御旗のお話(8)
その翌日――つまりは3月1日の、明け方の事。
前夜に訪れた使者の導きで、村雨は正装――政府に属する、赤心隊の羽織姿で、背には黒太刀を括りつけた――にて、開かれた門を潜った。
洛中に在って、最も尊く、最も冒し難い、聖域とも言える地である。
たった数日前に忍び込んだ折は、塀を越え、草陰に潜んで馳せたものであるが、この日は左右に並ぶ松明の列が、村雨とその部下達を迎えていた。
「……とっくに攻撃は始まってるわよ。比叡攻めは」
村雨の横に、もはや副官面が板に着いてしまったルドヴィカ・シュルツが、思い切り眉根を寄せて並ぶ。
村雨以下、赤心隊の一部は加わっていないが、この時既に比叡山では、巨砲〝揺鬼火〟が、城壁に砲弾を炸裂させた後であった。
「分かってる」
無論、戦局がどうなっているかなど、村雨には分からない。ただ、交戦は開始しただろうとは、時間の経過で分かっている。
その答えが悠長に聞こえたのか、ルドヴィカは幾分か、小声で早口になり捲し立てた。
「兵部卿の顔、本気だった。……いやそりゃ、いっつもとんでもない事をやらかす奴だってのは分かってるけど、あの時の面構えは尋常じゃなかったわよ。絶対に何かろくでもない事企んでるわ」
「だろうね、分かってる。……だけど、安心して」
それを、受け止めるというよりは受け流すようにして、村雨は歩いた。すると、前方に、厳かな雰囲気を醸し出す、貴人であろう男が一人、立っていた。
その男は、使者であった。
書状を捧げ持ち、ずうと息を吸い、両足を踏ん張って、
「勅命である!」
と、言った。
その言葉を受けた村雨は、かねてより知っていた風な顔をしながら、その場で地に膝を着く。と、部下達も皆、それを見習って同じようにした。
知っていた風――いや、実際に村雨だけは、堀川卿より聞かされていた。赴く場所に何が待っていて、どう振る舞えば良いのか、全てである。
だから村雨の心中は、澄み渡って晴れやかであった。
使者は書状を開き、読み上げる。この言葉は即ち、天上の言葉と同一である。
「従五位下、兵部少輔の宣を授く! 謹んで受け候え!」
兵権を司る兵部省の、空白となっていた官職――兵部大輔。それは、一介の部隊長程度が受けるには、破格の位であった。
昇殿が許される地位――と呼ぶよりは、かつて一部の大名が与えられていた官職と同等、と言えば良いだろうか。
即ちこの時、村雨には、公家や武家と等しいと言っても過言でない身分が与えられたのである。
無論、この抜擢には、理が伴う。
続けて使者は、また別な書状を開き、こう発したのである。
「兵部少輔に命ず。兵部大輔、堀川卿の指揮下にて軍を率い、朝敵、兵部卿狭霧和敬を討伐せよ。為に兵士五百を率い、また兵部大輔に与える二千の兵と合わせ、比叡山の救援に当たれ。その後には余勢を借り、邪教の主、エリザベートを討伐せよ!」
命が下ると同時、周囲より、ぐわっと歓声が上がった。朝廷の公家達や、衛士達、現状に心を痛めていた者達が、遂に時を得たと喝采を叫ぶ声であった。
もう、目を伏せ、非道が為されるのを見過ごす理由は無いのである。彼等は天に拳を突き上げ、躍り上がって、勅命が下った事を喜んだ。
その歓声の中、村雨は深く頭を下げ、拝命の意を示した。そしてまた別の使者が捧げ持つ旗を、恭しく受け取ったのである。
それは、日輪を誂え、天照皇太神の名をも綴った、勅を表す旗であった。
村雨は旗を高く翳し、応、と叫んだ。周囲の歓声は一層に増して、雲さえ揺るがさんばかりであった。
