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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
47/64

【47】始まりの地

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 遠く離れても海はひとつ。

 波はいつか届くだろう。


 ウィリス11歳の夏。

 少年は、魔獣に飲み込まれ、ひとときの夢を見た。


「これは予言だ」と黒猫がほほ笑む。

「いつか、お前はこの因果の果てに立つ」


 そして、心地よい寒風がウィリスの頬を撫でる。

 雪さえも、心地よい。


「この吹雪の中で熟睡できるとは、まさに冬の申し子」

 やや暗いものの、深みのある声が呟いた。

 目を開けると、そこには白い仮面で顔の上半分を覆った男がいた。髪は黒いが、肌の白さはウィリスと同じサイン人の系統のようだ。情の薄そうな薄い唇と高い鼻が印象的だ。

 しかし、次の瞬間、ウィリスはぞっとした。

 彼のマントから出ている黄金の篭手からは、燃えるような魔力が放たれていた。さらに、仮面からは冷たい死の気配が漂い、彼の周囲には目に見えぬ何かがまとわりついている。


「私をあまり『見ない』ように」

 再び、男が言う。

「君は目が良過ぎるが、準備が足りない」


 あわてて、目をそむけるが、男の放つおぞましい気はもはや無視できない。


「レディアス」

 感情のこもらない声がささやく。

 男の名前なのか?

「君と同じ《因果の果て》に立っている」


 ふっとその声に、ディルスが天幕の中で言った言葉が思い出される。


「……それゆえに、世の中の《事実》なるものが、どれほどおぞましく、はたまた、脆いものかをよく知っております。

できれば、……」

 そこで、ディルスは、細い棒を拾い、ウィリスとの間に、線を引くように横に滑らせた。

「ウィリス殿には、この線のこちら側に来ていただきたくありません」

 ウィリスは見えない線を必死で見た。その線の向こう側に、闇とともに微笑む魔道師がいた。


 ほんの目の前の見えない線。


 この男はおそらくその向こう側の住人。

 その肉体にまとわりつくいくつもの魔法の気配。おぞましい歪み。そして、それをもとともせず、感情を込めない酷薄とも言える声。


 だが、ウィリスはここで恐れてはいけない。

 お迎え役として、冷静にならねばならない。

 あの夢が何を示すのか、若い彼にはまだ分からなかったが、この男こそ、ウィリスの運命に深く関わることだ。

「もしや、《冬翼》様を御存知ですね?」

 ウィリスはやっと質問を発した。

「ああ」と男はうなずく。

「猫の王の予言は、私も見た。

 つまり、ここには二人の獣の王がいる訳だな」


「いや、三人だな」

 背後からディルスの声がした。

「お前だけ、勝手に獣の王になるなよ、レディアス=イル=ウォータン」

 ウィリスが振り返ると、ディルスが、シアンを肩に乗せて立っていた。

「獣師アルドナスの第一の弟子を無視するつもりはなかった」

と、レディアスが答える。

「いやいい」とディルスが笑う。

「白き獣師と張り合うつもりはない。

 混沌の魔獣に両腕と双眸を売り払ったか」

「まだ心臓と舌と足は残っているよ」

とレディアスは笑い、ウィリスのほうを見た。

「少年よ、我らが《冬翼》様をお迎えに参ろう」



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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