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死戦(7)

 仰木 陣内は、一言で言うなら〝地味〟な将であった。

 六十を過ぎた老体で、実年齢よりも少し年嵩に見られる程、顔には皺が多い。

 武勇に於いても知略に於いても、何か飛びぬけた才覚というものは持ち合わせていない。

 数十年、政府の軍中に努めて、大きな手柄というものも無い――そも戦が数十年は無かった国だ。

 仰木が積み重ねた功績は、本当に地味なものばかりである。

 市中警備であったり、兵の鍛錬であったり、或いは後進の将の教育であったり――刀や槍を振るって、賊を斬り伏せるような功績は、一度たりと上げた事が無かった。

 だが――大きな失敗をしない男であった。

 狭霧兵部が本陣に座す際は、白槍隊の作る円陣を囲むように、仰木の兵が布陣する。狭霧兵部が将に冠した序列では、赤心隊の冴威牙などを差し置いて、波之大江三鬼の次に名が上がる。

 それは偏に、兵を束ねる技術が高いからであった。

 桜に中央突破をされた時も、直ぐに浮足立つ兵を鎮め、本陣の防衛線を敷き直した。

 此度の戦では、砲撃に乗じて東側から攻め上がったが、方々に隠された抜け道を悉く見つけ出している。

 そして今――仰木は、その抜け道を進んでいた。


「………………」


 無言。

 ただ黙々と、地中に作られた抜け道を進んで行く。

 狭霧紅野が比叡の山に作らせた抜け道は――或いは元より比叡山に有ったものを拡大しただけやも知れぬが――予想以上に広い。兵士の数人ばかりは、横に並んで進む事が出来る。

 入口は山中に数十もあるが、恐らく到達地点は一か所であろうと、抜け道を行きながら仰木は察していた。

 この抜け道に入ってからというもの、緩やかな傾斜が続いている――登り続けている。そうしながら、時折、別な抜け道から入って来た者達と合流する事も有った。

 この構造を察するに、恐らく城内に一か所か二か所の出口が有り、そこから暫く進むと、広場のような場所があるのだろう。其処から四方に道が分かれ、更に四方に別れた道が数通りに分岐し――と、そういう作りの筈だ。

