注目の選手だ。
去年は不慮の事故で怪我をしてしまい大会に出ることはできなかったが本人も、今年こそはと意気込んでいる。
「ほ、褒めたって何も出ないんだからね!」
頬を少し赤くし、プイッとそっぽを向く。
「なんだそのツンデレみたいなセリフは」
「ツンはあってもデレはない!!」
「うがっ!?」
さっきよりもはるかに強い威力で後頭部をラケットでしばかれた。
◇
学校に到着し、下駄箱で芽衣と別れた。俺は2-2組で芽衣は2-4組とクラスが違う。
まだ芽衣に叩かれた頭が痛い。頭をさすりながら俺は教室に入り奥の窓側の列の1番後ろの席につく。我ながら席替えの引き運の良さに惚れ惚れする。
芽衣はああいう暴力的なところが無ければ普通の可愛い女の子なのに。
「桜田くんおはよう」
「あっおはよう七宮さん」
声の主の方に視線を向け、挨拶を返す。
隣の席の七宮咲さん。
七宮さんは学年…いや学内1番の有名人かもしれない。黒髪のショートカットに、誰もがすれ違うと振り向いてしまうほどの整った容姿。そして性格も良くてみんなに優しく、勉強も常に上位をキープしている。文化部ではあるものの運動部にも負けない運動神経を持っている。七宮さんほど完璧な人は見たことがない。
「ん?あーまた柳木さんに叩かれたの?」
俺が頭をさすっていたのを見て察してくれたようだ。
また…というようにほとんど毎日朝からラケットでしばかれている。
「そうなんだよね。あいついつも朝容赦なくラケットでしばいてくるんだよ。家出る時間変えてもなぜか遭遇してしまうし…」
「ふーん…」
さっきまでの笑顔がなくなり少し考えこむように七宮さんの表情が硬くなり真顔になった。
普段あまり見ない表情にゾッとする。
「どうかしたの?」
「いやなんでもないよ。相変わらず仲が良いんだね?」
「えっ良くないよ、たぶん芽衣は俺のことボールとしか思ってないよ」
「きっと柳木さんは桜田くんのことーーー」
チャイムが鳴り七宮さんの言葉が途切れる。チャイムは朝のHRの合図で担任の先生は厳しい人なので教室は静かになりみんな席に着き始める。俺と七宮さんも前に向き先生が来るのを待った。
(七宮さん何言おうとしたんだろ…)
最初は気になったものの先生の長話の間に忘れてしまっていた。
◇
靴箱で上靴と外靴を履き替えて校門を出る。
俺が住んでいるアパートは学校から歩いて10分程の場所にある。本当はもっと近いところがあったが、少しは運動しないといけないと思いこのアパートにした。2階建てでそれぞれの階に4部屋ずつあり、俺の部屋は2階の正面から見て左から2番目だ。内装は入ってすぐにテーブルとキッチンがあり、3つのドアがある。左にあるドアはトイレとお風呂に繋がっており、正面の2つは左が勉強部屋で右が寝室となっている。家賃が安い割には部屋も広く、管理人のおばちゃんも優しいのでとても気に入っている。
アパートに着き、ドアの鍵を開けているとポストに何か入っているのに気づく。俺は部屋に入り鍵を閉めたあと、ポストの中身をみる。
中には茶色の紙袋が入っていた。
(なんだろう、これ…)
そう思いながら紙袋を開き、ひっくり返して中身を出した。するとビニール袋に入ったあるものと手紙が入っていた。
(えっ…嘘だろ、これって…俺のお気に入りのパンツじゃないかっ!?)
今朝失くしたと思っていたパンツが届けられていた。
何か犯罪の匂いがする…。
いやでも、もしかしたら俺がタンスに入れたのは気のせいで、干していたときに風に飛ばされて親切な人が届けてくれたのかもしれない。そうだ最初からそんな不審がるのはよくない。
俺は紙袋に入っていた手紙を開く
『ありがとうございました、おいしかったです』
アウトーーーーーーー!!!!
これはあかん、あかんよ。
何『ありがとうございました』って、いやそれ以上に、『おいしかったです』のほうがもっと意味が分からない。何、食べたの?俺のパンツ食べたの?そんなエロマンガのキャラみたいなやつがこの世にいるのか!?
