設定は大事
石材職人の朝は早い
蒼い星が浮かぶ無音の地表世界へと赴き、日の光を体全体で浴びる男が一人。
彼の名は「モント」、年齢不詳
彼は石材職人、様々な作品を石材で作りあげる事を趣味としている。
「まぁ、暇つぶしで始めたんですが、これが中々に面白くて・・・」
いつもの日光浴に決めているチェアに横になりながら彼はいう
「まずは日の光を浴びて、大地から魔力を補充する。これでその日の出来上がりが左右されたりしますね」
作業前に欠かせない行為だという。
彼は、自身の状態が一番であるとも付け加えていた。
作業前の日光浴が終わると、彼は石切り場としている現場へと赴く。
最近では、切り出された岩肌に手を当てて密度の状況を調べるという。
「最近みつけたんですよ、こう、手でふれて相手の中身を音で確認する。これがとくに重要なんです」
すこし笑顔をこぼす彼は、そう言いながらも右手で岩らしき箇所を撫でて音を出し、左手で状況を確認しているとの事である。
早くも職人の技術の一端を垣間見ることが出来た。
あちらこちらと切り出した岩壁を一通り確認しおえたのか、
「よし。まずはここかな?」
と、おもむろに道具を取り出して印をつけていっている
───その作業は?
「ああ、これは先ほどの調査で、良い具合の石がある箇所とそうでない箇所の境目を見分けている所です。」
そう言いながら、彼はタガネと呼ばれる専用の工具を使い、切り分ける場所に線という溝を掘っていった。
その手に持つタガネも、まるで生きているかの様にその岩肌を真っ直ぐに削り出して………
***
「(マイスター、今度は一体何をなされておられるのですか?)」
えーっと、情熱が大陸してる真似してみただけですよ?いや、まぁ、深い意味もないんですけどね。なので、その装備一式はしまっていただけたらうれしいかなぁとか思ったりなんかしちゃったり・・・。
いやね、この魔法って他に何か使い道はないかなーと、訓練、そう!訓練を兼ねて岩盤を調べてたただけなんですよ。うむ!
この超音波っていわれる物で、低周波域が地面調査に使われるとか何とかが、学生時代の講義にあった様な記憶が残っていたので、試してみようと色々やってはみていたんですが、何がどうなってるのかサッパリというオチが付いちゃってたんですが、反響してくる物を"集音する物"がないとあかんやん・・と、だがそこはそれ、スピーカーって逆に使えば"集音装置"になるんじゃ?という逆転の使い方を試してみたら、これまた何かが聞えてる?かもしれないなぁ~という感覚が解った次第で・・・
そうそう、ただ最初は何かが聞こえただけという結果で、とにもかくにも経験だろうなぁという形で、試しに色々と出しては岩盤から切り出し、切り出してはまた状況がどうなっていたのかと調べてと繰り返し繰り返し行っていくこと、どれだけ切り出したか数えたくもないぐらいの量が存在してたりするがそこは置いておいて・・・
で、結論からいうと、一応大体何かがあるかどうかぐらいは解る様にはなったんですよ?
なんか響き方?が微妙に違うというぐらいだけど。あとはちょっと密度?状態?が一定なものかどうかが解る程度といったところかなと。
今では良質な物とそうでない物とがはっきりわかってきた次第です。あれが屑石で、こっちがけっこう上質っぽい岩と、分別すら出来るレベルです。ほら、ね?違うでしょ?
そして、今回は少し大きめな物が切り出せれるなという感触があったので、先ほどの様にプロフェッショナルな意識を持つためにと、ルーティンワーク的に執り行っただけなんです。本当です、ですからそろそろその矛先をですね・・・
(以上、ふれあい会話の内容)
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ふぅ・・・
最近、言い訳が上手くなってきたかなと思うモントです。
壮大な暇つぶし・・・もとい、時間つぶしを手伝ってくれているディアーナには大変感謝してはおりますが、結局、自分自身でも何を伝えたかったのか今となってはよく解りません。
とりあえず言うだけ言って相手の主張を割り込ませない手法とでもいう方法で対応してみたところです。
で、いまなぜにこんな所でえっちらおっちらと良質な岩の塊を切り出しているかと、まぁ、そのアレですよ。ちょっとした建造物の素材にと思った次第です。
ダンジョン内は気圧とか云々もそうだけれども、ポイント的な話もあり、これまた時間が経過しないとまずいよなぁという状況でもあるので、ここは時間潰しと消費を抑えるという両立を目的とした方法をと考え、あと自身の能力にならすという事もあったりなかったり・・・。
えっ?何故そんな事してるかって?
チュートリアル#2-18:【フロアボス専用フィールドを設置しよう】
という奴を消化するためですかね。
石切り場にしている所から少し離れた所に、小さな谷みたいなすり鉢状の地形があるので、底面を均した後に床石もとい、床岩を持ち運んでは簡易的な闘技場?みたいな恰好にしている次第です。ボス専用とかあるから、やはりバトル要素といえば闘技場ですよ。たぶん。えっ?ボスいないじゃんって?ああ、そこはほら、フリーダムな犬っころでいいかなと。どうせ相手もこないんだし問題はないしね。
そして作るならと、あの表面すべすべに出来る能力と、良質な岩を見つけれる能力を駆使し、繋ぎ目が殆ど見えないぐらいくっつかせて離れて眺めてみると、巨大な平べったい一枚岩がそこに鎮座しているかの様に見えるという試行錯誤の賜物という自信作が出来上がってきております。
見た目はあれかな?天下一を決める武闘会場とか、暗黒な武闘会とかそういう類ですかね。我ながら立派な仕事をしたなと自負しております。あ、あとは観客席は何かしらのオブジェも作るべきかな?
まあ、その前にとりあえずはフィールド設定しておこうかと
***
コアルームに戻って、かなりの自信作が出来上がった会場をダンジョン設備として地表を設定し、ついでにフロアボス専用フィールドの範囲設定を行おうとするまではよかった。
うん、そこまではよかった。よかったよ?ただね、その後に続いた設定項目の文字がね…
【フィールド環境設定】設定なし
・・・ナンデショウカコレ。
すんごく見ちゃいけない予感がヒシヒシと感じております。
なんというか、この環境設定の項目内容を確認した途端、不条理という文字を顔面に叩きつけられる予感というか、確定事項にしか思えてしかたないのは気のせいでしょうか。
いや、しかしここは確認しなければ先にも進まない訳でと、自身を説得しつつ設定内容を確認してみて
「あぁ、やっぱりか・・・そうか、そうきたか・・・」
と、額に手を当てながら独り言というつぶやきを漏らしながら、口から何かが出ていく気分だった。
設定項目として選べる内容に「草原」「砂漠」「湿地」など、どこからどうみても地表環境みたいな内容の文字列と、それぞれにそれなりにお高いポイントが表示されていた・・・。




