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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
27/64

【27】記憶の厚み

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 自分が誰であるかなど、どうやったら確認できるというのだ。

 過ごした日々の厚み以外に、何がそれを証明してくれるというのか?


 ウィリス11歳の夏。

 ヴェイルゲン城で出迎えてくれた魔道師のひとり、仮面のバスカレイドは、婆から意味深な言葉を投げかけられた。


「それは、おぬしの記憶か?」と婆が聞いた。

「ええ」とバスカレイドは即答した。

「ならばよい」と婆。「それならば」

「記憶とは」とバスカレイドは返した。「とても曖昧なものです。

 人間が把握している情報というのであれば、それは非常に広範囲のもので、しばしば恣意的に加工されます。我々魔道師は、幻視によって多くの情報を得ますので、私の記憶の中には、幻視を通して体験した他者の人生が混じっています。

 それでも」

 バスカレイドは微笑む。

「夕焼けについて、問われたのは私の記憶です」

 婆は何も言わなかった。


 やがて、夜になり、二人の魔道師は去っていった。


「あれは一体、どういう話だったのですか?」

 ウィリスは婆に聞いた。昼間の魔道師たちとの会話についてのことだ。

「分かったか?」

「ううん、全然」

 ウィリスには何も分からない。

「彼らの会話には真実など無い」と婆が言う。

「現れたことだけに意味がある」

 ウィリスはますます、混乱した。

「お前は、これで魔道師たちを得体の知れない何かだと思うだろう。

魔道師の言葉に惑わされてはならない。

 あれらの言葉には棘と毒が潜んでいる。

 触れる時には気をつけることだ」

「分かった……婆」

 ウィリスは不安だった。

 そこで婆はウィリスをぎゅっと抱きしめた。

「魔道師は、人の心に罠を仕掛ける。

 だが、お前がここまで育ってきたグリスン谷を忘れるな。

 何かあったら、谷のことを思い出せ」

 ウィリスの脳裏にグリスン谷の風景が浮かんだ。

 父、母、婆、メイア……。

 そして、空高く飛ぶ《冬翼様》。

 ネージャ様と雪狼たち。

「言葉に惑わされそうになったら、風に耳を澄ますのだ。

お前には雪狼がついている。

 焦って、走り出すな。

 冬の力は常にお前の回りにある」

 答えるように、窓の外で風がうなりを上げた。

 


★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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