サービスは大事
拝啓
複製元の自分様
今、自分はケ何とかさんと対峙し、絶体絶命という状況に陥っておりますが、
そちらはいかがお過ごしでしょうか。
本音を言えば、今すぐにでも変わってほしいかなぁと思っている次第です。
なんとか距離を離せれたのは良いが、索敵を行う三つの頭に二つの瞳、つまり計六つの瞳ではすぐに見つかってしまう可能性が高そうであるというか、そもそも召喚した側である犬モドキの命令とかそういうのはどうなってんだ?
・・・あ、そうだ、命令で気が付いたが、早々におかえり願う事も可能なのではなかろうか?召喚したのなら還すというのも、一般的にはセットになっていて可能だろうし。
よし、ならば即時決行とばかりにライカのいる付近に部分ゲートを作ってはそこに腕を突っ込み、犬モドキの頭をガシッとふんづかまえてから
「(早々に還ってもらいなさい!今すぐ!)」
という本音の言葉を直接たたき込む。
本当に可及的速やかに還ってもらうべきだろう、これ以上こちらの心身的な負担はご遠慮します。
「(えっ!?何故ゆえに!?主殿が待ちに待った願いなのでは!?)」
と、驚きという表情をしながらこちらに伝えてくる。
が、その間にもケ何とかさんは、犬モドキの近くまでこちらを警戒しながらゆっくりと歩いて到達し・・・直感的な危険を察知し、さっきまで犬モドキの頭をつかんでいた腕をひっこんだ瞬間、ケ何とかさんの動きが歩みが止まった。
お座りという格好ではなく、よくある警戒の姿勢とでもいうのか、まさにその状態でその場に立ち止ったという格好だった。
なぜに立ち止ったのかはよくわからないが、犬モドキに"待て"みたいな命令でもうけたのだろうか?いや、真中と端一つの顔は常にこちらを見据えているし、右に軽く動くとそっちの方へとちゃんと動いているし、えーっと、これ、どうなってるんだ?
そういえば、残りもう一つの頭は先ほどからこちらを視ていない。どこを見てるというならば、その視線の先には犬モドキが存在し
あっ
そう口ずさんだ瞬間、"パクン"という音が聞こえてきそうなぐらいのケ何とかさんの動作、それは三つの首の端の一つがライカという犬モドキを、その頭上から一口にかじりついた瞬間であった。
それはもう、"みごとな丸飲み"という物であった。これ以上の表現なんて出来ないぐらいの、それは見事としか言えない行動であった。
成仏しろよ?・・・犬モドキ・・・
って、駄目だろ!ケ何とかさん還すのどうすりゃいいのよ!!
打つ手がなくなるというか、かなり不味い状況になってしまうじゃん!
「(うわっ、舐めないでっ、そこっ、そっ、くすぐっ)」
って、ケ何とかさんから何か聞こえて・・・
・・・
あぁ、飲み込まれたわけじゃなかったのね。チッ・・・
つまりあれか、舐められてるという感じですか。
ケ何とかさんはイヌ科で犬モドキの大本は骨だけに?って、やかましいわ!
というか物理的という意味も含んで、いろんな意味合で舐められてるよね!あの犬モドキは!
お、ほかの頭も、かわるがわるほおばりはじめ・・・あー、これってあれだな、お菓子与えられてハムハムしてる犬っコロて感じだな・・・
よしそうだ、ホネッコ(格下げ)、そのまま時間を稼いでおいてくれよ、その間に対策を考えてみるから!
*****
さて、ホネッコに気を取られている間、こちらは本格的に対応をどうしようか。
こちらの手札としては、自分の超音波工具か、あとはウォールにゲートの魔法しかないねんで?
そもそも超音波工具は触れてなければダメだろうし、ウォールにしろゲートにしろ、どちらも設置型なので先手を打って設置してもモロバレするだろうし・・・うーん、誰も来ないだろうと高を括って、こういう状況に対応する方法全然かんがえていなかったのが悔やまれる。
ここはアレか?
例の投射装置を使うべきなのだろうけど、今、ちょうど掃除用空間と化してる領域にしちゃってて、そういう類の弾が加速状態になっていないというありさま。というか、その投射装置も加速準備から始めなければならないので即興で撃てる代物でもない。とりあえずは、今からでも廃石材の塊を相手の死角になる位置に加速装置を設置し準備しておくとしてだ。
いや、そもそもこのデカ物を葬り去る必要性が無いのではなかろうか。
とにかく元々おられたと思われる世界に還ってもらえればそれで御の字。正直、こんな環境なのに普通に獣として動き回ってるところをみるに、復活とか不死みたいなそういう性能もってそうな気配がありそうな相手に、馬鹿正直に戦闘をする必要があるのだろうか?いや無いな。
ならば、やはりメンドクサイがホネッコを救出し、お帰り願う算段をとるのがベターではなかろうか?
というか、ホネッコの奴、まだ舐められてるし・・・お前、その別世界とかでも、同じ事やられてたのとちがうか?骨だったから気に入られて連れてこれたとかいう理由なんじゃないのかと、勘ぐってしまうぞ?
そんなホネッコを救出するのがもうね・・・って、うわぁ・・・涎まみれだよ・・・見るんじゃなかった・・・ドンビキだよ・・・
と、とにかく、倒してしまっても良いとかいうのは無しでいこう。
実際、いやなフラグでしかないし。ホネッコのあの粘液性の高そうな液体にくるまれた恰好を見ていたら、救い出したくないという心境がとてつもなくあるが、それでも救い出さないと打開する事もないだろうし、ほんとアイツはいったい何してくれるんだ・・・
あ、そうだ逆に相手を気絶なり取り押さえれたりできれば良しってところだろか?そうすれば、触れる必要もないし、そうだ、そうしよう!
なら、どう取り押さえようか・・・ふむ・・・
そんな考えを巡らせていたところ
「(マイスター、ここは私が)」
手の中に連れ出していた事をちょっと頭の中からスコーンと忘れていたディアーナが、その手の中から離れると一瞬光り輝いたかと思えば、以前渡した鎧装備一式に身を包んでいた。
その一瞬の出来事は、まるで宇宙の刑事みたいなプロセスの説明部分を省略した風な感じなぐらい、まばたきをしきる前に完全装備な姿へと変貌していた。
いや、ディアーナさん、そこは魔法の少女的な方法でサービス精神的とも、こうお約束的な・・・
「(何か?)」
いえ、何でもありません!
○評価
・名犬
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・忠犬
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・駄犬
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・犬もどき
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・ホネッコ ←イマココ
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