俺は一応パンツの安否を確認するためビニール袋を開ける。
すると、ふわっと良い具合の甘い、いい香りが広がってくる。
「どこかで嗅いだことあるような…」と思ったがあいにく変態の知り合いはいないから気のせいだろう。
(それにしても良い洗剤使ってるんだな…いや何俺は感心してるんだよ。相手は俺のパンツを盗んで何
かしらのことをした変態だぞ!)
一回俺は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
紙袋には俺の住所が載っていないので宅配などで送ったのではない…つまり夜中か俺が学校に行っている間に部屋に忍びこみ、タンスからパンツを盗んだあと、何かしらで使用して律儀に洗濯をしてかつ、手紙も書いて直接返しにきたのか…。
警察に連絡をしようかとも思ったが、あまり大きな騒ぎにもしたくないため自分自身で犯人を探すことにする。それにまた忍び込んでくる可能性もあるし、忍び込んできたら犯人をそれで特定し捕まえたらいいし、もう忍び込んでこなかったらそれで解決だ。
「まあ今は考えても仕方がないか」
俺は夕食の準備を始めた。
夕食を食べ終わったあと宿題をして風呂に入り、今日することは終えた。
ベッドの上でゴロゴロしながらテレビを観ていると今人気急上昇中のアイドルの神宮寺花音が警察の活躍を紹介する番組のゲストとして出ていた。
神宮寺花音は俺と同じ高校2年生の16歳だ。
スラっと胸ぐらいまで伸びた銀色に輝くレイヤーロングにきめた髪。スレンダーでよくへそ出しの身軽な衣装を身にまとっており、ネットでへそ出しの頂点と言われファンから崇められている。
確か出身地は俺の実家と同じで、アイドルデビューをして人気が出てからは関東方面へ活動拠点を移したらしい。自分と同じ出身地だと親近感がわいて応援したくなるものだ。
『花音ちゃん最近気になる事件とかありますか?』
『そういえば最近家に不法侵入して金品を盗む事件が多いですよねー』
司会の人にふられて神宮寺花音が答えた。
さっきまでぼけーーーっとしながらテレビを観ていたが『不法侵入』という言葉が聞こえて「はっ…!?」と意識が覚醒した。
すると専門家のような人が話し始める。
『鍵を掛けていたら安全だとは思ってはいけません。ほんの少しの工夫と技術を身につけてしまえば鍵なんて簡単に開けてしまいます』
そう言ったあと専門家の人が実際に鍵を開けて見せると言い始め、スタジオに家を再現した道具が持ってこられた。さすがに鍵を開けているところは放送されなかったが、ほんの1分程度で閉ざされたドアの鍵を開けてしまった。
俺はその様子を観て鳥肌がたった。
俺の部屋に入った人もこの専門家の人のように簡単に入ってきてしまうのだろうか。
少し怖いなと思いながらもふと時計を見るとちょうど0時をさしていた。
「そろそろ寝るか…」
テレビと部屋の明かりを消して布団をかぶった。
◇
「眠れない…」
せっかく頭からあの紙袋のことが離れていたのに、テレビのせいでさらに恐怖が盛られて帰ってきた。
それに手紙の内容も気になり始めてますます眠れなくなってしまった。
時計を見る。
(もう2時なのか…2時間目を瞑っていても眠れないなんて重症だぞ…)
全然眠れないためスマホで眠る方法を調べようとしたときだった。
ガチャガチャ
と音が聞こえてくる。
(ん…なんの音だ…?)
俺は疑問に思いながら耳をすます。
(あれ……ちょっと待て…この音俺の部屋のドアからしてね!?)
割と近くから聞こえるこの音は間違いなく俺の部屋のドアの鍵を開けている音だ。
(嘘だろ!?来るとしてもパンツ送ってきてこんなすぐに来るとは流石に思わないよ!!)
いや待て落ち着くんだ。
もしかしたらパンツの人とは違う危ない人かも…いやそれもっと嫌だよ!!あっそうだ…!もしかしたら両隣さんのどちらかが酔っ払って自分の部屋と間違えて鍵を開けようとしているのかもしれない。
そうだそうに違いない。
あっ、でも俺の両隣誰も住んでないーーーーー。
ガチャッ
(ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!!!!)
