表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
23/64

【23】ヴェイルゲンの龍騎士

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 崇めよ、冬の風を。

 讃えよ、果て無き眠りを。


 砂の川原から、バッスル侯国の首都グレイドルへ向かうには三つの尾根を越えなければならない。徒歩では半月近い行程である。

 一つ目の尾根を越えた先は、グリスン谷と変わらぬ小さな村しかない山間の土地だった。砂の川原へ続く分だけ、道行きは盛んで、一日に2、3度、騎馬の商隊とすれ違った。それぞれの村は砂の川原と同じく、プラージュの神々を崇め、グリスン谷の《冬翼様》とは類縁にあったので、夜は村の祠に泊めてもらった。

「こちらが、当代お迎え役でござるか?」

 いずれの村でも、司祭がウィリスと婆を丁寧に迎えてくれた。

 わずか11歳の少年を下にもおかぬ歓待であった。


「お迎え役にして、獣の王たるウィリス殿。

 御身の件はすでに我らプラージュの神殿には伝わっております」

 砂の川原にあるプラージュの神殿によった際も、司祭長がそう言った。

「あの日、雪狼たちが伝えてきた。

 獣の王が生まれ、風見山は永遠の冬の領土となったと」

 司祭長はウィリスの前に跪いた。

「司祭長、辞めて下さい」

 ウィリスはかつての恩師に駆け寄ろうとして、婆に止められた。

「これが汝の定めじゃ、ウィリス」

 それから、婆は司祭長に向かい、膝を屈する。

「歓迎痛み入ります。

 我ら、これより『冬の祠』にて修行を致しますが、当代はまだ若年の身、よろしくお願いいたします」


 雪狼たちの言葉はプラージュの社を司る司祭たちに伝えられていた。

 彼らは歓待をしつつも、心配げに問いかける。

「永遠の冬とはいかなるものでありましょうや?」

 しかし、いまだ、ウィリスに答えはない。

 確かに、風見山は夏に至る今も雪に覆われた冬の山になった。それは雪狼の姫ネージャの領地になったのであるからしかたないことである。冬の魔が住まう場所はそうなるものだ。バッスルの北、アヴァターの高き砦にも冬の力が封じられ、夏でも解けぬ雪原が広がると言う。


 二つ目の尾根を越えるとずいぶん雰囲気が変わってきた。

 広い谷が広がり、その中央には街道を押さえるように城壁を持つ街があった。高い塔の上には弓兵が立ち、旗が翻っていた。バッスルの宝玉の旗に加え、龍の旗が翻る。

 ヴェイルゲンである。

「ここからは、ネージャ様の地ではない。プラージュの地でもない。

 冬の頭領ル・ウールと、ライエルの地だ」

 ル・ウールはバッスル本国で崇拝される冬の神である。《冬翼様》の社では、ネージャ様の叔父御となっているが、血縁はないとも言う。それでも、《冬翼様》とはご縁があり、代々の当代はバッスルの都グレイドルで、仕上げの修行を行うことになっている。ライエルは田畑の神々で、狩人や杣の少ないあたりで信じられているという。


 城に近づいていくと、開かれていた城門から、異様な影が二つ飛び出した。

 馬ではない。

 馬よりもさらに大きい。

 鱗に包まれ、巨大な顎を持った銀と灰色の巨大なトカゲといえなくもないそれは2本足で立ち、まるで鶏か何かのような感じで素早く走ってきた。

「婆!」

 ウィリスは思わず、婆にすがった。

「ヴェイルゲンの龍騎士じゃ」

 ウィリスも話だけは聞いたことがある。ヴェイルゲンには遥か南方、龍の都スイネから、やってきた小型の龍に乗る騎士たちがいるという。バッスル西方を守る軍事拠点である。先日の騒ぎで出仕した父ジードはここに通じる二つ目の尾根まで来たそうだが、ヴェイルゲンの谷には入らなかったという。

 確かにその背中には銀の鎧をまとった騎士が乗っている。槍を片手に、もう片方で巧みに龍を操っている。龍の鱗は灰色で、そこに銀飾りのついた皮の装具が着けられている。龍の頭部に見える赤い羽根は、はみについた羽飾りだ。

 龍に乗った騎士たちは、ウィリスらの一歩手前で止まり、槍の石突きで街道をカチンと打った。

「グリスン谷のお迎え役ウィリス殿と、介添え役ゼルダ殿であられるな」



「深淵」世界でもファンタジー寄りの存在、ヴェイルゲンの龍騎士。


★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