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疾き波は岩をも割き  作者: 吾桜紫苑
2章 旅立ち
58/232

58 武器

 その後も、妖を見ると、半ば本能的に異能を銃で射出した。疾は、妖を一撃で殺せるその術を、複雑な気分で受け入れる。


(まあ、あの無駄に消費の激しい魔術を、そうしょっちゅう使うのもな……)


 実際、妖を撃退した直後に魔術師に襲われたこともある。魔力が目減りしていては、いつか足を掬われかねない。そういった面では、魔力の消耗に関わりのない異能は便利だ。


(ただ、銃がな……メンテが追いつかない)


 魔力を撃ち出すように作った魔法具は、それ故に異能を射出するには本来向いていない。連射すると魔力回路を駄目にしかねない。となると、異能は異能で別に扱う魔法具が欲しくなる。


「作るか……?」


 1人呟いた疾の机にあるのは、受験対策の問題集。過去問から解いてみているのだが、余りの簡単さにやる気を奪われ、解きながら魔術の考察を行うという、不真面目極まりない受験勉強真っ最中だった。

 なお、懸念していた古典と日本史、世界史も、辞書と教科書を確認して勉強は終わった。ラテン語より易しければ怖くない。

 それはそうとして。今の疾にとって、問題は銃だ。


「材料は、親父に頼むとして。異能用の回路を編み込んで、魔力用の銃と同じ性能を出すって……時間かかりそうだな」


 そもそも、異能を魔術回路に乗せて武器に出来るのか。自分の身の内に共存していることを思えば不可能ではないだろうが、普通の魔術理論では叶わないのは確かだ。色々試してベストの武器を作るには、それなりの時間が必要となるだろう。


「それまでは、整備に力入れるしかないか……」


 手間が増えたことに渋面を浮かべつつ、疾はそう結論を出して、銃を取り出した。丁寧に魔力を流し、回路を整える。その上で強度を上げるための魔力充填を行って、異能を扱った際の耐性を引き上げた。


「よし」


 傍らで問題集を目で解き進めつつ作業を済ませた疾は、続いて魔道具の作成に入った。最近、各方面の襲撃が増えている為に、消費が激しくなっている。


「あと1回くらい異世界に行っておきたいが……受験まで1週間だよなあ」


 なるべく時間軸もずれないように魔術を編んではいるが、魔力不足や自身の怪我が原因で時間がずれてしまう事が何度かあった。両親には連絡が遅れる可能性のある時は事前に伝えておくという対策で茶を濁しているが、まさか受験を受け損ねる訳にもいかない。


「そんな阿呆な真似しでかしたら、確実に強制送還だな」


 ほぼ間違いのない予想を苦笑混じりに呟き、疾は小さく息をついた。安全を期して、ここは受験が終わるまでは異世界転移は控えた方がいいだろう。


「じゃ、そこまでは銃の制作に力を入れるか」


 そう結論を出して、疾は一通り解き終えた問題集を傍らに置き、魔道具の作成に改めて集中した。

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