明らかに鍵が開いたような音が響いた。
そしてギーーーーとドアが開く音がする。
(まじか…あっ靴を脱いでる音がする。意外と普通な人…なわけねえだろ俺!!人のパンツ盗んで「おいしかったです」という手紙とともに返してきた変態だぞ!?)
ドアノブに手をかける音がする。とっさに寝たフリをしたがどうやら隣の勉強部屋のほうに入ったらしい。
俺はベッドから立ち上がり壁に耳をあてる。
[はあ…はあ…はあ…]
やけに息が荒いように聞こえるが俺の男としての本能が察した。
(これは…ただ疲れたときの息荒れなんかじゃない…興奮しているときの息荒れだ…!!)
何がとは言わないがちょっと良い動画をみたとき女性がこんな息をしていた…。
何がとは言わないが。
(しかしこの音は女性だな…完璧にヤバイ人だな…)
すると勉強部屋から何か引き出しを開ける音がする。
(引き出し…勉強部屋に置いてある引き出しのもの…タンスじゃないか!?)
[スー…ハー…スー…ハー…スー…ハー…スー…ハー…スー…ハー…スー…ハー…]
(いや何回スーハーしてるの!?そして俺の何をスーハーしてるんだ!!)
ドアが開く音がする。
(やべえこっちくる!?)
音を立てないよう気をつけながら俺はベットに戻ろうとするが動きを止める。
(違うだろ俺…捕まえると心の中で意気込んでたしゃないか…勇気を振り絞るんだ!!)
俺は覚悟を決めてドアノブを手をかけ、ためらうことなく開いた。
するとそこにいたのは1人の少女。
誰が予想できただろうか…そしてどうしてここにいるんだ。
「なっ…七宮さん…?」
「桜田くん…」
俺のパンツとTシャツを大事そうに抱きしめていた七宮さんがそこにいた。
予想外の人物…知り合いだったということも驚いたが、それよりも学校で1番の有名人ともいえる七宮さんが犯人だということに俺は動揺する。
「ということはあの手紙も…」
「読んでくれたの!?」
瞬間移動のような速さで俺との距離をつめて、俺に身体を預けてくる。胸が当たっており、七宮さんの心臓がすごい速さで動いているのが、恐ろしいほど伝わってくる。ただただ嬉しそうに息が荒く興奮していた。
「う、うん読んだよ」
俺は戸惑いながらも答えた。
すると急に目をキラキラさせながら語り始める。
「そっか~そうだよね。あんな内容の手紙と自分のパンツが届いたら気になって夜も眠れないよね。あれはね、ちゃんとした感想を桜田くんに伝えたくて勇気を振り絞って書いたんだ」
七宮さんの興奮はとどまることをしらず「はあはあ」と呼吸していて俺に身体を預けるだけでなく段々と力強く押しつけてきている。温かくやわらかい感触が全身に感じるだけでなく服装が服装だった。
「えっ!?七宮さん何て格好してるの!?」
さっきまで暗くて良く見えていなかったが下は着ておらずYシャツオンリーだった。
「大丈夫!下着は履いているから!」
俺から少し離れてYシャツの上から2つのボタンを外し始めてチラッと俺にピンク色のブラジャーを見せつけてくる。
そしてYシャツの下の方を指でつまんでまくり上げると上のとお揃いのピンクのパンティーが姿を現す。
「ほら履いているでしょ?」
「ち、違うっ、そういう問題じゃなくて…!」
俺は慌てて目を瞑り、手で七宮さんを視界から隠す。
その様子をみて七宮さんは近づいてくる。
「桜田くん…もっとわたしを見てください。わたしの恥ずかしい姿を…」
耳もとでそう囁いてきながら獲物を捕まえる蛇のように俺の身体にまとわりついてくる。
腕で俺の体を抱きしめ、片足を俺の股の間に無理矢理に入れてくる。
「わかった、わかったからとりあえずボタン閉めて!!」
「……仕方ないな、ほんと桜田くんは恥ずかしがり屋なんだから」
七宮さんは少し残念そうにしながら俺から離れてボタンを閉めてくれた。
よかった…ん……あれ…?
