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18 前編:自然観

【特別講義】編は、作者の勝手な妄想です。たぶん、お読みいただく価値はありません。

 ロバート王子と神官長からご依頼があったので、私が前世で暮らしていたニホンという国について話しますね。この国をこれから担おうという皆さんの、何がしかのお役に立てればうれしいけど‥‥。ただ、あくまでも私個人の見立てであって、一般的な認識ではないから、注意して聴いてね。数字なんかもウロ覚えで、いい加減よ。


(1)自然観


 ニホンという国はね。小さな島国なの。位置的に、とてつもなく大きな大陸の東の端の、海の中に浮かんでいるの。極めて遠い東という意味で、“ファー・イースト”、“極東”と呼ばれていたわ。だいたい、その世界には130の国があって、ニホンの広さは60番目ほど、10倍以上広い国が6つもあるわ。

 それで、そんな10倍以上広い国と3度、戦争をしたの。2度は勝ってしまったわ。世界中がビックリよ。それで図に乗って仕掛けた3度目は負けて辛酸をなめたの。ところがその後、負けた相手に貿易戦争で勝ってしまったのよ。経済力は一時、世界2位まで伸びたわ。その後は3位で落ち着いているようだけどね。

 どう? おかしくない? 同じ人間なのにね。ニホンて、そんな国よ。


 ニホンの特異性の根源は、寒暖差のある季節の存在と、地形的な不利が大きいといわれているわ。

 まず、季節はね。春夏秋冬がはっきりしているの。温かくなり花や緑が芽生えて農作物を植える春。作物が育ち海を裸で泳げる夏。葉っぱが色づく実りの秋。そして雪が降る寒い冬ね。これはわが国も同じね。

 地形はね、ほとんどが山岳で平地が少ないのよ。まあ、人々はそんな平地にへばり付いて住んでいるわけね。そして、このなけなしの土地に数多くの自然災害が襲ってくるのよ。ほんとに容赦がないの。


 まず、火山ね。山の多くは火山で、噴火するわ。噴火って、解る? 山が天に向かって火を噴くのよ。そしてそれが地上へ落ちてくるの。大量の岩や灰ね。また、赤く溶けた溶岩や高温のガスも噴き出すわ。その場にいた人間に逃げる方策は無いわね。

 火山があれば地震もあるわ。地震って、地面が揺れるのよ。この国では経験できないわね。小さいものから大きなものまであるわ。私の経験だと、そうね、微小なものは月に1回の頻度で感じたわ。極めて大きなものは全国で10年とか20年に一度ね。それは突然に襲ってきて、山は崩れるし、家は倒れるわ。だから、法律で家を強固に建てるように決まっているの。たぶん、この国の一つの都市が全壊するような地震が来ても、ニホンだったら何事もなかったように生活が続いていくわ。

 そして、この地震で怖いのが津波よ。海の中で崖崩れが起きると、とんでもなく大きな波が発生するの。10メートルもある大波が向かってくるなんて想像できるかしら。街が飲み込まれたら、水の勢いで建物は壊れるわ。その大波は引き際に、壊したものを全てさらっていって、跡は平地になってしまうわ。住んでいた人も一緒にさらうのよ。

 地震は地下深くで岩塊が壊れることで起きるというわ。地殻が極めてユックリ動いていて、その圧力に押されて突然に(はじ)ける現象だって。発生の時期を予測できなくて、突然襲ってくることが怖いのよ。


 それから秋に何度も来る大嵐ね。大きな風という意味で、台風と呼ぶわ。温帯モンスーンと呼ばれるニホン一帯がね、台風の通り道にあたるの。台風はね、直径100キロメートルくらいの雨と風の大渦なの。南の海から最大時速40キロメートルで襲ってくるの。馬が走るより早いのよ。想像できる? もう、国を挙げて発生を探知して進路を占うわ。そして、街中が静止してじっと通り過ぎるのを待つの。不気味よ。暴風でいろんなものが壊れ、豪雨は洪水を引き起こして、崖崩れや水害を引き起こすわ。

 でもね。この台風でよいこともあるの。山に降った雨が地中に溜まるの。そう、一度に流れてしまわないで、徐々に滲み出すことがポイントよ。それが田畑を潤すわ。不思議ね。

 またこの水がね、真水に近い軟水という点も特徴なの。島国だから地下に沁み込んでいる時間が比較的短くて、ミネラル分の溶け込みが少ないわけ。大陸では、雨が降ってから地上へ湧き出すまでの期間が長いから、溶け込みの多い硬水になるわけ。共に一長一短があるけれど、軟水のほうが飲み水に適していて扱いやすいわ。ニホンを語るうえで、ここ、重要よ。


 で、こんなに自然災害が多いと当然、命に対する感覚が他とは異なるわけね。生命は永遠ではなく、儚い。いつ死んでもいいように、今日を大事に生きよう、っていう心構えかしら。

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