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3分読み切り短編集

犬と恋人と麺の日

作者: 庵アルス

 今日は十一月十一日だ。

 ゾロ目の日はワクワクするが、今日は一段と楽しい気分になる。 

「今日なんの日かわかる?」

 友人に聞いた。今朝、コンビニでいくつか買ったお菓子を後ろ手に隠しながら。

 友人はにっこり笑って答えた。

「犬の日でしょ?」

「え?」

「世界中で愛される、人気ナンバーワンなペットである、ワンダフルなオンリーワンなワンちゃんの日!」

 あぁ、そうだ、この友人、家で何匹も犬を飼ってるんだった。

 確かに語呂としては合っていそうだが、犬の日は別の日ではなかったろうか。

 疑問を口に出す前に、友人は嬉々としてスマートフォンのアルバムを見せた。大量の犬の画像が収められている。

「昨夜のウチの犬、可愛かったんだよー!」

 友人のペット自慢もそこそこに、隠していたお菓子をひと袋プレゼントした。

「⋯⋯犬に盗られないように食べてよ」



「今日なんの日でしょーかっ?」

 今度は、最近恋人ができたという友人に訊ねた。

 友人はにわかに頬を染める。

「恋人たちの日って聞いたよ」

 訊かなきゃよかった、と内心で悔いた。

「一が四つ並んでて、寄り添ってる恋人の足に見えるからそういうんだって」

 恋人に教えてもらったのだと、友人は照れながら告げた。正直、聞きたくなかった。

 リア充め⋯⋯妬ましいやら羨ましいやらは置いといて、お菓子をひと袋プレゼントした。

「これ恋人と食べればいいと思うよ!」



「今日はズバリなんの日?」

 次は、食べることが大好きな友人に問いかける。お菓子も好きだろうから、期待した

「麺の日!」

 聞いたことのない答えが返ってきた。

「麺⋯⋯?」

「一がずらっと並んで、細長い麺みたいに見えるからだって」

「へぇ⋯⋯」

 意外と勉強になった。

 友人は目をキラキラと輝かせる。

「だから今日だけ、駅前の泰田軒がトッピング一品無料だってさ! 一緒に行く?」

 食べたいのはラーメンじゃないんだ⋯⋯とも言えず、お菓子をひと袋プレゼントした。

「行かない⋯⋯けど、食後のデザートにでもこれどうぞ」


 

 友人と同じ日を記念して、お菓子を食べたいだけなのに。

 それとも自分が思っている記念日はマイナーなのだろうか?

 不安になって、スマートフォンで『今日はなんの日?』と検索する。

 すると、出るわ出るわ、記念の数々が。そしてなんと十一月十一日は、日本で二番目に多く記念日にされている日にちなのだそう。

 そりゃあ、期待する答えも出ないわけだ。

 不貞腐れていると、友人がふらりと現れた。

 おや、という顔でこちらを見る。難しい表情をしているのが意外だったのだろう。

「⋯⋯今日はなんの日?」

 今度はどんな返事が返ってくるだろう。なんだか疲れてしまっていて、期待は少しもしていなかった。

 友人は目をぱちぱち瞬かせた後、

「ほい」

 と、細長い個装を差し出した。

 一瞬、なんなのかわからなかった。友人たちに渡してきた物と、全く同じお菓子なのに。

「ポッキーの日でしょ、これあげる」

「え⋯⋯?」

 じゃあ、と立ち去ろうとする友人の背を、かろうじて呼び止める。

「一緒に食べようよ」

 友人はきょとんとしてから、可笑しそうに笑って戻ってきたので、鞄に残っていたポッキーを大慌てで取り出した。

2020/11/11

今日はチーズの日でもあるらしいのでチーズを食べます。

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