「……は? あら、ららあ、えっ?」
「言ったでしょう、安心だって。……私達の勝ちだよ」
周囲が夜空に意気を上げる様を、ルドヴィカはまだ十分に理解出来ていないようであったが、それを余所に村雨は、東の空に視線を飛ばしていた。
直ぐにも五百の兵士が、周囲の歓声さえも掻き消す、巨大な声の波となって姿を見せる。彼等は一様に、村雨が着る羽織に合わせたか赤の鎧兜を纏い、長槍一つ、腰には刀と、正規の兵士の軍装であった。
村雨は彼等の前に立ち、頷いて、そして歩き始める。
向かうのは、東――比叡山。
調練の行き届いた兵士達は、己が上長となった村雨の後を、整然と隊列を整えて追う。
御所の門を潜り、大路へと出て――すると方々から、武器を持った兵士達が走り寄り、隊列の後方へと加わって行くのだ。
その内の幾人かは、村雨の前へ進み出て軍令を取り、参戦の許可を求めた。
「天下の浪人、羽佐間の寛治、一族郎党三十名を引っさげ参った」
と、古風な大鎧姿で加わるものあれば、
「河内の僧、詠念、比叡を救うとあらば微力なれど」
などと言って加わる僧兵も、五や十では利かなかった。
「後ろに着いて来て!」
来る者を拒まず、誰にも等しく、村雨はそう答える
勅により村雨に与えられた兵は五百だが、日輪旗の下、兵数は見る間に膨れ上がってゆく。
彼等は皆、与すべき者が立つ日を待っていたのだ。
仮にもし、日輪旗を持つ者が、村雨でなく他の誰かであったのなら――きっとそれでも、彼等は集ったのであろう。
そういう時節であった。
天の時が、人に、立つ事を求めていたのだ。
然し、村雨でなければならぬ事も、在った。
「隙風衆、青峰 儀兵衛。加勢の認を頂きたい」
黒い洋風の軽軍装で揃えられた一団が、疾風の如く現れる。その長、青峰儀兵衛は、村雨とも縁浅からぬ、幾度か袖振り合わせた者であった。
元より中年ではあるが、顔には以前より皺が増えたようにも思われる。然し、皺を刻んだ苦心さえ忘れたように、彼は覇気に満ちていた。
「私の隣に立って、副将を務めて!」
「…………!」
村雨は彼を一瞥し、足を止めないまま、そう指示を与えた。
他の兵と同様に、後列に加わろうとしていた儀兵衛は、思わず目を見開いて、
「……まだ覚えてたか、嬢ちゃん」
「結構思いっきり殴っちゃったからねー、あははは」
いつぞや殴られた頬を、無意識に手で庇った。
儀兵衛ばかりではない。加わった者の中には、村雨が見覚えのある顔――〝看板通り〟で道場を開いている武芸者なども居たし、町人に紛れて機を窺っていた、兵士崩れの者も居た。
村雨はかねてより、根を回していた。洛中を巡り、雪降ろしやら何やら、手伝って回りながら――誰が何に不満を持っているだの、誰は強いだの、そういう話を掻き集めていた。そして、その中でもこれと見た者には、こっそりと話を持ちかけていたのである。
何時か、自分が立つ時は、力を貸せと。
半信半疑で待っていた彼等であったが、前夜、戸を叩いて呼びに来た声に――そして今、日輪旗を掲げて歩く姿を見るに、信じぬ事など出来なかった。
鴨川を超える頃には、与えられた兵の半分くらいには、志願兵が集まった。それを見て村雨は、広い河原にて一度立ち止まり、彼等を横に並べ、その前に立った。
「――――うぉう」
そうして見れば、壮観である。
つい数刻前まで、たった十数人の群れを率いていた筈の村雨は、何時の間にか数百の兵を前にしているのだ。
だが――元来、人狼とは、群れを成す捕食者である。その中に生まれ落ちた村雨もまた、他者を率いる事が、当たり前のようにさえ感じられていた。
