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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
43/64

【43】歓喜の声

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 我が主人よ。

 我はこの地上に残り、汝の帰還を待つ。

 千年の年月にも我は耐えよう。


 ウィリス11歳の夏。

 少年は、魔獣に飲み込まれ、ひとときの夢を見る。


 それはいびつな城。

 巨大、というよりも広大。

 無限のように見える巨大な回廊は、おそらく人の子にあらざる大いなる種族のために築かれた物であろう。そこここに、工芸のために生み出されたとおぼしき、蜘蛛のごとき姿の生き物が這い回り、壁の仕上げをしている。

 庭園の遥か彼方には、漆黒にも見える濃緑色の森が果てしなく広がり、その頭上を黒き蝙蝠のような影が飛びまわっている。


 回廊に一団の巨人が姿を現した。


 先頭の騎士は異形であった。

 四つの首と四本の腕。

 その瞳は冷たい雪のような透き通った青。

 周囲には、時ならぬ冷たい風が舞う。

 見れば、指先ほどの雪狼の群れがその周囲を飛びまわっている。


 工人蜘蛛たちが寒風を避けるように、壁の向こうへ姿を消す。


 その背後から、巨大な雪狼を連れた女戦士と、巨躯の戦士たちが続く。

女戦士はまだ若いが、雪狼の毛皮をまとい、きつい表情をしている。豪華な衣装や装飾品は彼女が位の高い姫であることを示している。

 巨躯の戦士たちの多くは、雪狼の頭部を持ち、手には氷柱のような白い槍を構えている。


「父上」と女戦士がささやく。「われらをお召しということはついに、決戦の時が」

「当然であろう」と、四つの顔のひとつが答える。

「火龍を撃つには、我らの氷の槍が欠かせまい」と別の顔が。

「東方の山を守るだけでは飽きたわい」とまた別の顔が。

「血が滾るな」と背後を向いた最後の顔が。


 回廊の果て、巨大な扉は異形の騎士たちの前に開かれた。

 その向こう、皇帝の広間は、異形の姿に満ちていた。

 飛ぶ者、這う者、獣や蛇のような者、虫のごとき者。

 そして、広間の最も奥、壮大な玉座に座るのは幼き少年皇帝と美しく若き王妃である。


 側近としてその前に連なるは、筆頭五公。


 獅子の頭を持つ巨体は戦士の大公アロセス。帝国随一の勇将だ。直接、剣を交えるのであれば、この戦士に1対1で勝てる者はこの世にほとんどいないだろう。神と龍をのぞいたならば……。

 頭から全身をローブに隠しているのは、帝国宰相モーンである。帝国と言う仕掛けを動かしているのは、もっとも見識に長け、実務に向いたこの人物だ。その姿は巨大な眼球のようだと言われ、別名、瞳の大公と呼ばれる。

 竪琴を抱いた美女は、歌の公女イェロマーグ。吟遊詩人にして、すべてを語り継ぐ者。歌と時の支配者である。

 角の大公セイシュドーマの姿はない。帝国の母オラヴィー様の愛馬であったかの者は、母なるお方の後を追うように、帝国の宮廷から去った。


「よく来られた、冬の大公殿!」


 筆頭五公を代表し、犬頭の戦士が呼ばわった。

 卑屈なる犬頭の男は吐息の大公タンキン。姑息とも見える謀略の臣下だが、帝国の最高権力者のひとりであり、もっともおそるべき実力の持ち主だ。あの翼の王を謀殺し、死の国へ追いやった男だ。

 おそらく、今回の戦を仕立てたのも、この男だ。


「お待ちしておりました。

すでに、龍どもは相撃ちをするべく、レ・ドーラの平原に向かっております。

 さて、我らも血の宴に参列いたしましょうぞ」


 龍王どもの間に不和をばらまき、殺し合いをさせるというのだ。

 おぞましきかな。

 だが、それもよい。


「龍を狩るとは、楽しみな話ぞ」

と、四つの顔の騎士は返事をした。


 それが合図とばかりに、広間に集った魔族の諸侯たちが雄叫びを上げた。

その先頭には、高名な大公や公爵に混じり、戦士の五公女が揃って顔を見せている。戦陣の五公女と並び称された竜巻の公女ピスケール、蒼き死の公女ルハーブ、黒衣の公女パルガ、盾の公女リグレイ、忠誠の公女ラプティーク。若き魔族の戦姫たちだ。


 今宵はずいぶんと楽しいことになりそうだ。



ウィリスは夢を見る。魔族の夢を。


★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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[良い点] 幼い少年皇帝とか萌えれる
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