6話
庭に出るのは初めてだった。身体が小さいから大きく感じたが…屋敷を含めて600坪程度だろうか…。そこまででもないのか…。
屋敷の掃除は乳母かフィーリーがやっている。使用人らしき人がいない個人の屋敷…お掃除が行き届いてないんじゃないかとときどき感じる。
広くなくても全然問題無さそうだ。
前世の事を考えたら…実家より3倍ぐらいデカい…。
実家は田舎だったし…土地の利用方法も場所によるから、なんとも言いがたい。
フィーリーは宮廷魔道士の指南役…どれぐらいの立場か気になる。
あとは立地条件は気になる。食べ物屋もあるだろうか。
最近は美肌スキルを上げるためにイソフラボンを摂取したり、腸内環境正常化スキルを上げるためにビフィズス菌を食べさせられていた。ヒアルロン酸やコラーゲンなどなど意味もわからないものを続々追加予定らしい…。
「貴様が…フィーリーが虎の子に育てているガキか」
50歳ぐらいだろうか?
筋骨隆々で筋肉が締まっている。服からはみ出した分だけ見たら相当鍛えたのだろうというのがわかる。肌は淡褐色。
右腕は義手をはめているが、仕込みとかもあるのかもしれない。
立ち振る舞いに迷いというものを感じないからなんとなくそう思ってしまった
子ども体型で会うと萎縮してしまうが…
それより
「首…痛い」
「俺に座れってか、なかなか肝が据わってる」
1m80cm近い肉巨人を見上げなきゃいけないのだろうか。身長差を考えて欲しいものだ
「座ってやるよ…仕方ない」
顔が近いし、顔に傷がある。
威圧してないだろうか
子ども泣かせの顔を近づけて欲しくないもんだ
「動じないか…なかなか面白いかもしれないな。バランス型だと攻撃型の倍の修練を積まないといけないが…果たしてついてこれるか……はぁ…こんな小さいガキに鍛えてやれって正気か」
正気ではないでしょう
正気だったらあんたを呼ばないでしょう
「俺はサグマという退役軍人だ…フィーリーには貸しがあるからな…。金銭的な意味で……まぁビシバシ鍛えてやるからな」
金銭かよ。お金にだらしない人なのだろう。
階級とかそういうのを教えてくれって感じはするが聞くのも不自然かもしれない
「まずは走り込みだ…。って…1歳になったばかりのガキに伝わるかよ。無茶が過ぎる…こんなの子どものお守りじゃねーか」
久しぶりに困っている人をみる…。乳母が最初そんな感じに頭を抱えていた。
背中を押したら転びそうな子どもに走りこみを要求するのだ。
喋るのも辿々しい子どもを相手に間違えている
「うん…?走る…わかった」
そこからはスタミナがつきたら、魔力を消費した。
走り込みと魔力消費を交互におこなった
「なかなかガッツがあるな…。子どもの遊び感覚っていうのがよくわからない…楽しいのかこれは」
「おい、ガキ。強くなりたいか?」
首を横にふる
「フィーリーがやれって」
「人形かよ」
「…疲れるわ…まぁ1歳のガキに主体性を求めるのも酷な話か」
主体性ね…主体性を主張したのにこんな場所に送られてきたんだ。
どうせ、すぐ死んでも自称神に突っ返されるしな。怒らせるのも怖そうだ。
というか名前も顔も分からん神の連絡先を教えてくれ。
今は少し熟練度稼ぎが楽しくなってきたから話に乗っているが…愚痴を零す場所は欲しい
走り疲れたこともあり夜はお風呂にも入らず汗だくの格好でぐっすり眠ってしまった
ただ、朝起きるとアロマオイルの香りが身体からしてきた。
寝ている間に何かしらのスキル稼ぐつもりなのだろうか。
アロママッサージの手配か…?
熟練度稼ぎの方向性も怖い。
女性に囲まれている環境で、美肌にこだわる。
出来上がり想像図を教えてほしいものだ…。
ハーフエルフという長寿だから余計気にしているのかもしれない…。
いろいろと、お金つぎ込まれると胃が痛くなる。どうしても前世での金銭感覚を引きずる。
改めて…乳母やサグマの気持ちがわかった気がする。
やり方がガチ勢なのだ。宮廷魔道士の指南役を務めていて、普段生ぬるさを感じているであろうフィーリーを相手にしているのだ。
半端な仕上がりにするつもりはないらしい
いろいろと私室の回りに増えている
保湿クリーム、UVカット…。
保湿クリームで肌に潤いを持し、UVカットクリームで紫外線をカットする。
潤い補正、紫外線耐性の熟練度でも上げるのか
熟練度をみるが知らない熟練度がいろいろ上がっている。
履歴にはダメージエフェクトが入っている。毛穴に対してだ。
あとは、エストロゲン耐性の熟練度が微妙に入っているのはさすがに性別が違うから…おかしい
美青年にしたいのだよね…と思うことにした。
去勢するために男の子を買い取ったのだとしたらしたらイカれ具合はすごい。