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6話 気
『・・お煎ちゃんとは、神社の前で出会ったんだ』
新吉の顔が少し、微笑んでいるように見えた・・・
『可愛くて気立てもよく、俺は一目で好きになっちまって・・・だけど、俺は盗賊・・・お煎ちゃんに迷惑を掛けたくねぇし、近寄らねぇ様にしてたが、お煎ちゃんは俺を遠くで見掛けても、嬉しそうに駆け寄ってくるんだ。そんなお煎ちゃんがたまらなく可愛くて、気づいたら毎日会う様になってた・・』
地面を掘る手も止まり、当時の二人に思いを馳せたかと思ったら、険しい顔で地面を掻き出す・・・
『俺は盗賊から足を洗うつもりだった!・・・1日働いて二朱銀1枚の大工仕事に就き、汗水たらして働いてよぉー・・・でも、安のアニキに見っかっちまって・・・』
『おぉー新吉じゃねぇか!最近見ねぇと思ったら、大工仕事かよ!』
『はい・・』
俺は嫌な処を見られちまった・・と思ったら、そこにお煎ちゃんまで来ちまって・・・
『新吉さん!喉乾いてるんじゃないかと思って、冷たいお茶持って来ちゃった!』
お煎ちゃんは、飛びっきりの笑顔を魅せていたが、俺は、その笑顔に応える気になれなかった・・・