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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
36/64

【36】旅立ちの予感

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 引き寄せられる。

 運命に。


 ウィリス11歳の夏。

 それは策謀の罠の中にあった。


 隠し模様と、獣師ディルスは言った。

 さらに何かがあるというのであろうか?

 少年にはもはや想像もつかない。

「ここからは読み合いですが、それでは千日手になるばかり」

とディルスは言う。

「それに、一手一手を読み続ける人生など、ウィリス君の負担になるばかりです」

「それでどうしろと?」

と、ゼルダ婆が問いかける。

「簡単なことです」と獣師は微笑む。

「ウィリス君にはそのまま、修行をしてもらいましょう」

「あの二人はどうする?」と婆。

「誰か、あれを止められる人がいますか?」とディルス。「魔道師学院でも札付きの性悪で、その上、ここ数年で、もっとも有能な陰謀の権化ですよ。魂の半分はすでに魔族も同然ですからね」

 もはや人ではないというのか?

「人畜を切り刻み、魔獣を生み出すおぬしでも駄目か」

 ディルスは、獣師と呼ばれる異端の魔道師である。人間や獣の体を切り刻み、魔法でつなげて、魔獣に仕立て上げる。人間とは思えない所業ゆえに、魔道師学院からも追放された人物である。

「少々、手駒が不足で……」

 そういう獣師の足元に奇妙な黒猫がまとわりつく。

「今は、こんな子猫ぐらいですから」

「ま、しかたないわね」と黒猫が愚痴る。名をシアンという。尾は蛇になっている。小さくても魔獣である。

「でも、ウィリスは大丈夫よ」

「根拠は?」と婆。

「ウィリスには《冬翼》さまの加護があるから」と黒猫。

「あらあら」と、姫巫女のエルナが言う。「その言葉を言うのは私の役目ですわね」

「失礼」と黒猫が、エルナにお辞儀してみせる。


 不思議なものであったが、するりと場が明るくなった。

 ウィリスも、不安がどこかへ消えていったように思った。

 確かに、ウィリスには見守られているという実感がある。


 《雪狼》は確かに、今もすぐ近くにいる。

 ネージャ様の視線を感じる。

 ル・ウール様も祠におられる。


 そして、《冬翼》様は秋の終わりとともに戻って来られる。


 それは厳然とした事実であり、いかに、ウィリスの身を脅かそうが、彼らの加護はウィリスを守っている。グリスン谷を離れようとも、この神殿にいる限り、誰かがウィリスを害そうとすれば、《雪狼》を相手にせねばならない。今度はル・ウール様も、ネージャ様も目を光らせられている。


「分かりました」とエルナが続ける。「では、ウィリスの修行を継続します。

 そして、中庭が冬で満たされた時、ウィリス殿は『始まりの場所』への巡礼に旅立っていただきます」

「御許可いただき、ありがとうございます」

と、婆が頭を上げる。

 あわてて、ウィリスも礼をした後、婆に聞いた。

「始まりの場所とは?」

「北の果てのお山じゃ。

 そこに、もう一人の冬の王がおられる」

「アヴァターの高き砦」

と、ディルスが微笑む。

「大いなる封印の山だ」



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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