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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
63/64

【63】魂(たま)呼び

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 この場所こそ我が故郷。

 それだけは決して忘れない。


メイア11歳の夏。


 それはもはや谷とは言えなかった。

 氷と雪に埋められたくぼ地。

 故郷は、すべて、凍てついた氷雪の中に消えた。

 メイアの生まれた谷はもうどこにも見えない。

 黄金の火龍とともに、凍りついてしまった。


 何が起きたか、たぶん、分かっている。


 彼は、神を迎えにいった。

 今日、この時のために。

 今、この日のために。


 そして、選ばれた結果。

 彼は神とともに、帰還し、火龍と戦い、そして、今、ともに氷雪の封印となった。


「……だから、心配しなくていいよ」


 本来ならば、身を切るような風がメイアを優しく抱く。


「村は守れなかったけれど、皆を守れた。

 メイアを守れた」


 そして、メイアは、ただひとつの名前を叫ぶ。

「ウィリス!」


「そうだ、もっとしっかり叫べ」

 背後から、鋭い叱責が飛んだ。

 振り返ると血まみれの男と雛菊がいた。雛菊自身がまとったドレスも何かに引き裂かれたように、ボロボロになっている。男は体中、傷だらけだが、微かに息をしているようだ。

「あ、あの」

 思わず、メイアが声をかけると、雛菊はさらに怒鳴る。

「どうした、もっと叫べ!

 あいつの名前を呼ぶんだ。

 そうしないと帰ってこないぞ」


 一瞬、雛菊の言葉の意味が分からなかった。

 だって、ウィリスはここに……


「そんな風みたいに悟った魂なんかすぐに消えちゃうよ。

 お前の欲しいのは、亡霊か?」


 違う。

 違う。

 違う。


 私は、彼に帰ってきて欲しい。

 きちんと手や顔を持った、あのウィリスに。


「欲しいなら、叫べ!」

 血を吐きながら、雛菊が立ち上がる。

「私なら、そうする。

 黙ったまま、奪われたりしない。

 私は」

 雛菊は、言葉を切る。


(あとは、お前次第)


 分かっている。

 あなたはきっと、私の声に答えてくれる。

 あなたがお迎え役になった時から、この日のために私もここにいた。

 呼び戻す。

 あなたを。


「ウィリス!」


 叫ぶ。


「ウィリス!」


 叫ぶ。


「戻ってきて!」


 そして、北風が舞い上がり、少年の形を取った。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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― 新着の感想 ―
[良い点] 上手く言えないですがとても綺麗なイメージ。
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