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 「勝ち目はない、ですか。それはまた大きく出ましたね。」


ゴールドは目を細めて心外そうに俺をにらむ。俺はというと刻印にさっきゴールドに開けられた傷穴から流れた血液を代償として捧げる。



その血を吸った刻印は一層赤く輝く。身体能力強化をさらに自分にかける。明日ろくに体動きそうにないけど仕方がない。



「ならその言葉証明してもらいましょうか!Dクラスの落ちこぼれ君!!」


かっ、と目を見開いて笑うゴールドの顔は狂気に歪み、口元は三日月のように細く口の端はつりあがっている。



俺の両サイドに魔法陣が出現して両方から電撃が放たれるが、すでにそこに俺はいない。空振りした魔法を呆然と眺めるゴールド。普通に移動しただけなのにこれか。



「よお。」



懐に入り込みしゃがみこんでいた態勢から起き上がると同時にその勢いのままゴールドの顎を殴りあげる。ゴールドの体が少し浮く。でも感触が弱い。こいつ少し体をそらしたのか。



「があ……!?」



ゴールドは信じられないといった様子で俺を下目に捉える。ゴールドの首をつかんで地面に押し付けた俺はさらに魔法を行使する。こんなので終わるわけがないだろう。



「“その重力は道化師の”」



ゴールドは地面に押し付けられた状態で身動きが取れず、そのまま見えない何かに押しつぶされていく。“その重力は道化師の”消費した魔力に応じて相手に圧力をかける黒魔法。俺の今の限界では相手を完全に押しつぶすとまではいかないが相当のダメージは与えることは可能だ。



ゴールドを中心に地面が沈み、クレーターができる。ミシミシという音が響く。これで終わってくれたらいいんだけどな



しかしゴールドはグハッ、と苦悶の声を漏らしただけで意識を刈り取るまでには及ばず、再度俺の周りに魔法陣を展開しけん制する。俺は舌打ちをしてバックステップで距離をとる。



「才能のかけらもないDランク風情が……Bランクである僕にここまで恥をかかせやがってぇ!!!」




ふらふらと足元がおぼつかない様子で立ち上がったゴールドは反乱狂で俺にがなり立てる。



「あらー完全に白人は本気を出してるね。良きかな良きかな、これで私の黒魔法の株もうなぎ上りってやつだ」



エキドナさんのうれしそうな声が聞こえる。そういえばそういう理由で教えてもらってたんだった。完全に忘れてた。




「“雷神の怒り”、“電神化”同時発動。僕が使用できる上級魔法を同時に使用して君を葬ってあげよう。


恨むなら僕に恥をかかせた事をあの世で悔め。」



ゴールドの体がどんどん人からかけ離れたものになっていく。徐々に体の輪郭がなくなる。最後には人の形をした青白く発光する電気の塊となる。ゴールドだったそれはにやりと笑うと次は人差し指を立てて天を指す。



「古来より神は雷を使用した。僕はね、これで今まで多くの落ちこぼれを焼いてきた。本当に、神罰を下している気分になれて気持ちがいいんだ。」


ゴールドは顔を醜く歪めて笑う。その表情は心から信仰者たち、というか自分のしていることが間違っているとは思っていないものだ。ゲス野郎が。俺の顔から表情が消える。





快晴だった空を黒く厚い雲が覆っていく。辺りはすでに暗い。雷鳴。空に大きく広がった魔法陣からは電流が迸る。なるほどあそこから雷を落とすってわけか。





「私の上位魔法は魔力で作り出したまがい物の雷などではくてね、天候に作用し本物の雷を使用する。気を付けることですね、さっきのように魔法陣を察知して避けることはもうできない。気づいた時にはすでに雷撃の餌食です。



さらに、私の体は“雷神化”によって電気そのものに変化させました。触れようものならその瞬間、さっきあなたの肩に穴を開けたものとは比べ物にならないほどの電流があなたに流れ込むってことです。



さあさあ、落ちこぼれよ。君はどうやって私に勝ち目のなさを証明してくれるのかな?」



上空に浮かび上がったゴールドが俺を見下し高笑い。完全に自身の勝ちを確信しているようだ。本当に馬鹿なやつ。




「この落雷に焼かれても、僕に触れても君なら死ななそうだし。


くくくく、とことん死ぬまで踊ってもらいましょう。その死の舞踏で僕を楽しませるがいい!!」



ゴールドの言葉を契機に俺の頭上に稲光。そして雷鳴とともに雷が俺に降り注がれる。俺はその瞬間、ある魔法を行使する。上級黒魔法改め概念魔法。“干渉”



俺は右手のひらを真上に挙げて雷撃を受け止める。そしてそのままその雷撃を地面にそらす。雷撃は地面にぶつかるとそのまま放電してなくなってしまう。



「な、雷を受け止めただと……」


ゴールドが信じられないといった顔で俺を見る。周りを見渡すと会場全員が静まり返り固まってしまっている。エキドナさんは誇らしそうな顔だけど。



「この“干渉”が俺の使える上級黒魔法だ。この世すべてに“干渉”できる魔法。まあ魔力消費も半端ないうえに体にかける負担も大きいけど発動すればこんなことができるぜ。」




俺はこぶしを振りかぶって目の前の何もない虚空を殴る。しかし俺の手には打撃が入った感触がある。その理由は……



「がは……」



「距離に“干渉”して“打撃が入ったことにした”。これがこの魔法の力。“干渉”するってことだ。もちろん雷になっているお前の体にも“干渉”しているからな。もうお前は防ぐこともできないし、逃げることもできない。な、勝ち目がないだろう?」



俺は空中で腹を抑えるゴールドをまっすぐとらえて言い放つ。ゴールドは口の端から血を流し俺を睨む。な、俺は間違ったこと言ってなかったろ?


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