神造兵器だけど100年以上誰にも抜かれなかったので自分で勇者を探すことにしました。
神造兵器
神が造り、人に与えた伝説の武器。
その所有者に様々な加護を授け、人を越えた力を発揮させることができる最強の兵器。
その内の一つ、剣の兵器ガリアスは所有者を待っていた。
美しい銀色を放つ両刃の刀身、柄にはきらびやかな装飾が施されていた。
岩に刺さったまま100年がたっただろうか。
その間ただの一度も、人間を見かけることはなかった。
それもそのはずだ。
ガリアスがいる場所は、凶暴な魔物が徘徊する森の、奥深くだったからだ。人間がこれる場所ではなかった。
ガリアスには自我があった。
「暇だ、もう何もすることがない」
1年目は、勇者と冒険に出ることを夢見て待った。
10年がたった時、勇者が現れるか不安になった。
20年がたった時、勇者に授ける加護が少ないと思い、自分で作り始めた。
50年がたった時、勇者に授ける加護が数え切れないくらい増えたので、作るのを止めた。
80年がたった時、勇者に求める条件を下げ、人間であればいい事にした。
100年がたった今、彼は待つことに飽きていた。
「神よ、私はいつまで待たなければいけないのでしょうか?」
天に向かい尋ねる、だが返答はない。
ガリアスを造りだした神も、この世界からは消えてしまったようだ。
ガリアスは悩んだ。
神造兵器であるガリアスは、朽ちることはない。
抜くものが現れない限り、この場所で永久に待つしかないのか。
「もはや、神は消えた」
そう考えたガリアスは、自分で勇者を探すことにした。
本来であれば、ガリアスは神罰を受けることになり、消滅していただろう。
だが、もう神はいない、罰を与えるものはいないのだ。
「待つだけではだめだ、自分でふさわしい相手を探すのだ」
加護【重力操作】を発動させ、台座から刀身を引き抜く。
宙に浮かび上がるガリアス、続いて加護【気配感知】を発動させる。
魔物の気配とは別に、遠くだが人間の気配を感知することができた。
加護【大気操作】を発動し、人間の気配がする方へ向かう。
まだ見ぬ勇者との出会いを夢見て、宙を舞うガリアス。
後に、伝説の聖剣と呼ばれるガリアスの冒険が、今始まった。
文章力向上のため短編投稿しています。
良ければ長編も読んでいただけると嬉しいです。