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5話 落
『新吉・・・いってぇ何が起きたって言うんだ!』
新吉は聞こえてねぇのか聞かねぇのか、地面を掘り続けていた・・・俺は溜め息を付いて
『可哀想に・・その女は、酒屋の処の娘だろ・・・盗賊が堅気の娘に惚れちまったか・・・』
俺の言葉に新吉は、掻いている砂を『ギュッ』っと握り込み
『俺は、もう盗賊じゃねぇ・・・クソヤローとは、縁を切ったんだ・・・』
『もっと早く・・切るんだったな・・・』
門倉のダンナの呟きに、新吉の目からボロボロ涙がこぼれ落ち・・・
『・・盗賊だけじゃねぇ!世の中の奴等は、自分の事しか頭にねぇクソヤローばっかりなんだよー・・ちきしょお・・・』
悲しみと憎しみ、怨みと怒りを込め地面を掘り続ける・・・ボロボロの手にボトボト涙を落とし・・・
そんな新吉の様子に門倉のダンナも心を打たれ
『そのクソヤロー共の事、俺達に話してみねぇか、酒屋の娘も少しは浮かばれるかもしんねぇぞ・・』
と聞かずには居れなかった・・・
新吉は顔を上げ、木に寄り掛かった娘を眺めると、二人の事を振り返りながら、話し出しやした・・・