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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
18/64

【18】風の旅

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 一夜の夢だったならば、よい。

 一時の幻だったならば、よい。

 だが、それは……。


「村まで送ろう」

 ネージャは雪狼の群れを呼び寄せる。ゼルダ婆はためらわずに、雪狼の背にしがみついた。タグもそれに習った。メイアがためらっていると、ネージャがその手を取り、引き寄せた。もう片方の腕には意識のないウィリスが抱かれている。

「汝は我とともに」

 そうして、一際大きな一頭にまたがる。

 ネージャの外套が優しく、メイアを包んだ。


(暖かい)


 メイアは驚いた。

 雪狼の姫、と聞いて、その体はどれほど冷たいのか、その吐息はどれほど凍えるものなのか、と思っていたが、外套の中は心地よく、安らぐものであった。これならば、あの雪の中でも、ウィリスは大丈夫だっただろう。


「行け!」

 ネージャの声とともに、雪狼たちはざっと地を蹴った。

 そのまま、ふわりと浮かび上がる。


 ひゅうう。ひょおお~。風が鳴いた。


 雪狼は風を踏んで走る。

 その一歩、一歩が小さな雪片を撒き散らす。

 きらきらと陽光をはね返し、雪片が風に舞う。


「綺麗」

 メイアは思わずもらす。

「そうか」

 ネージャが満面の笑みをもたらす。

「お前もまた良き目を持つのか」


 風のように、雪狼は走る。

 風に乗って走る。

 風見山の麓から、尾根道を越え、グリスン谷へ続く斜面を一気に駆け下りる。


 逆落としの光景に、メイアはぎゅっと目をつむった。


 やがて、雪狼が歩みを止めた。

「ついたぞ」

 ネージャの声に、目を開くと、もう、ゼルダ婆の家の前であった。

 振り返ると、ゼルダ婆とタグを乗せた雪狼もたどり着いている。タグなど転げ落ちるように地面にへたり込んでいる。

 ネージャはメイアを下すと、その腕にウィリスを預けた。

「しばらく任せる。いずれまた会うことになろう」


 ネージャと雪狼たちは風に乗って舞い上がり、風見山の方角へと消えていった。

 季節外れの雪がグリスン谷の空に舞った。



★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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