表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
54/64

【54】響き渡る声

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 誰もが感じる、再会の時を。

 誰もが知る、目覚めの時を。

 誰もが歌う、呼び合う声を。


 ウィリス11歳の夏。お迎え役としての時を迎える。


 ウィリスは、目を閉じて、お迎えの祝詞を口にする。

 両手を空へ向け、ゆっくりと舞い始める。


「ご来臨あれ、ご来臨あれ。

 いと高き人よ。

 収穫も終わり、蔵も樽も満たされた。

 囲炉裏を囲み、歌を唱ずる我が家を訪れ、

我らが酒を飲み、我らが膳を受け取られよ」


 グリスン谷のお迎えの祝詞は、秋の終わり、北風とともにやってくる《冬翼様》を、賓客の神として歓迎するものだ。

《冬翼様》がなぜ南北に旅するのか?

 グリスン谷に伝わる話は、《冬翼様》の悲しい定めを語る話だ。


《冬翼様》には、愛する妻がいた。

 その妻は、呪いにかかり、夏が終わると、一羽の渡り鳥になって南の地へ旅立ってしまう。だから、《冬翼様》は冬とともに、愛する妻を南へと捜しに来る。寂しい、寂しいと探しに来る。残念ながら、人の姿を失ってしまった妻は見つからない。だから、荒れ狂い、雪で大地を埋め、川を凍らせてしまう。

 そこで村人は、《冬翼様》を歓待し、その荒御魂を慰め、腹を満たしてもらう。

 春になれば、《冬翼様》の妻は、渡り鳥になって戻ってくる。そうしたら、《冬翼様》に渡り鳥とともに、北の館へお戻りいただくのである。

 そうして、無事、春を迎えれば、その年の豊作が約束されるという。


 だが、ウィリスはその物語の意味を理解した。


 《冬翼様》は、かつて落とされた首を捜しておられたのだ。

 呪いによって、首を見出すことも出来ぬまま、何年も何年も、北の館と南の谷を往復しながら、己の首を捜しておられたのだ。


「ご来臨あれ、ご来臨あれ。

 いと高き人よ。

 偽りの時は終わり、正しき場所に導きましょう。

 さあ、なくした物を取り戻されよ。

 再び、全き姿となって、武勲の時を迎えられよ」


 祝詞の舞いとともに、吹雪は強まり、封印の鎖はギシギシと鳴る。

 鎖の回りを、雪狼たちが舞い、遠吠えを上げる。


 やがて、遥か彼方に強い気配が生じた。


「あれこそ、我らが父」

と、吹雪の中を舞う雪狼たちがささやく。

 同時に、ウィリスの脳裏に、ネージャ様の声が響く。

「さあ、舞え、舞え。

 解放の時は間もなく来る。

 ウィリスよ、そちはお迎え役。

 我らが獣の王」


 その声と同時に、一瞬の幻視がウィリスの脳裏に閃く。


 あの呪わしき男が、雪原の中央、突き出した黒き槍に手をかける。

 その手から黄金の炎が上がるが、傷だらけの顔をした男は黒き槍を引き抜く。

「照覧あれ!」

 叫びとともに、雪原から黒き槍を引き抜いた男はそのまま、雪の斜面を落下していく。


 途端に、北の彼方の気配が強い物に変わる。

 同時に、頭上の首の四方を向いた顔が、かっと目を開く。


「我は目覚める」


 そして、吹雪の音と雪狼の遠吠えが最高潮に達し……

 アヴァター山の上に、巨大な翼の影が落ちた。


 ウィリスは舞を納め、大地に伏せる。


「よくお出で下さいました。

 よくお出で下さいました」



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