言葉を発するより前に、村雨は笑っていた。かかと大笑するのではなく、目は戦場にありながら、牙を剥くように唇の吊り上がる凶暴な笑み――そして、その色も塗り潰す、達成感に満ちた笑みで。
「……集まってくれて、ありがとう」
それから村雨は、何と言えば良いのか分からなくなった。
こうして一所に集まった彼等であるが、その前に立つ自分は、彼等に命令を与える程、大した存在なのか。
偶然にも時節に恵まれ、その中を上手く立ち回っただけの自分が――
「みんな――」
けれども、一つだけ分かる事が有る。
善だとか悪だとか、そういう小難しい動機ではないのだ。
利害だけを考える程に、此処へ集まった彼等は聡くはないのだ。
「――もう、我慢しなくていいよ!」
気に入らぬのだ。
狭霧兵部が作る世の中の形が気に入らない――突き詰めて言えば、此処に集まった連中の想いはそれであった。
義でも理でもない、感情こそが彼等の背を押し、拳を高く空へ突き上げさせる。
意気、空を焦がす火柱の如く、数百の咆哮は束ねられ、洛中の大気を揺るがしていた。
そして、時が重なる。
杉根智江の手より奪い取った書の文面に、雪月桜は目を走らせていた。
世辞を言っても下手な字が、そこには綴られている。
文章も、口で話すならば流暢だろうに、文字にしてしまうと、まるで子供が書いたような拙さだ。
それでも――稚拙な文から、伝わるものがあった。
隔てた月日と、その間に為した事。見た物。触れた者。
抱いた思いと、変わらぬ想いと。
それらが全て一時に、桜の胸中へ流れ込んで来るようであった。
他の誰にでもなく、たった一人に当てて書いた拙文は、読み辛くもあり、だからこそ幾度も同じ個所を読み返し――
「――――!」
最後の一文は、「この手紙より早く着いてたらごめん」と締めくくられていた。
来る。
何らかの成果を伴って。
そうと知った時、桜の体は自然と動いていた。
罅の入った城壁の外、開け放たれた西門の外へ、跳ぶように馳せていた。
門の外には、屍の腐敗臭や血の臭いが、悲惨な戦場の残り香として漂っている。
桜が討ち取った兵士の亡骸は、政府軍が幾人か回収したと見えて、ほんの少しは数が減っていた。
とはいえ、それでも尚、修羅の野である。
白雪は踏み荒らされ、血で溶け、蹴り散らかされた、惨たらしい光景が広がっていた。
その惨状の中を、真っ直ぐに突っ切ってやってくる一団が有った。
群れの頭の方に並んでいるのは、赤の鎧兜に身を包み、長槍を翳す五百の兵士。歩数歩幅を合わせ、同じ高さに槍の穂先を掲げる、規律正しき一隊である。
その後方に、左右に広く引き伸ばされた形で続くのは、装備も雑多な、町人や浪人や、僧侶などを掻き集めた、有象無象の群れである。此方も二百か、或いは三百か、十分に戦力たる一隊であった。
彼等は旗を掲げていた。勅を表す、日輪の旗であった。
「おお……っ」
桜が、その壮観たる光景に溜息を零すとほぼ同時、後方の城壁からも、外を覗き見ていた兵士が城内の仲間に呼び掛ける、興奮しきった声が聞こえた。
城外の兵が、その声に呼応して、我等此処に在りと吠える。
咆哮に呼応した城内の兵が、よくぞ来たと、雄叫びで出迎える。
二重の大音声が比叡の山に轟き、それは城ばかりか、山全てを震わす力と化していた。
だが――桜には、何も聞こえていなかった。
その左目は、隊列の先頭で胸を張る少女へ釘付けにされ、僅かにも動く事は無かった。
背も、髪の長さも、目に見えて変わった部分は何も無い。
