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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
16/64

【16】顕現

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 それは始まり。

 それは終わり。

 それは……


 雪が舞っていた。


 ふわり。遠吠えの声とともに、雪狼たちが虚空から現れた。


(さあ、祈り、求めよ。我らが姫の顕現を)


 雪狼たちが空に向かって遠吠えする。

 ウィリスは立ち上がり、眼を閉じたまま、お迎えの祝詞を唱える。

 血まみれの大地を踏みしめ、舞の仕草を始める。両手を差し伸べ、ゆらゆらと複雑な弧を描く。

 ウィリスの祝詞に合わせて、雪狼が吠える声を上げる。

 雪狼の吠えるたびに、冷気が吹き荒れ、白い雪が舞い飛ぶ。


(この地を姫君に捧げん)


 それは約定の言葉。

 それは契約の言葉。

 それは開門の言葉。


(御顕現あれ!)


 ふわり。

 毛皮の帽子と白い鎧装束をまとったネージャが虚空から表れた。

 その手には青き氷の大槍。


「ウィリスよ、お迎え役ご苦労。

 これにより、汝は獣の王となる。

 これより、この地は我が領土。

 すべては《冬翼様》に」


 ネージャは微笑むと、目にも止まらぬほどの素早さで振り返り、その青き大槍を投じた。

 しゅっ。

 大槍は風を切り、鈍い音とともに、木々の間を突進してきた青白い騎士を軍馬ごと貫いた。騎士はたちまち霜に覆われた。

 怪物のような青白い軍馬はそのまま突進しようとしたが、やはり瞬間的に凍りついた足を踏み出した途端、足から、もろい陶器のように割れた。まず、踏み込んだ足が粉々に砕け散り、倒れていく胴体と頭がその後を追った。まるで水面に飛び込んだかのように、地面に激突したところから砕け散り、きらきらと輝く飛沫を撒き散らしていく。その飛沫がまるで水面を割ってできる波しぶきのようだった。

 騎士も、地面に叩きつけられ、陶器の人形のように砕け散った。


 それはずいぶんと静かな風景だった。

 悲鳴も血潮もなかった。

 ただ、かの呪わしき騎士は砕け散った。


 やがて、しんしんと降り続ける雪の中、ネージャは微笑んだ。


「もはや邪魔者はおらぬ。

 こここそ、冬の国。

 今宵より、永遠の冬が始まるのだ」



雪狼の戦姫ネージャの顕現です。


★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。


http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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