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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
62/64

【62】破魔の槍

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 時として、愚かとも言えることこそ最善。


 メイア11歳の夏。


 その槍と、持ち主の関係ほど不似合いなものはなかった。

 黄金に輝く槍の穂先は暖かき太陽のごとし。

 されど、それを血まみれの手で握りしめる男は、顔全体に多くの傷を刻み、おぞましき邪気を放ち、怒号と悪態をはき続けている。


 そして、その傍らでエリシェは古き言葉で詠唱を行う。


 メイアはその風景に背を向け、巨人と火龍がうなりをぶつかり合う故郷の谷間に目をやる。四つの腕を持つ巨人は、火龍の翼を槍で貫き、皮膜を引き裂く。


(今度こそお前を!)


 巨人の戦士の意志が圧倒的な戦いの意思とともに、メイアの気持ちに踏み込んでくる。

 戦い、戦い、戦い、正面からぶつかり合う。

 殺し、殺し、引き裂き、貫く。

 痛みを与え、苦痛を与え、その肉を食らう。


 巨人と火龍からあふれ出る殺気で、メイアは動けなくなる。


(消滅せよ)


 強い憎悪の波動とともに、火龍の吐息がまたも谷間を焼く。

 牧場も畑も一瞬で燃え尽き、川が蒸気に変わる。煤煙と蒸気が谷間に満ちる。

 その吐息を避けるように谷間を低く走る巨人に対して、火龍が襲い掛かる。巨人は巨大な鉤爪にわき腹を引き裂かれながらも、川床を逃げ回る。火龍は再び流れ始めた川の水の中に四足を踏ん張り、さらなる吐息を巨人に吐きかけようとする。

 だが、ここで巨人の雄叫びが響く。


(火龍よ、お前は負けた)


 突然、谷全体は凍てついた。

 蒸気がきらめく雪に変わり、火龍の翼に分厚くまとわりついた。

 川は一瞬にして凍り、火龍の四足を凍った氷の中に封じ込めた。


*


 谷の上空。

 空中に浮かぶ魔鏡から突き出す一本の腕。

 血まみれの手に握られていたのは、黄金の槍である。


*


 火龍は、怒りの叫びを上げるが、足は硬く凍りつき、見る見る厚さをましていく氷の中にがっちりと捉えられたまま、飛び立つこともできない。

 巨人に向かって吐きかけようとした火炎を足元に向けるべく、首をかしげた火龍は、次の瞬間、落下してきた黄金の光に胴体を貫かれた。

 まるで、糸が切れたように崩れ落ち、川床に倒れ伏す火龍。四足が固定されているため、その姿勢は、ずいぶん傾いたものであったが、首と翼、尾が弱弱しく、凍りついた川面に落ちる。

 巨人は、白い氷の槍を振り上げて、その口を上から串刺しにする。上下のあぎとを縫いとめられた火龍の上に、ざっと雪が降り積もり、たちまちにして小高い氷の山と化す。


 メイアの目の前で、グリスン谷は巨大な氷雪の吹き溜まりへと変わっていった。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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