「な、七宮さんそのYシャツって俺のじゃ…?」
「脱衣所にあったから着ちゃった☆」
「着ちゃった☆」じゃないよ!しかも今日学校に来て行ったやつじゃないか。
あれ…待てよ…さっき俺のパンツとTシャツ持ってたよな…。
「七宮さんさっき持っていた俺の服は?」
「あっパンツとTシャツ?」
せっかく『服』と言って濁したのに普通に『パンツ』とTシャツって言ったよ!もはや今までの七宮さんのように恥らいなんてないのか…!?
すると七宮さんは後ろに振り向いたかと思うとアタッシュケースを手に握っていた。
何コレ?こんなのドラマで札束が入っているところしか見たことないよ。てかいつの間にその中に入れたんだよ。アタッシュケースを開くと綺麗に畳まれた俺のパンツとTシャツが入っていた。
Tシャツはきっとさっきタンスから取ったのだろう。
しかしそのパンツは……!!
「そのパンツ俺がさっきまで履いてたやつじゃん!!!」
お風呂に入るときに脱いだやつだ…間違いない。
すると「えへへっ」と自分の頬をかきながら
「新鮮なパンツがあったから〜つい」
「新鮮なパンツって何!?」
とうとう我慢出来ず、今まで心の中だけでツッコンでいたものが口から出てしまった。
脱ぎたてホヤホヤという意味ですか?食べ物とは訳が違うぞ!
「その…返してくれる?」
俺は手を差し出す。
「絶対に嫌です!この子…この子たちはわたしの宝なんです!わたしの宝を取ろうとしないで!!」
膝から崩れ落ち、うるうると泣きそうな目で俺を見つめてくる。
ここだけ見たら俺が悪いみたいに聞こえるな…。この子って…七宮さん…君が大事そうに抱いているのは俺のパンツだ。
「じゃあ…そうだあの手紙!あの『おいしかったです』ってどういう意味?」
俺がずっと気になっていたことを問いただすと顔をさっきまでよりさらに赤くし、もぞもぞしながら恥ずかしがっている。
「それは…その…桜田くんの匂いを堪能しながら…1人で…」
「わかった。それ以上は言わなくていい」
俺は嫌な予感がして、話しを中断させる。これ以上はR18タグをつけないといけなくなる。
「そしたらその時に汚してしまって…そのまま返すのは申し訳なくて洗って返しました…」
「えっ…?」
つ…つまり俺のパンツは発電時に漏れた液体によって汚されたってこと…?
まだどこかで七宮さんのことを普通の美少女と思っていたかった。
しかし、七宮さんは本物の変態だ、只者ではない。
実際今、本人がいる目の前で俺のTシャツを「すー…はー…」と深呼吸をしている。まるで最高級の料理を堪能しているような幸せそうな顔をしている。
警察に通報すべきなのか…?だが、同級生が補導されるところなんて見たくない。
それに七宮さんは料理や手芸など色々な才能がある。きっと才能だけではなく裏では人の何倍もの努力をしていたに違いない。そんな人の人生を俺の手で終わりになんてしたくない。
「七宮さん、話しがあるんだ」
「ど、どうしたのそんな真剣に…」
俺はさっきまでとは違い、真剣に七宮さんと向き合うことにした。
七宮さんもさっきまでとは違う俺の真剣な雰囲気に戸惑いながらも顔からTシャツを離し、ぬいぐるみのように抱きしめている。
「七宮さんがしていることは犯罪なんだ。もし俺が警察にでも通報したら七宮さんの人生はおしまいだよ?でもね俺は通報なんかしたくない。七宮さんはいつもテストの学年順位は上位だし、料理や手芸だってできる。みんな七宮さんが生まれながら持っていた才能だと言うけれど、きっとそれは俺たちが知らないだけで、みんなが見ていないところで必死に努力してきたからなんだと思う。それだけ頑張るってことはきっと将来やりたいことがあるんだろ?その将来のためにもこんなことはもうやめるんだ」
俺は柄にもなく熱く語ってしまった。
しかし俺の思いが伝わったのか七宮さんはTシャツを手放しており、大きく見開いた目から一粒の涙がすっと頬を撫でるように流れた。
「ご、ごめん泣かせるつもりはなかったんだっ…」
俺は焦って「こういう時どうすればいいんだ…」とワタワタしていたが、七宮さんは俺に抱きついてきた。
大粒となった涙を隠すかのように俺の胸に顔をうめる。
「ごめんなさい…ごめんなさい」
七宮さんの姿は感動する映画のクライマックスのワンシーンのように美しかった。
「大丈夫、ちゃんと将来に向けて頑張っていこうな」
俺は七宮さんの頭を撫で、逆の手で優しく抱きしめた。髪はとてもさらさらで高級な生地のように触り心地が良かった。身体はとても柔らかく少し力を加えると壊れてしまわないか心配になるほど繊細に感じた。
「桜田くん………」
まだ少しうるうるした目で俺を見上げる。今まで見たどの七宮さんよりも可愛く見えた。俺は優しく微笑みながら七宮を見つめる。
「やっとわたしの気持ちに気づいてくれたんだね!!」
ん?