伊達振りをひけらかす赤羽織姿は見慣れぬものなれど、惚れた欲目か、似合いであると思う。
然し何よりも、顔が良かった。
自分の隣で日に日に逞しく育った顔が、自分の見ていない間に、より強く、より美しく育っている。
見届けられなかったのが寂しくもあり、出会いをやり直しているような驚きもあり――そんな想いの全てを塗り潰す程に、愛おしさが込み上げる。
「桜、お待たせ」
「……うむ」
兵を後方に置き留め一人歩み寄って来た村雨を、桜は両腕の中に抱き締め、首筋に顔を埋めた。赤子が母親に縋り付く姿にも似た、無心に存在を求める抱擁であった。
「我儘聞いてもらって、ありがとね」
「構わん」
肩に預けられた桜の頭の、返り血が固くこびり付いた髪を手で梳きながら、村雨が優しい声で言い、桜は掠れ気味の声で返す。
互いに相手の顔が見えぬ形だが、どんな顔をしているかは分かっていたから――桜は顔を上げず、村雨も覗こうとはしない。
「今度は私が助けるから。許してもらった分だけ、あなたの我儘を聞いてあげるから」
「ああ、頼む」
代わりに、抱擁が決して緩まぬよう、村雨は桜の首に両腕を回した。
熱が近づき、鼓動が近づく。
其処に昂りは無かった。ただ、計り知れない程に広大な安堵感が、二人の心を満たしていた。
「ずっと待たせてごめんね、桜」
「村雨――」
互いの名を呼びあいながら、抱擁は続く。桜の顔は誰にも見えぬままだが、村雨の目には確かに、うっすらと光るものが滲んでいた。
「――お前、本当に胸は育たんな」
が、その言葉は無情であった。滂沱の涙とて一瞬で引かんばかりの、残酷なまでに事実だけを告げた言葉であった。
ごしゃっ、という音が、その言葉の後に続く。村雨が桜を突き飛ばしながら、右膝で顎を思いっきりかち上げたのである。
「ひ――久しぶりに言う事がそれかいっ!」
「ぐおぉ、ぉ……久しぶりに会った恋人に膝蹴りとは、薄情な奴……」
「こ、こいびっ、いきなりそんな――って、誰のせいかっ!」
並み居る武術家を打倒し、五体これ凶器となるまで磨き上げた村雨の膝蹴りである。並みの戦士ならば顎を叩き割られて昏倒しようものであるが、そこは雪月桜、痛みに呻きつつも両の足でしかと立っている。その正面で村雨は、ぎゅうと握った拳を震わせながら、白い顔を真っ赤にして吠えかかっていた。
「然しだな、肩も腕も前より幾分か膨らんで、これならば胸の方もと期待してみれば、増しているのは硬さばかりとは――」
「喧しいっ!! そういう事を言うなら――桜、今あなたすっごく臭いよ!?」
「く、臭い!?」
今度は桜が狼狽する番であったが、無理も無いと言えば無理も無い。
と言うのも、現状の桜が纏っている臭いときたら――数十か数百人分の返り血の臭いに、政府軍が投擲した屍の腐臭、火薬やら金属やら戦場につきものの臭いと、当然だが当人の汗と。
それでも人間なら、周囲の悪臭で鼻も慣れてしまうのかも知れないが、村雨の鋭敏な嗅覚にはかなりの刺激であった。
つまり、かなり我慢をしていたのである。
図らずも「我儘を聞く」という宣言を証明した形ではあったが――
「お前……私を女だと忘れておらんか!? 流石に傷付くぞ、いや傷付いたぞ……!」
「その言葉そっくりそのままお返ししてやろうじゃない、あんたの頭は色事ばっかりか!」
「おのれ労わりという言葉を知らぬ奴め……こうしてくれるわ!」
「わっ!? 放せ、はーなーしーてー!」
――何処にその体力が残っていたかというような喧しさである。
先程より尚も強く、村雨をがっしと腕の中に抱き留めた桜は、決して逃がすまいと、村雨の背中で両手指を引っ掛けている。
