表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
37/64

【37】高き砦へ

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 時が急いでいる。

 何かが少年の背をせきたてる。

 速く、速く。

 風の中に叫ぶのは滅び去りし騎士。

 ああ、もはや……。

 ウィリス11歳の夏。

 少年はさらなる旅立ちを強いられた。


 荒れ果てた平原の中を動く騎馬の一行があった。

バッスル侯国の北の果て、アヴァター山麓の凍てついた雪原に続く凍土地帯。穀物の恵みなど、全く無縁なこの平原には、人の気配はほとんどない。

ここに住むのは、雪狼とトナカイ、後はわずかな狩猟民だけだ。

北の果て、アヴァター山のさらに北には、アプト人という、四本の腕を持つ氷原の民が生きるとも言われるが、それが本当かどうか確かめた人の子はおそらくいない。おそらくは氷雪の魔物に他なるまい。

 あるいは、もはや伝説の中に消えつつある、風の妖精騎士ヴァイケルファン・ハウヌス、上代語で「天空に轟き渡る風」と呼ばれた者たちが支配する地かも知れない。


「おそらく、滅びたがね」と、魔道師ディルスがウィリスの耳元にささやく。

「変なことを吹き込むんじゃない」とゼルダ婆が魔道師に向かって言う。

「あなたが説明なさらないからです」と魔道師は答える。

 確かに、アヴァター山と妖精騎士に関する説明をウィリスにしたのは、大半が、この魔道師である。

「侯王閣下や姫巫女様のご指示がなければ、お前など連れて行かぬものを」

「まあ、そう言われずとも」と婆をなだめるのは、真紅の鎧をまとうマリュアッドの騎士、グレン卿である。6名の兵とともに、ウィリスの護衛についている。

 本当ならば、騎士団丸ごとついてきそうな様子をこれで済ませたのは、グレン卿が強く止めた結果である。同様に、神殿からの同伴者を断るのも大変であった。

 結局、若い巫女のうち、アシャンとユーリア、神官見習いのラゼがついてきた。

「この凍土やアヴァターの雪原で、《お迎え役》のウィリスを傷つけられる者などそれほどはおらぬ」

 バッスル侯国の守護神《冬の統領ル・ウール》こと《冬の騎士ルーヴィディア・ウル》。

 《冬翼》様の娘にして、《雪狼の姫ネージャ》。

 寒冷の地を統べるこの2柱の神から加護を受けるウィリスは、おそらく、この一行の中でもっとも強大な力を持っているかもしれない。

「ですから、我らのことは気になさらないで下さい」とアシャンが言う。「我らはウィリス様について、高き砦を一目見ようという巡礼者に過ぎませぬ。もっとも大事なことは、ウィリス様が『始まりの場所』への巡礼を果たされること」

 アシャンら、冬の巫女たちは最後には必ずそう言う。

「始まりの場所」と。

 アヴァターで何が始まったのか?

「それは君が自分で確認することだ」とディルスが言う。「私もまた、巡礼者に過ぎない。

 まあ、魔道師学院にとってはあの場所は、封印の山だ。あそこは世界で何番目かに危険な場所だ」

 一番危険な場所については教える気はないようだった。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