「うれしい…わたし今とても幸せ。今までずっと将来のために頑張ってきて良かった…」
さっきまで悲しそうに泣いていた七宮さんはどこに行ったのだろうか、今までにないほど幸せに満ちた表情をしている。
あまりの七宮さんの感情の飛躍から脳の処理が追い付いていない。
「ごめん…ちょっと聞きたいんだけど、将来やりたいことって何?」
「桜田くんのお嫁さん!!」
なんてこったーーーーー!!!!てっきりデザイナーや料理人てきなのが来ると思ったらお嫁さんですか!こんな美少女からお嫁さんになりたいと言われて嬉しい反面、実は不法侵入して服盗んで1人であんなことする変態という事実に混乱する。
「桜田くんに似合うお嫁さんになるために今まで料理や手芸とかの家事も頑張ってマスターしたし、どんなシチュエーションのデートになっても対応できるように勉強や運動もできるように頑張ったの!」
七宮さんの言葉に俺は圧倒される。今まで努力してきたのは全部俺のお嫁さんになるため。
その『俺のため』というのが心に刺さった。
「パンツを盗んだことはごめんなさい…桜田くんのことを想う気持ちが我慢できなくて…いつでも桜田くんのことを感じていたかったの」
七宮さんからのマシンガンのように放たれる愛の言葉に顔が赤くなってしまう。
そんな俺を見て七宮さんの興奮は絶頂を迎える。
「桜田くん…さっき『将来に向けて頑張っていこうな』って言ってくれたよね。つまり結婚しよっていうプロポーズだよね!!」
「えっ…ちょっうわっ!?」
勘違いだと否定しようとしたがそれよりも早く七宮さんは俺を押し倒し、俺に覆いかぶさるような体制になる。
「プロポーズ記念に今日は2人で初めてを迎えよう?もう学校なんか休んで愛しあおう?」
そう言って七宮さんは着ていた少ない衣服をすべて脱いだ。七宮さんの白い肌と大切な場所が目に入ってくる。
そして俺のズボンを脱がそうとする。
「えっちょっと待って七宮さん、これはまずいよ!?」
「えっ?あっ上半身から脱がして欲しかった?」
「違っ、そういう意味じゃっ…」
俺は必死に抵抗をするも呆気なく上半身を脱がされる。七宮さんは俺の上半身を指でなぞる。身震いをしながら「はうっ」と男らしくない声を出してしまう。
「かわいい…♡」
目がとろんとなっている七宮さんは大人の雰囲気を漂わせながら舌舐めずりをする。流石の俺も理性が崩壊寸前になる。
や、ヤバイ耐えろ息子、耐えてくれ!!!!
「さっ早く2人で初めてを…」
ほ、本気だ。本気で俺をヤろうとしているっ!?これは本当にヤバイ!
誰か、誰かーーーーー!!!
バタンッ!!!
アパートの部屋のドアが勢いよく開く。
「何してるの!?」
玄関にその少女は立っていた。
俺と七宮さんは玄関に立っている声の主の方に視線を向ける。
「め、芽衣ーーーー!!」
慌てて走ってきたのかすごく汗をかいており、「はあ…はあ」と息があがっている。
素晴らしい…!興奮とは違う頑張って走ったからこその「はあはあ」はこんなにも素晴らしいものなのか!
