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20 後編:歴史観/リーダーシップ

支離滅裂なところが多く、大幅に書き直す可能性があります。いろいろなご意見もあると存じます。お願いですから、突っ込まないでください。歴史観は書けば書くほど泥沼にはまります。皆さんに退屈せずに読んでいただける長さにまとめるのは至難の業ですね。

(4)歴史観


 ニホンはね、他の国と海で隔絶されているから、攻め込まれたという経験がほとんど無いの。陸地で国境を接している我々は、常に緊張しているでしょう。そんな緊迫感に欠けているのね。

 危機は2千年間で3回くらいなものよ。一度目は国の体裁が整った頃のことで、大陸の小国の応援で駆け付けたら、後ろ盾となっていた大国が出てきて大敗してしまって、大慌てで防戦の準備をしたわ。このときは何事もなく済んだの。二度目は、大陸に世界帝国が成立して、このちっぽけな島国も配下に納めようとして迫ってきたの。このときは、幸運にも大嵐がやってきて、相手が退却してくれて難を逃れたわ。

 問題は三度目よ。人が乗れる大きな鳥のような兵器が開発され、海が防御の役目を果たさなくなって、とうとう攻め込まれて負けたの。

 でもね。この敗戦が逆に国の勢いを増してしまったのよ。前も言ったとおり、経済戦争での逆襲ね。敗戦でね。自分たちだけでは簡単にできない改革ができちゃったの。金食い虫の軍隊を解散して、他国の軍隊を駐留させるとか、身分を世襲する貴族制度を廃止して、地主の持ち物だった農地を小作人に分け与えるとかの大改革を実施できたの。どれも戦争に負けなければできない荒治療よねえ。

 この戦争は、軍人と民間人を合わせて300万人の死亡者を出し、生き残った者も困窮を極めた代償だったわけよ。無責任な言い方をすると、負けて良かったと言えるわね。

 300万人よ。この国だったら全滅ね。王子が改革に苦慮しているけれど、誰にも痛みを負わさずに穏やかに進めようとするから大変なのよね。天変地異が天から降ってくれば、為政者ならそれを絶好の機会と捉える必要もありそうね。痛い目を見る国民はたまらないけどね。


 ニホンの国が大きく発展した転機がね、敗戦の前にもあったの。封建制から立憲君主制に移行するときよ。“メイジイシン”て呼んでいるわ。

 ニホンの支配体制はね。長い間、二重だったの。絶対的な神にも等しい天子様というお方が存在するのだけれど、その方は権力を持っていないの。権威だけね。その下に実質的な支配者層が武力で国全体を押さえつけるという構造ね。いうなれば、権威層、支配者層、それに民衆という三層構造ね。

 これがメイジイシンでどうなったかというと、支配者が交代したのではなくて、構造自体が大きく変わったの。支配者層がね、それ以前の支配者層の内の下層階級に取って代わられたの。そして、この下層階級と被支配者層=民衆が一体となったのよ。境目が無くなったということね。もちろん、この一体となった階層の中だってピンキリよ。要は、実質的に二重構造に変化したということね。これが“(権威は)君臨すれども統治せず”っていうわけね。


 それでね、この下層支配者層を中心に官吏という連中が形成されたの。いわゆる役人、木っ端役人ね。私が常々考えているのは、彼らこそが国の原動力じゃあないかってね。メイジイシン44年の中で10倍以上大きな国相手に二度、戦争を仕掛けて、二度とも勝利を収めてしまったの。原動力は、この官吏が組織的に導いた結果だと思うのよ。で、軍部がね、勝利は自分たちのチカラだって勘違いして、周辺国を侵略し始めたの。そりゃあ軍隊って、戦争のことしか考えなくて考慮が足りないの。広い視野から見ると馬鹿なのよ。