そして村雨は、身をじたばたと捩って拘束から逃れようとするのだが、そこは怪力の桜の事、一寸の隙も生まれない。
周囲の兵士達も、このやりとりに割り込んで行く事も出来ず、なんとも言い難い表情で見ているばかりである。
その内、村雨が桜の脛に、蹴りを五、六回も叩き込んだ後の事――ふっと、桜の腕の力が緩んだ。
「――あっ」
その隙に腕を振り解いた村雨は、直ぐに気付いて、崩れ落ちる桜の体を支える。頭を肩に預けられていた時以上に、ずっしりとした重みが、村雨の体に寄り掛かった。
なんと桜は、村雨を抱き締めたままで眠っていたのであった。
つい先程まで、他愛無い口論をしていたばかりだと言うのに――村雨は溜息を吐いて、それから、他の誰にも見せないような優しい微笑みを浮かべて、桜の体を肩に担ぐ。
「……疲れてたんだね、桜」
微動だにせず寝息を立てる体を抱えたまま、村雨は比叡の西門を潜った。
後続の兵士達が入場し、また城内よりも幾人か、中心の立場であろう者達が進み出て来る中、村雨は一人、まるで違うものを探していた。
果たして、それは直ぐに見つかる。
雪を溶かした水を張った、巨大な鍋である。
戦場より戻った兵の喉を潤す為に用意された鍋は、そのままで鹿やら猪やらを丸ごと煮る事も出来るだろうという大きさであった。
「それ、冷めてる?」
「はい? ……はぁ、火を落として暫く立ちますが、ぬるいくらいかと」
「ん、ありがと」
鍋の横にいた男に訊ねれば、男は意図を察しかねるという顔をしながらも律儀に答える。
すると、村雨は人懐っこい笑顔を作って礼を述べた後、
「よいしょっ」
担いでいた桜をその鍋に投げ込み、更に自分も鍋の中に飛び込んだのであった。
横の男が珍妙な声を上げるのも構わず、村雨は更に暴挙に出る――桜の纏う衣服を剥ぎ取って、鍋の外へ放り出すのである。
「誰かー! それ洗っといてくれるー!?」
そして、大量の水を使ってごしごしと、着物を手洗いする要領で、村雨は桜を〝洗濯〟し始めたのである。
手足も髪も、こびり付いた返り血を擦り落とし――顔を洗ってやる時は、頭ごと水の中に沈めもし――ながら、ざっぱざっぱと豪快に水を跳ねさせ、洗う。
そんな扱い目覚めぬ辺り、桜の疲労の程もかなりのものであったのだろうが、然し〝雑〟なやり方であった。
「あんた、ちょっと! 後ろの連中への命令とか、城の状況把握とか――」
村雨の補佐を務めるルドヴィカが、至極真っ当な進言をするのだが、
「全部任せた! 儀兵衛さんと適当に相談して良い感じに宜しく!」
「適当、って――あんたコラァッ!」
いかんせん今の村雨に、その他の事項を聞き入れる度量など残っていない。
恋は盲目と言うが、成程まっことその通りであった。
こうして比叡山の包囲網は完全に解かれ、疲弊した城兵には休息が、そして満腹して尚余りある程の兵糧が届いた。
城中の残兵に加えて、十字教徒の援軍が三百、村雨に与えられた官兵が五百に、志願兵が三百前後。一時に膨れ上がった戦力は、然し錦の御旗を得て、一兵残らず士気を昂らせていた。
これより比叡の軍――いや〝日の本政府〟の軍は、再編成の後、二条城への攻撃を開始するであろう。
〝逆臣〟狭霧兵部和敬と、それに与する〝大聖女〟エリザベート討伐の戦は、比叡山に顕現した地獄より平穏であろうと、誰もが信じている。
1794年3月1日、後の史書に、一つの内乱の終わりとして記される日。
雪月桜と村雨は、遂に再開を果たしたのであった。




