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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
61/64

【61】激突

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 その風景を目撃することは、人の子にあるべからず。


 メイア11歳の夏。


 メイアは、その風景に身動きもできない。

 グリスン谷を覆う濃密な霧。

 海にも似た霧の谷から首を突き出した巨大な黄金色の龍。


 たぶん、その風景だけでも人は狂うに足りる。


 ましてや、その濃密な霧の湖の下に故郷の村が消えたとあれば、それは、幻とも信じたい風景である。


 しかし、それは火龍の襲来だけでは終わらなかった。


「ウィリス!」


 叫びに答えたのは北風。

 肌を刺すような凍てついた霙交じりの寒風。

 凍てつくような北風が一気に吹き寄せ、谷から霧を吹き飛ばす。


 その風に乗って白い巨人が火龍に突進する。

 四本の腕、四つの顔。

 そして、背中から世界を覆うほどに大きく広がる巨大で異形の翼。

 快楽の笑いとも、憎悪のうなりとも判別できない叫びが響き渡る。


 メイアは、風がさらに凍てつくのを感じる。


「冬が来た」


 とっさに感じた言葉が口から漏れる。

 それが真実を語っているのだと自ら気づき、メイアはひざまずく。


「冬翼様」


 祈りの中、まるで寒風がここちよい誰かの抱擁のようにメイアを包む。


「……ウィリス」


 メイアは、少年が帰ってきたことを知った。


*


 そして、火龍と巨人は激突する。


 巨人の腕から突き出された白い氷の槍が火龍を正面から捉える。

 同時に、火龍の口が輝き、炎を吐く。

 あたり一面が焦げる。

 凍てつく寒風が、一気に紅蓮の熱風に変わる。


 だが、巨人は火炎の下をかいくぐり、火龍の翼を槍で引き裂く。


 空中で傾いた火龍の首が巨人を追い、火炎が谷間をなめる。

 一気に、谷底から蒸気が舞い上がり、またも、火龍と巨人の周囲に霧のように巻き上がる。


「それでよい」

と、エリシェ・アリオラがつぶやく。

「火龍め、それが己の足かせとなることに気づいておらぬ」


 次の瞬間、霧が一気に白くなった。

 ねっとりと濃くなり、その内側から火龍のくぐもった叫びが上がる。


 そして、人の怒号が響く。


「エリシェ!」


 邪気とともに、怒りの声が舞い降りる。

 振り返れば、全身血まみれで、傷だらけの顔の男が鏡の前で荒い息を吐いている。

 その手には、血にまみれた黄金の槍がぶらさがっている。


「相変わらず、馬鹿だな、お前は……」

と、エリシェが微笑む。

 華のように。

「さて、メイア。

 後は頼むわ。

 戦いが終わった後、ウィリスを呼び戻せるのはお前だけだ」


 そして、エリシェはさらなる跳躍のための詠唱に入った。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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