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錯覚

仕事を終えたチエが、キレイになってた周辺に驚いて、喜んだ後、「安静にしてなきゃ、ダメだよっ」って、眉根を寄せて、口を尖んがらせて言った。

ぷっと、その顔に吹き出してしまう。

ガキの頃とおんなじだ。

 

もう後はおとなしくしてなさいと、ソファーで寝転ぶことを命じられて、俺は言われた通り、ごろごろしてる。

なんとなくついてるテレビを見てるフリして、その向こうで飯の支度してるチエを見てる。

 

肩までの髪をひとつにまとめ、水色のキャラクターの柄のエプロン姿で、ご機嫌に料理してる。

包丁で食材を刻むリズミカルな音や何かを炒める音が聞こえてくる。

 

別に俺は退院直後であるものの、絶対安静なわけじゃないから、寝てなくてもいいと思うのだが、ソファーでチエの姿を見てるのが、心地いいから、とりあえず黙っていうことを聞いておく。

 

今日はカレーらしい。香辛料のいい匂いがしてきた。

 

昼はチエの作ってくれた弁当をキレイに平らげ、弁当箱も洗っておいた。

 

カナがいなくなって2年余り、一人暮らし生活も板についてきた。

料理の腕も格段、上がった。

それでも、一人で作って食べる料理は、味気ない。

 

俺のために、食事を作ってくれる人がいる。一緒に食べてくれる人がいる…

それは、俺の心を和ませてくれる。

 

…でも、チエが兄貴を好きだったのだと知った今と、知らなかった時では、何かが違う。

 

チエを好きになったら…

 

ん?

あぁ、そうか。

俺はチエを好きになりそうに、


…なりかけて、


…なっていたのかも、

しれない。

 

あぁ、そうだったのか。

 

「熱っ」

ガシャンと、金物の落ちる音と、チエの叫び声。

考えるより先に体が動いていた。

 

「大丈夫かっ?」

鍋の蓋とお玉杓子が転がってる。

大方、加熱してる最中の鍋の蓋を素手で触ったのだろう。

 

「ドジっちゃった」

照れ笑いして、軽く舌を出すチエ。

 

「んなことより、冷やせよ」

チエの腕を引き、水道を開き、流水にチエの手をつける。

 

強引にチエを引き寄せたので、後ろから、チエを抱きしめるような体勢になっていた。

 

しばしの沈黙。

水の流れる音とつけっぱなしのテレビの音だけがしてた。

 

「リョ、リョウちゃん…」

チエに名前を呼ばれ、体が密着してることに気付いた。

 

はっとして、体を離し、水を止めて、チエの手を見る。

 

「たいしたことなさそうだな」

動揺を隠しながら、平静を装ってしゃべる。

 

「気をつけろよ」

ぽんっと、チエの頭に軽く手をのせ、一瞬、彼女に触れた。

 

びくっと、チエが反応する。

それには、気付かないふりして、落ちてた鍋やお玉を拾って、汚れた床を拭く。

 

「私がっ」

拭き掃除をしてた俺から、雑巾をとろうとして、チエの手が俺の手と重なる。

さっとひっこめ、赤くなるチエ。

 

そんな反応するなよ。錯覚してしまう。

 

おまえも俺が好きなのかと…

 

「俺がやるから。チエは鍋をみて。…焦げてるかもよ?」

「あっ」

チエは慌てて、立ち上がって、コンロに向かった。

 

さっきまで、密着してたチエの温もりが体に残ってる。

 

俺は、チエを…

いや、きっと錯覚だ。

一人の時間が長かったから、優しく世話してくれるチエに恋心を抱いたような気になっているだけだ。

病気で体が弱って、カナの幻まで見るほど、精神的にも弱ってるから、錯覚してるだけだ。

 

チエの反応も、照れてるだけで、シャイなだけで、俺じゃなくても、あんな反応をするんだ。

だから、勘違いするな。

 

俺は心の中で、自分に言いきかせた。


 

恋は錯覚から始まるものである?

好きかな?

好きかも?

大好き〜みたいな?

定番な感じの料理中の彼女の怪我シーンですが、そうでもなきゃ、この二人って、触れ合いシーンなさ気な感じじゃないですか?(笑)

じれったい感じで…

まぁ、そんな二人ですが、また次回も見守って下さい(*^▽^*)/

お付き合い、THANKS o(≧∀≦)o

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