写真
チエが仕事に行ってしまい、俺は朝食の片付けをし、なんだかついでに、キッチン周りの掃除を始めてしまった。
世話になっているので、これくらいは当然だろう。
チエの仕事は看護士で、俺が入院していた病院で働いているらしい。
俺が屋上で倒れた時に、見つけたのは、チエだったのかと、俺は納得した。
看護士という仕事は、キツイ、汚い、危険…3Kが伴う大変な仕事だと思う。
実際、3交代で不規則だし、いろいろ大変なようだ…。でも、チエは自分でなりたくてなった仕事だからと、はにかみながら、話した。
チエは昔から、言いだしたらきかないタイプで、最後まで粘り強いヤツだった。
自分の信念を貫くことは、大人になればなるほど難しくなる。だけど、チエはそのための努力を惜しまないだろう。
面倒見もいいから、チエには、最適な仕事なのかもしれない。
白衣の天使…
チエの白衣姿を想像しようとした矢先、携帯のメールの着信音がした。
"ちゃんと安静にしてる?"
チエからだ。
淫らな想像をしたわけじゃないが、なんだか悪いことを見つかった子供みたいな気分になった。
"大丈夫だよ 仕事、がんばれよ"
照れ隠しにすぐにメールを返した。
休憩の合間にメールをくれたんだろう。
"ありがとう。がんばってくる"
短いメールのやりとりに心が和んでいた。
無意識に鼻唄なんか歌っていて、ついでにと、家具の拭掃除を始めていた。
テレビ下のダッシュボードのガラス板を拭いた時、弾みで扉が開き、中からアルバムが飛び出した。
アルバムが開いた形で落ちたので、見るつもりはなくとも、写真が見えた。
その写真を見て、思わず、笑みが浮かぶ。
「懐かしいな」
そこには、子供の頃の俺たちがいた。
俺とチエと兄貴の3人で写っているのが多くて、他のページもめくってみる。
兄貴の横で、笑ってるチエ。
少し離れて、横向いてる俺。
あぁ、そうか。
写真を見て、気がついた。
チエは兄貴が好きだったんだなって。
長い休みの度、うちにきてたのは、そんな理由だったんだな、と妙に納得した気分になる。
「そうだったのか…」言葉にしたら、思いあたる節がある。チエが来なくなったのは、兄貴に彼女が出来た頃からだったような気がしないでもない。
チエが兄貴を…納得できたが、なんだろう、この気持ちは?
なんだか刹那いモヤモヤした感じがして、無意識に歯ぎしりをしてた。
早いもので、5話めです。
感想、なんでもいいので、聞かせて下さい。
まだまだ未熟ですが、完結まで、がんばります(*^▽^*)/
お付き合い、よろしく〜