 仰木は、自分がこの道を抜け、政府軍の兵士の先頭に立って、城内へ踊り込むのだと決めていた。

 あと二十年もすれば、大きな病気をせずとも、大概は死んでいておかしくない年齢である。

 生まれた時代を間違えたか――戦を生業としながら、戦に出会えぬ生であった。その終わりも近づいた時に、内乱ではあるが、戦を迎えられたのだ。

 手柄を上げずには、生きられない。

 この機を逃せば、死ぬまでに大戦など望めないだろう。戦が有ったとして、その時に自分が戦場に立てる体か、保証など無い。

 土竜の真似をして地下を進むのは、華々しい戦いとは言えないだろうが――仰木は、この戦の総大将が、自分にこの任を与えた事に、感謝さえしていた。

 本陣守護もまた、誉である。然し戦に出たのなら、敵の首を取り、手柄としたい。


「……大分集まったな」


 抜け道に入ってから、三度ばかり、友軍と合流した。その度に仰木は、自分が先頭に立ち、その後に入るようにと指示を出した。

 全容は分からないが、もう半分も進んだだろう。推測が正しければ、その内、何処か広くなった場所へでも出る筈だ。

 城内から出来る限り多くの者を逃がす為の抜け道――ならば、大勢で攻め上がるにも都合が良い。

 傾斜のついた地下道を進みながら、仰木の昂揚は未だに静まらなかった。

 仰木は、私生活に於いては善良な人間であるが、戦場ではその限りでは無い。寧ろ、罪なき民草を手に掛ける事さえ、なんとも思っていないのであった。

 狭霧兵部の悪逆ぶりには、眉をひそめる事も有る。然し概ね、その方針には賛同している。

 逆らう者が居るから、戦は起こるのだ。いや、逆らう者が居てくれるからこそ、戦は起こるのだ。

 仰木は一片の憎悪も無く、任として、功の材として、比叡山城中の悉くを皆殺しにする腹積もりであった。


「お……」


 そうして、兵の先頭に立って歩いていた仰木は――ぬかるみに足を取られ、躓いた。


「仰木様」


「よい、大丈夫だ」


 後ろの兵が助け起こそうとしたが、それを制し、自分で立ち上がる。

 が――再び歩き出そうとして、足元の違和感に気付いた。

 土が濡れている――湿っているのでは無く、はっきりと濡れている。

 日の当たらぬ地中だ。坑道には冷気が満ちており、水が土に浸みれば、寧ろ凍り付きそうなものである。

 奇妙がどうしても看過できず、仰木は地面に触れ、指でその水気を拭い取り――青ざめた。


「退けっ!」


「は……?」


「全体、戻れ、戻れぃっ!」


 決断は迅速であり、また誤っても居なかったが――惜しむらくは、気付くのが遅かった事。後方にずらりと連なる兵士達まで、その声が届かなかった事であった。

 その時、仰木の前方――つまりは城内側、傾斜の高所より、大量の液体が流れて来たのである。

 粘性が水より高く、重い液体――そしてその、独特の臭いを吸い込めば、兵士達は皆、それが何であるかを知った。

 油。

 魚油も、獣の脂も、植物から採った油も、何もかも混ぜて嵩を増した油が、増水した川の如く流れて来るのである。


「う――うわああああぁっ!?」


 後方の兵士に至るまで、皆、その意図を悟った。

 進んできた道を戻り、抜け道を出ようとするも――数十間か、或いは百間以上も進んで此処に至った。瞬時に抜け出すなど叶わぬ事だ。

 寧ろ、狭い坑道の中を、大勢が押し合うように逃げようとした事と――足元を流れる油が為に、その大半が転倒し、ろくに立ち上がる事さえ出来ずに居た。

 仰木はこの時、ぼんやりと悟った。

 自分だけでは無い。

 西側でも、南側でも、同じように抜け道に入り、攻め上がろうとしている連中が居る。其処でも全く、同じ事が起きているに違いない。

 そしてまた――戦場にはそぐわぬ、こんな事まで思った。


 ――せめて、一人でも多く助かれば。


 その祈りも虚しく、坑道に流れ込んだ油に、火が放たれたのであった。


 元より抜け道という代物が、数か月を経て張り巡らされた罠であった。

 攻め来る経路を特定し、また進軍速度を緩めて葬る為の、巨大な棺が、この抜け道であったのだ。

 城中の油という油を、開戦より一所に集めて節約し、その備蓄を一滴残らず抜け道に注げば、大量の油は傾斜に沿って、抜け道の中へと流れ広がる。

 そして城内から、その油へと火が放たれたのだ。

 それは、拝柱教が語る地獄と比しても、なんら遜色のない光景であった。

 光も届かぬ坑道の中を、炎が赤々と照らしたが――その中で踊るのは、四方合わせて千を超える兵士達であった。

 老いも若きも、男女も問わず、功を上げんと攻め寄せた兵士達が、油に塗れ、炎に包まれて踊り狂っていた。

 進むも出来ず、退く事も出来ず、他の兵士と縺れ合って転倒した侭、共に黒い炭と成り果てた者が居た。

 土壁に爪を立て、地上へ逃れようと叶わぬ抵抗をしながら、その形の侭に燃え尽きた者が居た。

 仰木陣内はただ一人、後方の兵士達とは逆に城内目掛けて進んでいたが、十歩と進まず焼け死んでいた。

 最後尾に居た者は、数人ばかりは、どうにか炎に追い付かれる前に抜け道の外へ出たが――それ以外は悉く、身を焼かれて悶え死んだのである。

 喉も、肺まで炎に焼かれながら、然し耐え難き苦痛に上げた悲鳴が束となり、山中に、比叡の城中に響く。その声だけでも、永く悪夢に苦しむだろう程の、悍ましい音であった。

 その、地獄の釜が蓋を開けたかと思わん程の音は、地上から攻め寄せる政府軍の耳にも届いた。まして総大将の冴威牙は、人の比にもならぬ鋭敏な嗅覚で、地下の兵士が燃える臭いをさえ嗅ぎ取っていた。


