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プロローグ
199X年、世界は核の炎に包まれた。
全ての元凶は些細な諍いだった。しかし、それは世界を燃やし尽くすほどの争いとなった。
民族間の対立、経済的な競合、宗教における認識の相違……。そんなありふれた戦争の一つであったが、すでに理由さえも核の炎に灼かれ、記録にも記憶にも残ってはいない。
文明は悉く打ち砕かれ、傾いた建物がわずかに残る程度しか残ってはいない。草木の覆い茂っていた大地も放射能で汚染され荒野と化し、生命溢れる母なる海はタダの水溜まりと化した。地球は絶望の星となったのだった。
それでも人々は荒廃した大地の上で力強く生き続けていた。
ある者は力任せの略奪を繰り返し、またある者は集団で身を守り僅かな幸福を噛みしめる。
これはそんな荒廃した世界で生き延びる一人の少年の物語である。