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永遠の冬  作者: 朱鷺田祐介
14/64

【14】夜襲

運命の劇場へようこそ

北原のグリスン谷に住む少年ウィリスは、冬の神「冬翼様」と出会い、新たな道を歩みだす。


拙作ダーク・ファンタジーTRPG「深淵」の世界観を元に描き出した幻想物語。

 矢羽の音、悲鳴、馬のいななき、そして、血潮の匂い。

 忘れたくても忘れられない。


 戦いの始まりは、夜の闇の中であった。


 ウィリスは雪狼の声で目覚めた。

 風見山へ踏み込む前夜、真夜中を過ぎた頃。部隊は街道を離れ、林の中で休息を取っていた。

 目覚めると深い霧が漂っている。このあたりでは珍しい、深くじっとりした霧だ。


(餌になるぞ)


 雪狼の声がウィリスにささやいた。

 首筋がちりちりする。

 ウィリスは隣で眠っていたダーシュをこづいた。

「ダーシュ、よくない霧だ」

 ダーシュは寝ぼけた顔でいたが、やがて、うなずき、水車小屋のヤンを呼んだ。

 ヤンはグリスン谷の全員を起こす。

「ああ、この霧はよくない」

 ヤンは、剣を取ると、ウィリスに一緒に来るようにいった。


「この霧はよくないな」

 カルシアスはうなずいた。彼と赤揃えの兵士たちはすでに目覚めていた。焚き火が高く燃え上がり、カルシアスはすでに赤い鎧を身につけ始めていた。

「まだ、川面からずいぶん上だと思っていたが、ここまで霧が上がってくるとなれば、奴ら、近いぞ。ゾークス、全軍を起こせ」

 鎧を付け終わったカルシアスは、ひらりと馬に飛び乗った。磨き上げられた真紅の鎧が馬上に輝くと、兵士たちはおおと声を上げた。華麗の一言で知られるマリュアッドの騎士である。同じく真紅の馬上槍と騎士盾を構えると、戦の神のようにも見えた。


 次の瞬間、霧の向こうで、叫びが上がった。

 数本の矢が霧を貫いて、飛来する。首に矢を受けた不幸な兵士がひゅーひゅーと悲鳴を上げて倒れる。

「来るぞ!」

 カルシアスの叫びに答えるように、霧の中から不気味な怪物が飛び出してくる。怪物は青白いぬらぬらした人型の生き物である。顔には人のような目鼻はないが、ウィリスは蛙のような雰囲気を覚えた。

「この水魔め!」

 カルシアスは、前進して、馬上槍を怪物に向かって突き出す。濡れたような皮膚にすべって、槍が流れた隙に、怪物がカルシアスに飛び掛るが、赤揃えのゾークが横から斧槍を突き出し、怪物を叩き落とす。そこへ赤揃えの兵士たちが群がり、剣を突き下ろす。


 後は乱戦であった。


 水魔は最初の一体だけではなく、次々に霧の中から現れ、カルシアスに向かってくる。

 赤揃えの5人の兵士が、一斉に斧槍を振り下ろし、水魔たちに傷を負わせる。ヤンはカルシアスの近くにグリスン谷の兵士を集め、水魔たちの横あいから襲いかかった。ウィリスはダーシュとともに、水魔に向かって剣を突き出した。水魔の体はぬらぬらして、剣はなかなか通らなかったが、何度もつくうちに、青みがかった血が噴出した。

 突然、ウィリスの体が弾き飛ばされた。

 何が起こったか分からなかった。

 見上げると、傷ついた水魔がウィリスを睨むように振り返っていた。戦場の中央で燃え上がる焚き火の炎を背に、水魔は暗く不気味な青い影に見えた。


「うらああああ」

 叫びとともに、ウィリスの倒れたすぐ横を蹄が通り過ぎていった。


 青白い。

 風というよりも、谷川の水のような透明な青。


 それは一瞬の隙をついて、戦場を突破した。

 青き騎士は、グリスン谷の兵士たちを踏み越え、霧の巻いた林の中を走り抜ける。

 赤揃えの兵士たちが振り上げようとする斧槍が林立する前に、それを踏み越える。

 構えた青い馬上槍が電光のように、カルシアスの赤い鎧に向かって突き出される。

 どん!

 カルシアスは、構えた盾ごと吹き飛んだ。


 ウィリスはその光景を始めてみた。

 鎧を着た真紅の人影が、馬上から弾き飛ばされ、宙を飛ぶ。

 そのまま、木の幹にたたきつけられ、複雑な金属音を立てる。

 まるで、濡れ雑巾のように、赤い血の跡を引いて、そのまま崩れ落ちる。


「カルシアスさま!」

 赤揃えのゾークが叫ぶ。助けに向かおうとする前に、青白い騎士が立つ。先ほどの突撃で折れた馬上槍はすでに捨て、片手半剣を構えている。

「ガレンナ砦の敵は取らせてもらった!」

 青白い騎士が叫ぶ。

 同時に、奇怪な青い軍馬が霧を吐く。周囲にじっとりとした嫌な空気が流れる。

「水の騎士め!」

 赤揃えのゾークが斧槍を突き出すが、盾に弾かれ、そのまま、切り下ろされる。騎士の剣はゾークの赤い兜を断ち割り、ゾークは脳漿と血を噴出したまま、崩れ落ちた。

「殺せ!」

 騎士の命令に水魔たちが飢えた叫びで答えた。

 殺戮が始まった。



夜間戦闘! ラルハースの水の騎士は、魔族の眷属召喚もこなす魔法騎士。水魔の群れとの戦いは、マリュアッドの騎士にも厳しいもので・・・


ラルハース戦役に関しては、「丘の上の貴婦人」でかなり語ったのですが、こちらも絶版、Amazonにすらないな(汗) いずれ復刻したい。


★本作は、朱鷺田祐介の公式サイト「黒い森の祠」別館「スザク・アーカイブ」で連載され、64話で完結したものを転載しているものです。

http://suzakugames.cocolog-nifty.com/suzakuarchive/

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