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「それで、何か体に変化はあるかな」
エキドナさんは俺の体を気遣ってくれているようだが実際は違う。
完全にその目はモルモットをみる科学者の目だった。
「いや、これといった変化や症状はありませんね。」
俺は素直にまだ自分の身に異常がないことをエキドナさんに伝える。
「大体吸収するのに三十分と見積もって、それぐらいしたら症状は始まるだろうね。
主に症状としては幻覚、幻聴、精神の不安定、吐血、喀血、嘔吐などなどが中毒症状の主なラインナップだよ。
さっきも言ったけど本当に命の危機が来れば私は止める。」
「ほかの生徒は止めなかったんですか?」
エキドナさんは意外そうな顔をして答える。
よかった、さっきまでの怒りはだいぶ収まっているようだ。周りの靄もなくなってだいぶ視界がクリアになっている。
「自分に起こるかもしれない症状を聞いても顔色一つ変えずにそのことを聞いてくるか。正義感なのか、それともただのバカなのか
たいていの生徒は君と違って魔力を十二分に兼ね備えていてね。この血を飲む必要がなかったんだよ。
それに魔力がないならと普通の生徒は黒魔法をあきらめていたしね。」
エキドナさんはふふふと少し笑って椅子から立ち上がる。
完全に機嫌は直っているようだ。
案外エキドナさんは気分屋なのかもしれない。
「でも三十分も待つのは面倒ね。うん、魔法で君を三十分後の状態まで進めよう。」
撤回、この人ただのノリで生きている人だ。まあ俺が言えることじゃないけれど。
ちがう、今はそんなこと考えている場合じゃない!!
「ちょ、エキドナさん!俺まだ心の準備が!!」
「なーにおぼこぶったこと言ってんのよ。ほーらいち、にの、さん!」
エキドナさんがまた指を鳴らすと俺の体に緑色の光がまとわりつき、その光が消えた瞬間。俺の世界はぐにゃりと歪む。
気づけば体のバランスを崩して俺は天井にあるバカでっかいシャンデリアを見ていた。
おっきいなぁ、これ落ちて来たら死ぬなぁ
「白人様。私がボーっとしている間にいったい何が」
倒れる俺を抱きかかえる形でキャッチしてくれた小夜さんだが、放心から戻った開口一番俺に現状を尋ねる
でもおかしいな、小夜さんって二人もいたっけ?
「お嬢ちゃんよ、彼はね。私との話の流れ上悪魔の血を原液で通常の五倍飲んだの。そしていまその症状が出てきてぶっ倒れたってわけ。
さあ、君のさっきのことば証明してもらおうかな。」
「え、そうですか。ならもう白人様はしんで……」
現状を分かりやすく的確に小夜さんに説明してくれるエキドナさん。そしてそれを聞いて俺の命がなくなるのを確信する小夜さん。
いやまって、この感じ確実にさっきエキドナさんが言ってた症状じゃない。だってなんか視界は常にピンボケしてるし、ちょっとえづくし、それになんか心地よい浮遊感も。
「ああ、彼には地獄のような苦痛と生きてきたのを後悔するような精神不安が襲ってくるだろうね。」
「いや、すいません。なんか体がほてって、心地よい浮遊感と満足感に満たされてるんですけど、正直週一でもいいかなってぐらいにはいい気分です。」
俺は支えてくれていた小夜さんにお礼を言ってふらつく体をゆっくりと起こしていく。
この症状、どっかで聞いたことが……
「……いや、そんなわけがあるわけない。私は悪魔の血の中毒症状で多くの人間が命を落としたのを見てき……」
「実際、おれ幸せな気分で今にも眠っちゃいそうなんですが」
俺はふらふらかすかに揺れながらあくびを一つする。
「……“解析”」
「どうなんですか、エキドナ様。この馬鹿、何が起こってるんですか」
小夜さんはエキドナさんに俺の症状を聞く。その様子は夫が不治の病にかかっているのを聞く前の奥さんのようで少し萌えた。
バカって言葉もなんかツンデレっぽく聞こえるし。
「……なんてこと。悪魔の血が完全に適合してる。ここまでくると化け物なんじゃなかろうか。
一応急激に変化したから症状は出ているけどそれらをすべて緩和して、普通の生命体でいうところの酔っぱらいの状態になっているわ。」
エキドナさんは顔を引きつらせて笑った後、頭をぶんぶんと振って目を輝かせる。
小夜さんはというとまたかといった感じに頭を抱える。
「ここまで拒否反応を抑え込めるなら、私のすべてを授けてもいい!!これは逸材よ。私にとうとう運が味方してきたわ!!」
ピョンピョン跳ねて胸をたゆんたゆん揺らす有難いエキドナさんを姿を拝んで俺は意識を手放した。
そのあとめちゃくちゃ爆睡した。