 実はね。前にも話題にした国の危機の3回目が起きる10年前から軍部がクーデター的に政治の主導権を奪取し始めたの。これ、皆さんも肝に銘じておいてほしいな。

 簡単に言うと、Aという政治グループが、外国との交渉で軍隊の力をお互いに削減しましょうという約束を交わしたの。それに対して、力を持ちたい軍部は当然、怒るわよね。「軍隊の指揮権は国王にある。それを臣民が勝手に左右するとは権限の侵害だ」って主張したの。国王は権威だけなのだけれど、形式上は軍隊の最上位指揮権者なの。でね。Aグループの反対勢力であるBグループが軍隊に同調して一緒になって責めたのよ。一時の損得勘定でね。それで官吏の機構は瓦解したわ。軍部に取って代わられたの。立憲君主制って脆いところがあるのよ。


 私たちのこの国は今、絶対王政を過ぎて、議会を重視する立憲君主制へ移行し始めているわ。たぶん皆さんは、官僚や官吏の職に就かれるはずよね。賄賂とか横領なんて絶対にダメだからね。法律の知識と役所の人間関係を縦横に駆使すれば抜け穴を突くなんてことは朝飯前よね。もう、自分で律するより他はないのよ。

 お願いよ。国の将来は皆さんに懸かっているのよ。


 私の家の前世の先祖はね、さっき言った封建制領主の下級官吏だったの。代々ね。で、言い伝えがあるの。一人が領主の政策に反対して結局、死罪を申し渡されたの。儒教の世界だからね、忠君思想が厳しかったのよ。それはね。ハラキリよ。わかる? 刀を自分でお腹に突き立てて、真横に切るの。想像できないわよね。その先祖はね、おなかの臓物を手で掴んで投げつけたというわ。凄まじい気力よね。で、その領主はノイローゼになって早死にしたらしいの。呪いよね。

 もう一人はね。領内で農民が反乱を起こしたときに一人で立ち向かったというわ。領主や上役が逃げてしまったんだって。それで、いつでも腹を切る覚悟をもって、真っ白な死に装束で出て行ったの。反乱の代表者から言い分を聞いて、ちゃんと処置をしたのちに、反乱はご法度だからといって名乗り出た首謀者に死罪を申し付けたの。これも苦しいわよねえ。我が家では、こういう関りがあった方々も先祖と一緒にお祭りしていたわ。

 要は、気概を持ってね、っていうこと。えっ、私? か弱き乙女よ。みなさん、守って頂戴ね。


(5)リーダーシップ


 最後は、国の指導体制の話よ。人間は能力に優劣があるのだから、優秀な人間が国の行く末を考えて指導をして、そうでない劣っている人間はそれに黙々と従えばいいって考えることができるわね。効率的だし、そのために身分があるって。

 そう、世の中が単純なら、その通りなのよ。

 ところが、実際の世の中は複雑なの。一つの国には多くの地方があって、地形も天候も歴史も異なる。それらが複雑に絡み合っているのよ。そして、それらはてんでんばらばらに変化していく。すべてのことを把握するなんてことができるかしら。すべての未来を正確に見通すなんてできるかしら。予測できない事故は発生するし自然災害も襲ってくる。また、他の国とは貿易の関係が常に変化し、戦争だって起こる。技術の革新が世界のどこで始まるか分らないのに、それが普遍化すると世界が一変してしまう。私たちは何度も経験してきたわよね。

 それを一部の人間だけの判断で事を進めれば、失敗するわ。無理強いすれば行くつく先は圧政よね。そりゃあはじめ、多くの人は指導層の声を信じるわ。権威も権力もある声だから、同調せざるを得なくなる。反対なんかできない。でも、個人が無視され、少数派が抹殺されるという結果を招くわ。暴走よね

 ね、一部のエリートだけに、国の舵取りを任せられるはずはないでしょう。

 そういえば、私が転生する少し前に、ニホンの隣に一部のエリートの指導する大国が大発展したわね。そろそろ滅んでいるころじゃあないかしら。

A、Bと軍部の三角関係は、皆さんがお見通しのように、統帥権干犯とうすいけんかんぱん問題を指しています。


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