「柳木さん、わたしたちの愛の巣に何のようですか?」
あの穏やかで温厚な七宮さんからは想像できないような鋭い視線で芽衣を睨みつける。
わたしたちのではない、ここは俺の家だ、愛の巣でもない!というか俺にならまだしも芽衣にこの状況を見られても動揺しないのはなぜだろう…本性がバレても良いのか?
「ここは伊月の部屋であって七宮さんとの愛の巣ではないわ。……い、伊月にはもっとお似合いの人がいるのよ!」
芽衣も負けじと睨み返し、そして最後のほうはなぜか少し顔を赤くしながら言っていた。
「あらそうなんですか?そのお似合いの人って最終的には絶対に負組で主人公とは結ばれない幼馴染という属性を持ったテニス部のことではないですよね?」
「ま、負組なんかじゃないわよ!ハッピーエンド迎えている作品もありますーー!」
話にはまったくついていけないが白熱した女の戦いに俺は圧倒された。
しかし、七宮さんの意識が芽衣に向いている隙にはやく離れよう。
今のままだと精神が持たない。
「ぐは!?」
そう思い身体を起き上がらせようとすると胸あたりに手を置かれて床に押しつけられた。
「桜田くんごめんなさい。わたしと早く愛を確かめ合いたいのは分かるけど今はこの人と話しをしないといけないみたいだからもう少しだけ我慢してね」
違う違うそうじゃない!俺は決して己の欲に我慢できなくて起き上がろうとしたのではなく、七宮さんから離れるためなんだよ。
ぐっ…すごい力だ…ボディービルダーか何かに押さえられているようだ。
「伊月から離れて!」
芽衣も参戦して七宮さんのわきに腕を回し俺から引き剥がそうとする。俺も必死に抵抗してなんとか七宮さんから離れることに成功した。
「…わかりました。今日のところは諦めましょう」
七宮さんは少し残念そうな表情で立ち上がった。
よかった諦めてくれた…今日のところはというのが少し気になるが良しとしよう。
そして新ためて七宮さんを見ると裸であることを思い出し俺は顔が赤くなる。
「見るな!」
「目が、目がーーー!!」
そんな俺が芽衣は気に入らないようで俺に目潰しをしてきた。視界は奪われ、何も見えなくなる。
「そんなんだから桜田くんに嫌われるのよ」
「う、うるさい!こんな事で伊月は嫌いになんかならないんだから!」
いやこんなことって!普通に目潰し痛いわ!
「今日着てきた服、桜田くんの部屋に置いて帰ろうと思っていたのに残念…着替えなくちゃ」
えっ置いて帰ろうとしていたの?もし俺が警察にでも連絡したら簡単に捕まっちゃうよ?というか俺にみつからなかったらどうやって帰るつもりだったんだろう…。
「じゃあね桜田くん、また学校で」
そう言って七宮さんは何にも無かったかのように帰っていった。
良かった…嵐は過ぎたようだ…
「ありがとう芽衣、お前がこなかったらどうなってたか…」
「別にたまたまアパートの前通ったらあんたの部屋の前でゴソゴソする怪しい奴が見えたから見にきただけだから。別に心配とか…そういうのは一切ないから!」
「そ…そんなに否定しなくても…。てかこんな時間に外でうろちょろしてたのか?女の子1人では危ないぞ?」
「外に出てなくても危なかった男の子は誰でしょうね?」
飽きれたような表情で見られる。
「おっ…仰るとおりです。でもこういう状況になったらやっぱり男の方が怪しまれるけど、すぐ俺の味方してくれたよな?」
「怪しい人が見えたからもあるけど…それよりもあんたはそんなことする奴じゃないってわかってるから。伊達に何年もあんたの幼馴染してないわ」
少し恥ずかしそうに言う芽衣に俺も恥ずかしくなり視線をそらした。
芽衣はなんだかんだ言って俺を見守ってくれるような優しいやつだ。
人気が出たら連載版も出そうと思います。
良ければ他の作品もどうぞ
『男子大学生の僕、ストーカーから助けた女子高校生に付きまとわれている』
連載https://ncode.syosetu.com/n1930ia/
短編https://ncode.syosetu.com/n0273ia/
『幼馴染といつも一緒に登校しているけどなんで俺が家出るタイミングが分かるんだ?』
https://ncode.syosetu.com/n8751hz/