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月の導き6

クリスマスですかぁ




翌日、朝早く起きると……とはいかず、もともと朝に弱いのに、昨日の夜術の構成に尽力したのが手伝って、ほとんど昼になっていた。

宿で手早く朝ごはん?を済ませるとそそくさと冒険者の建物へと歩いていった。



昨日、今日受ける依頼を決めていたのですぐに受付はすませられると思っていたが思いのほか、時間がかかっていた。というか、まだ受ける依頼を決めていなかった。


決して込み合っていたわけではなく、その理由は、建物で泣き叫んでいたひとりの少年のせいだった



「おねぇちゃんを助けて!!」



ひたすらにその言葉だけを叫んでいる。事情を聞こうと受付嬢が当たっていたが、その一言しか言わないのでなかなか分からない。そして、そのための対策を打てずにあたふたしているのであった



この時、ミツキの頭の中には二つの可能性があった。そう、その片方の可能性のせいで依頼を受け渋っていたのだ。


一つ目は、おねぇちゃんなるものが、病か怪我で、瀕死または、それに近い症状であること


そして、もう一つは、誘拐、拉致、または、それに準ずるもの、だ。



まぁ、泣き込んだ場所が場所だけに、腕のたつ者が必要だと考えると、後者の可能性が大きくなってしまう。

初めは、少年が事情を話すまで待とうと思っていたがあまりにしつこく泣き続けるので、自ら聞いてみることにした。



「おい。少年」


「泣くんじゃねぇ」



優しい声色で囁くように言う、薄く薄く呪力を使いながら、すると少年は


自分から泣き止んで、事情を話始めた。



結局は、ミツキの予想が当たっていた。おねぇちゃんーーー少年の実姉であったが、は、盗賊に拐われたらしい。少年がそいつらの人相を言うと受付やそのまわりの冒険者も見知ったような反応をとった。ぼちぼち有名な悪党らしい。


呪力によって喋らされた形であるので、少年の記憶にはない、だが、目にはしたというものまで話すことができたのだ。受付は、あまりに詳しい事情説明に少々驚いていた。


そして、緊急依頼を発令しましょうとひとりでに呟き、受付口に向かおうとした時、



「まぁ、待て」


受付嬢の動きが止まる


「少年、俺が手伝ってやろうか」


受付嬢の顔がゆがんだ。




「何をいってるんですか、あなたは、昨日登録したばっかりでしょう。知らないかもしれないですけどここら辺で盗賊と言ったら、危険度Aランクの森の怨楽隊おんがくたいなんです。対処するにしてもBランク以上の冒険者複数人であたるもんなんです。ましてや、子供をつれていくなんて」



受付嬢が一回もかまずにすらすらと捲し立てる。その意外な妙技に一瞬感心すると、またもや、少し呪力をほとばしらせて言った。この使い方は、相手に威圧感を与える、という単純なものだ。



「誰も依頼を受けるとは言ってない」


「この少年を手伝うといったんだ」


「何をしたって俺の自由だろ?」



そう残して、たてものを後にした。そして、その後ろ姿についていった影が一つあった。






ミツキの足取りは軽かった。なぜか、それは、もともとこの盗賊を潰すつもりだったからだ。‘’Aランク依頼の盗賊を殺せ‘’というのが、もともと受けるつもりだった依頼だ。


そこに理由が加わっだけ、人を助けるというお願いが加わっただけだ。大きな変化はない。


そして、後ろの少年に問いかける


「少年、お前はどうしたいんだ?」


「助けたい」


「それだけか?」


「?うん、それだけだけど」


「そうか」


純粋でいいな、というミツキの呟きは風がかっ拐っていった。






森のーーと名の付くだけあって、そのアジトは、森の中、しかもその奥にあった。さらに、その森というのは、魔物が出る、奥にいけば行くほど危険度が増すという性悪仕様のため 、その奥にアジトを作る盗賊には、それ相応の力があると見られて、ほぼ最高の危険度が与えられていた。


そのため、依頼もAランク相当だったのだ。普通なら、アジトにさえ到達することができないから。






森の中を颯爽と動く二つの影ーーーミツキと少年は、今のところまだ一匹も魔物と接触せずに森のほぼ中盤にまでやってきていた。


受付嬢に使った《威圧》の呪力をあのときとは比べ物にならない強度で発する。


弱肉強食、それは、どの世界でも変わらないらしい。ミツキから迸る強者の威圧に森の生き物という生き物が逃げ去っていた。


不思議に思った少年は、その事を口に出して聞くほど余裕はなかった。


アジトである洞窟が見えてきたからだ。



「あそこだな、準備はいいか?」


ミツキが少年に問いかけると、こくんと頷く。叫ぶと面倒なので予め声を出すなと言ってある。


「ここから動くなよ」


ちょっといってくる、とでもいいたげな様子で、隠れていた草むらからふらっと出ていく


「おい!貴様、こんなところで何をしている」


洞窟のまわりを見張っていた見張りの一人が声をかける。当然のことである。ちなみに、人数は二人。声こそ脅すように発しているが、その口は隠せないほどにやけていた。退屈していたところに、えさがやって来たのだ。盗賊けものが興奮するのは当然だ。

それにたいしてミツキがとった対応は


「……………………」


「おいっ!きいてんのか!?」


「………………………………」


無視であった。


それでも、歩みは止めない、洞窟へ一直線と、必然的に、見張りの盗賊たちへ一直線と近づいていく。


そして、およそその間の距離2メートルといったところで急にその歩みを止めた。それまでガヤガヤ騒いでいた盗賊たちも、その様子に怪しみ騒ぐのをやめ、腰に付けていた剣に手をかける。

そして、最終通告だとでも言いたげに言葉を発した瞬間


「おい、それ以上近づくと、叩き斬…………る?」


今の今まで目の前にいたミツキの姿が消える。


そのすぐあと、彼らは上下が真っ逆さまになった光景を目にして、直ぐに真っ黒な世界へ旅立った。






ミツキの用いる‘’姿が見えなくなる‘’タイプの技には、大きく分けて二つのものがある。


一つ目が今使った、居なくなったと見えるようになるタイプ


これは、幻術の応用で、姿が見えなくなるという幻術を見せることで、その現象を引き起こす。



そしてもう一つが、今洞窟に侵入したミツキが、まさに使っているものだった。


さっきのものを《幻術タイプ》というならば、こちらは《隠行おんぎょうタイプ》である。


これは、相手は目に見えているのに認識ができなくなるというものだ。つまりは、普通に歩いていても、相手が見えていないからぶつかるということはなく、認識ができなくなるだけで、無意識下では、存在がわかっているので、意識せずとも勝手によけてくれるのである。


ミツキは、それを使って洞窟内をある程度散策し、この盗賊がどの程度の規模なのかを推し量った。



(人数は30人とちょっと。それに、拐ってきたのは、少年の姉だけではないみたいだな、10人くらいいるな)



そして、まずは誘拐された人たちを助けるか、と決めその場所へと向かっていった。






ありがとうございます

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