【48】再会
運命の劇場へようこそ
北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。
拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。
我らはこの日のために生まれた。
小さな命は、簡単にそう思い込む。
だが、その言葉が真実かを決めるのはお前ではない。
ウィリス11歳の夏。
少年は、雪の中を歩む。
アヴァターの高き砦は今もまた雪の中。
「当然だ。感じるだろう、少年よ」
白き獣師レディアスは燃える右手の篭手を持って雪の斜面の彼方、吹雪の濃い山頂の方角を指差す。
ウィリスは、思わず、うなずく。
感じている。
そここそが、神の住まうところ。
そこに、ウィリスの神がいる。
「強き魔族の名を封じ、偽り、数万の年月を山頂に留め置いた。
さすが、神の策謀」
策謀?
少年には難しい言葉だった。
ただ、ウィリスの前後にいる白と黒の獣師がただ好意でここにいる訳ではないことも、ウィリスにはよく分かっている。
(殺すか?)
吹雪の中で強まる雪狼の声がささやく。
同朋たる北風の猟犬と戯れるように、吹雪の中を飛び交う。
心なしか、いつもより殺意も飢えも少ないように感じる。
ふと、聞いてみたいと思った。
ウィリスは立ち止まり、吹雪の中を走り回る雪狼たちの影に手を差し伸べる。
(これはお迎えの時?)
雪狼たちと北風の猟犬たちの影は、雪原の上に立ち止まり、すっと頭を垂れる。
(お迎え役よ、まさに然り)
ネージャ様の影が現れては消える。
(人の子よ、我らが民よ。
これは長き年月の祭りの結果。
我らの主をお迎えに行く時)
ウィリスは雪狼の姫に深く頭を垂れた。
頭を上げると、白き仮面の獣師がこちらを見ていた。仮面で瞳は見えないので、口元に浮かぶ微笑だけが手がかりであるが、悪意ではないように思えた。
無言が、彼なりの善意なのかもしれない。
だが……
ウィリスは少しだけ気になっている。
《冬翼》様を迎えた後、何が起きるのか?
風見山はあれ以来、ずっと雪の中だ。
夏は来ぬまま、ネージャ様の雪の中に埋もれている。
ウィリスは、雪を恐れない。
雪は優しいから。
でも、メーアも婆も父も母も、冬は家に籠もるしかない。
雪の中では生きていけないから。
僕は少し違う。
僕は少し違う。
「少しではない」
とレディアスが言った。
「お前は運命の子だ。
おそらく、お前こそが獣の王」
獣の王、やがて、冬を解き放つという予言の存在。
「冬を解き放つということは」とウィリスは問いかけた。
「どういうことですか?」
白き獣師は、一瞬、ディルスに顔を向けた。
ウィリスはびくりとした。
殺気めいたものが、二人の獣師の間に飛び交った。
やがて、レディアスが言った。
「火龍が目覚めた」
遠くで雄叫びが聞こえたような気がした。
★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。
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