チュートリアルは大事
状況を整理しよう。
ダンジョンが生成された先は、異世界ファンタジーの衛星の上だった。
以上、整理おわり。
え?自分の異世界ファンタジーライフはどうなるの?モフモフ計画はどうなんの?
リセットできないんですかね?えっ、そういうのは無い?あ、そうですか・・・。
ダンジョンコアのある部屋に戻って、端末を操作してファンタジー世界を堪能する方法が無いかと調べてみるも、対応できそうな物はあるにはあった。
俗にいう「転移」とか「転送」とかそういう類の方法なのだが、いかんせんそれらはポイント消費が激しかった。
そういった転送物は「距離に比例してポイントを消費する」という感じで、あの空に浮かぶ蒼い星までの距離には膨大な消費ポイントが必要になる様である。
試しに指定してみたりしたのだが、比例の仕方がどうみても乗数かかってるでしょ?という具合にとてつもなく酷い。
つまり、簡単な地上への転送にもそれなりに必要なのに、ファンタジーな異世界で惑星と月との間で転送門を開く場合は、えーっと、一・十・百・千・万・十万・・・もう垓から上の呼び方わっかんねぇや・・・
とにかく
1,532,000,000,000,000,000,000,000,000,000
が、必要なのである。
わぁお、少なくとも0が27個あります。やったぜ。
そして現在の持ちポイントは20,000(増える要素なし)
「(やってられるか!!)」(音声は脳内で補完してください)
端末を放り投げ・・・る事もできずに盛大にスカってしまっては、虚しさがより強まる。
本当に、どうすりゃいいのさ・・・
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冒険、というか地表を歩きに歩いたりしたりで数十日が経過した。
その間はダンジョン周辺の地表を散策する事だけにしていたが・・・
月って広いですね、クレーターとかでっかいっすわ、登るにも一苦労ですわ
あ、異世界において月面の足跡、第一歩目とか、これとっといた方がよかったかな?
もう足跡まみれになってるけれど・・・
などと、現実を逃避する方向で過ごしてみた。
環境適応能力と種族補正のお蔭か、酸素が必要ない場所、さらに種族的に食べ物などに困る必要が無いというのが解ったのは、よかったのか悪かったのか・・・
あ、活動するためのエネルギーってやつですが、どうやら種族的には魔力?みたいなのでも事足りるみたいで、ほら、月っていうなれば魔力の象徴?塊?な状態でしょ?なので、地表に出ただけで満タンになるという、ナニコレ?無尽蔵という状況です。
無駄に性能が高すぎる身体能力を悔やむとは思いもしなかった・・・
他にやっていた事といえば、不貞寝という行為を行ってはゴツゴツとした岩肌から冷たい感触もそんなに感じなくなり、どうしようもなく虚しさを感じていたりしては、ひとり寂しく過ごす毎日であった。
ダンジョンコアのある部屋の片隅で三角座りとかしてませんよ?
やれる事も特になく、ポイントを無駄に消費するという思い切った事もできず、空に浮かぶあの蒼い星へと移動する事すらも出来ない・・・
完全に手詰まりである。
私のファンタジー異世界ライフはどこ?
そんな悲哀にくれながら、ただただ寝っ転がりながら端末を弄る毎日である。
この検証用画面も見飽きててヘルプも見飽きてきたんですけどね・・・
と、検証用画面から通常画面へと移行した時に、ウィンドゥの隅っこに何か点滅しているヵ所に気づいた。
そういや、こんなのあったっけか・・・
点滅部分をフリックすると現れる小ウィンド画面、そこにデカデカとでてくる【名前を決めましょう】という画面だった。
名前なんて、いまさらどうでもいいよ・・・
と、感情的にどうでもよくなっていたので、適当に「モント」として登録した。
たしか、ドイツ語で月だっけか・・・
決定を押し、次に現れた画面の文字が見えた際、勢いよく飛び起きて目を見開き画面を凝視した。
そこには、
チュートリアル#0:【名前を決めましょう】終了
ポイント100進呈。
と、そう表示されていたのだ。
〇オリジナル設定
種族:【魔紳】(マシン)
魔族系上位種の一つ。
身体を魔力主体とする肉体構成で構築されており、魔力濃度が薄い場所では活動に多大な支障を伴うが、魔力濃度がある場所では、ほぼ無尽蔵の能力を発揮する為、条件がそろえば魔神すらも凌駕できる"かも"しれない。
肉体的な制限がかかる耐環境性能が、他の種族よりも左右されにくいのが特徴。
※:
この世界において、主に環境実証・検証用として創られた種族。
世界創生時に本採用される事は無かったが、主人公がその設定を根性でみつけだして設定した。