「……っ、ぉ、ぉおあっ……!?」


 言葉にならぬ呻きを上げ、冴威牙はその場に立ち止まった――比叡山城目掛け、再び攻め寄せる軍の先頭に冴威牙は居た。


「さ――冴威牙様、如何なさいましたっ!?」


 副官の紫漣が、横から飛び付くように冴威牙を揺さぶるが、冴威牙が顔色を取り戻す事は無く、逆に飛び付いて来た紫漣の、腰に腕を回したのである。


「紫漣、飛べっ!! 速く!!」


「は――!? っ、はいっ!」


 主の言葉が、どういう意図で発せられた者か、紫漣は気付かなかったが――幸いにして彼女は、命とあらば思考より先に実行できる女であった。冴威牙一人の重さが増えた所で、紫漣の翼は、易々とその体を空へと舞い上がらせた。

 この時、地中の坑道内では――火種は油と死体が残っているが、空気が殆ど残っていない状況にあった。更に、炎が生んだ熱が、長い冬で凍結した地面を溶かしていたのである。

 凍った地面を急に暖めると、どうなるか――柔らかくぬかるむ。

 つまり比叡山は、〝地中に大きな空洞が有り〟〝地表は水を含んで硬さを失い〟――更には〝積もった雪と武装した兵士の重みを受け〟たのである。

 轟と、山が鳴った。

 城を取り巻くかなりの広範囲で、地面が陥没したのである。

 城から離れれば離れる程、陥没の規模は大きかった――坑道が網の目状に、より広がっていたからだ。

 大量の土が坑道に落下し、地中で燃え尽きた屍を埋め、落下の衝撃が山を揺らす。

 平地のようになっていた箇所は、雪が土と共に陥没しただけに留まったが――斜面は、より壮絶な光景となっていた。崩れた土と雪が、雪崩となって斜面を駆けおりたのである。

 地上を行く兵士の内、数百人ばかりが、この雪崩に巻き込まれた。雪と土砂の中に埋まった兵士の、ある者は比叡山の麓まで押し流されたのである。


 ――焼き殺す。


 狭霧紅野は、確かに果たしたのであった。


「が――がああああぁっ……!! くそ、くそがァッ!!!」


 地形さえ変わり果てた比叡山と、ずたずたにされた陣形を――冴威牙は上空から見下ろし歯噛みした。

 もはや己が望むような、正面から力で押し通る戦は出来ぬのだと――焼け焦げた死臭が、嘲笑と共に伝えていた。






 比叡山の東側――遥か後方で、爆音めいた崩落の音を聞きながら、ひた走る影が有った。

 黒で固めた衣服の、少女であった。

 三尺の黒髪は、屍から掻き集めて繋いだ即席のかつら。得物は、これ見よがしに刀を差してはいるが、背に括り付けた短槍こそが本命である。

 幾人かの兵はこの少女を見て、〝黒八咫が城を出た〟と言い、伝令は冴威牙にそう告げたが――否。

 狭霧紅野は、己の策が成った事を知って、かつらと似合わぬ服を脱ぎ捨て、元の白髪に白備えの、死に装束とさえ見える姿に変わった。

 砲撃までの猶予は無い――きっと一度は、城内への砲撃があるだろう。それは止むを得ない。

 だが、その次は無い。紅野は必ず、巨砲〝揺鬼火〟を沈黙させんと決意していた。

 紅野には、勝算が有った。

 それは、狭霧兵部の嗜虐癖が、自分に向けられているのだという確信から生まれたものである。

 何故と問われれば、そういう男だからだと返す。それ以外に答えは無い。

 この戦に於いて狭霧兵部は、きっと前線に出ていない――出ようとしたかも知れないが、結局は取りやめた。何故なら、狭霧兵部が前線に出るという事は、紅野が望む事でもあるからだ。

 数でも質でも劣る比叡山の軍が、更に障壁までを奪われて勝ちを求めるなら――選ぶ手の一つは、狭霧兵部の暗殺である。事実、紅野は刺客を送り、そして狭霧兵部に出会う事すら出来ずに戻った。

