月の導き4
イブですねー長くしました
外観を見るに、情報通り冒険者の建物だと判断したミツキは、少しの躊躇もなく扉を引いた。
気がつくとこの世界にいたので、外見はもちろんその年齢も変わっていないので、ガキがこんなところに来るな、絡まれるのだろうかということを危惧していたが、自分より小さな子がいるのを目に入れて考えを改めた。
それでもやはり、冒険者という仕事は、最後の砦みたいなものらしく、中にいるほとんどが男であり、ミツキがいい印象を抱いたものは一人もいなかった。
そのまま奥に進み、受付と思われるところまで向かった、5つぐらいあったが、あいにく他はすべてが他の冒険者で埋まっており、必然的に余ったところにいくことになった。
座っていたのは、ミツキより、少し年上の、それでも、ダブルスコアは刻んでいないだろうという女性だった。プロポーションは普通、町を歩けばそれこそ2,3人は会うだろうと言うものだが、顔に関してはそこそこ美人だった。しかし、そこでミツキが考えていたのは
「人の顔を言葉で形容するとはなかなか難しいことなんだな」
ということだった。タイプではないらしい
「登録に来た。ここで間違いないだろうか」
そう言って、懐から銀貨を一枚取り出す。
「はい、あっていますよ。すぐに冒険章が出来上がるので少々お待ちください。その間に冒険者についての説明をさせていただきます」
驚くほど上手なビジネススマイルで機械のようにスラスラと述べる受付。ミツキの返答を聞かずに喋り出した
「この建物は冒険者のためもののです。ここで、様々なところからの依頼の受注、討伐物であれば、換金など、冒険者にかかわるすべてのことはこの建物で賄われます………………………」
あまりにも長くなりそうだったので、そこからは、適当に聞き流しながらだった。内容は、想定、というか、王宮で聞いていた話しと自分の推測を交えたものとあまり変わらなかった。
その中でも重要だと思ったのは、3点
一つに、ランク制度。
S,A,B,C,D,E,Fという段階に別れており、それによって変わるのは、報酬の受け取り額のみという話だった。一応は、冒険者にたいしての目安として、それぞれの依頼にランク付けがなされているが、だからといって、他のランクの依頼が受けられないというわけではなかった。ただ、自分より下のランクのは受けられないらしい
また、報酬の受け取り割合は、一番上のランクのSから、100、90、80、70% と、10%ごとに下がっていくらしい。ただ、いいことばかりではなく、稀に出る強制依頼というものには、上位3ランカーは、強制連行されるらしい。
当然ながら、依頼失敗には、報酬の倍払わなきゃいけないので調子に乗るなと釘を刺されたのもわすれてはならない。
二つ目に、冒険章について。
冒険章とは、冒険者のみがつける身分証のようなもので、そのもののランクと冒険者であると証明するものらしい、ちなみに特殊な方法で名前が刻んであるので人のを用いるとかは、不可能ということだ。
三つ目にーーーミツキは、これが一番重要だとかんがえているーーー冒険者同士の争いにこちらは全く関与しないというものだった。
この意味は、わざわざせつめいするまでもないだろう。
「ーーーーーということになります。おわかりいただけましたか?」
「ああ、問題ない」
そう答えると、少し驚かれた、対して、ミツキも、なぜ?という顔をしてみると
「ああ、悪気があったわけではありません。ただ、ここに来るのは大抵が食いぶちに困った、言ってしまえば、教養のないものばかりなので……」
少し納得のいったミツキだったが、それに続く言葉でまた疑問の谷へと突き落とされる
「…………その髪の毛なら教養があってもおかしくありませんね」
は?という顔になる。ここの世界は黒髪が珍しいのだろうかということを考えるが、ミツキは、ここにくるまでも、同じ空間にもかなりの数の黒髪の人にあったのを思い出した。
「なんだ、黒髪って珍しいのか?」
今度は逆に、受付がは?になる番だった。そうして、ちょっと変なものを見る目を、むけながら、
「いえいえ、あなた髪の毛黒じゃなくて、水色ですよ?」
……。
落ち着いて自分の髪を抜いて確かめるミツキ。間違いなく自分の髪は黒色である。
ーーーーーここでひとつ推論をたて始めていた。
その間にも受付の話は続き
「この国にいらっしゃる勇者様方は、例外なく特徴的な髪の色をしていらっしゃいますから、異世界の方というなら納得という意味です」
ーーーつまり、自分のものの見え方と、この世界の見え方が違うということ。
それに、いきなり勇者とばれるのは不味いので
「ああ、この髪でしたら、今朝ドジを踏んでしまって、変な色の水に突っ込んでしまったんですよ。顔のはどうにかとれたんですが、頭もとれたと勘違いしていました」
「はあ、そうですか」
これだけでは、納得しないのは当然として、さらに追い討ちをかける
「して、ちなみに、その“ゆうしゃ”というのは何ですか?初めて聞いたんですが」
生憎、こういった真剣にふざける、嘘をつく等といった技術においては、特技中の特技であったので、受付も見抜けなかった。
「本当に知らないようですね、それでも驚きましたよ、早めにその髪は直した方がいいですよ、勘違いされますから」
はぁ、わかりました。と答えるミツキ。なんで、勇者の話がスルーされたのか疑問に思うのはいうまでもなかったが。
「冒険章が出来上がりました。一般には肩に巻く方々が多いですが、目に見えるところにあれば問題ありません」
と、渡されたのは、薄いわっかのようなもの、試しにと、肩に巻くと急にわっかが縮まり、腕に違和感もなく、きっちりとしたサイズになった。ミツキが目線で受付に説明を促すと
「魔法です」
と一言答えた。
一通り事務作業を終えたミツキは、依頼が張り出されているところの前にいた。
さすがに王都ということなのか、A-Fまで、様々なものがある。
王宮にいた、クズどもが一緒につれていた兵たちが、精鋭と言われていたので 、正直この世界のレベルがたかが知れたものであったので、見ているのは、ほとんどがABCランクの依頼であった。
そして、受ける依頼が決まると、明日の予定を少し考え、まずは、宿だなと心で呟くと、そのまま、冒険者の建物を後にした。
冒険者の建物同様、宿もあっという間に見つかると、すぐさま部屋をとり、宿屋の簡単な説明を聞くと、すぐさま部屋にこもり、今抱えている一番の問題、つまり、髪の色に対する問題を解決すべく考え始めた。
今日、町をうろうろしなかったのは、そのためであった。
ありがとうございます