 そしてまた、一夜で戦いを終わらせようという考えにも無い。寧ろ、長く自分が苦しむ姿を夢想し、愉しみさえしているのではないか。

 〝揺鬼火〟の砲撃に対しても、紅野がどう考えてどういう手を打つか、狭霧兵部なら気付いている――気付いている筈だと、紅野は父を信頼している。

 最強の札である雪月桜は、城から動かせない。だが、他の誰かに任せる事もならぬなら、必ず紅野自身が動く。

 となれば――きっと狭霧兵部は、〝揺鬼火〟の近くに居る。

 砲を止める為に、城からのこのこと出てきた総大将を、自分の手で嬲り捕える為に、数多の罠を用意しているだろう。


「残念だったな……!」


 その程度、承知している。

 狭霧兵部と一騎討ちをして、必ず自分が勝てるなどと、紅野は思っていない。まして周囲の兵士も合わせれば、勝ち目の無い戦いだが――〝爆薬はまだ残っている〟のだ。

 紅野は、義足と、それから胴巻きの中に大量の火薬を仕込んでいた。

 勝てずとも良い。狭霧兵部に一瞬でも近づけば――五間の距離まで近づけば、諸共に吹き飛ばせるだけの、舶来の高性能爆薬である。

 狭霧兵部さえ仕留めれば、この戦は終わる。一人の狂人の娯楽が為、始まった戦争であるのだ。そうなれば、総大将である自分など、居なくなろうと構わないと――そう、紅野は思っていた。

 あと一里も行けば、砲の元へ辿り着く。

 不思議と体は軽い――死にに行く為に走っているのに、力が溢れて来る。背負う物を降ろしたからなのかと、紅野は自嘲しながらも速度を上げ――


「……っ!」


 前方に、見慣れた姿を見て、足を止めた。

 石の上に雪が積もって、少し小高くなった場所に、狭霧兵部の側近である鉄兜の――吉野という女が立っていた。

 普段は狭霧兵部の横を、決して離れぬ女であるのだが、この時は他に部下も連れず、たった一人、其処に居た。


「紅野、久しぶりですね」


 吉野はまるで世間話でもするかのように言って、紅野へ向かって真っすぐに歩いて来る。

 武術の一つや二つは嗜んでいるような、少なくとも素人とは呼べぬ足取りであった。


「……ああ、久しぶりだよ、先生」


 紅野には、この女は、旧知の間柄である。

 軍学以外の殆どを、狭霧兵部は紅野に教えなかった。その代わりに、算術や読み書き、ある程度に長じては武技や魔術など、紅野に一通り教育したのが、この鉄兜で顔を隠した女なのである。

 そして――紅野は、十二か十三の頃には、この女より強くなっていた。

 背負った短槍に手を伸ばす。加減はせぬと、目で語る。

 だが、吉野は、ざくざくと雪を踏みつけ、その槍の届く所まで近づいて、


「大きくなりましたね……」


 しみじみと語って――顎紐を解き、兜を脱いだ。

 兜の中に隠されていた、〝紅野と同じ白髪〟が、ざあと零れて、吉野の背に広がり――


「――――っ、ぁ、あ……? あ、そんな、そんな……!」


 何時も、黒い洞のようにしか見えなかった両目は――右は紅、左は蒼、鮮やかな光彩異色の目であった。

 まさか。

 呟き、首を振れど、疑いようもない。

 年齢の差はあれども、鏡を見るようであった。


「そんな、嘘だっ……!」


 紅野は、母を知らない。自分が生まれて直ぐに死んだと聞かされていたからだ。

 それが――何も語らずとも、分かる。

 生まれついての、老人のような白髪も、

 人と明らかに違う目の色も、

 全て、納得の行く形で其処に居るのだ。


「ずっと……ずっと、こうしたかった……」


 狭霧吉野は、娘の体を、正面から抱きしめた。紅野が生まれてから、ただの一度と受けた事の無い――肉親からの抱擁であった。


「嘘だ、そんな……だって、死んだって、ずっと」


 信じられぬと、紅野は幾度も繰り返す。

 だが――己の目が、血が訴える。

 これは母だ。死んだと聞かされていた母が、此処に生きていて――今、自分を抱き締めている。

 亡霊の類では無い。暖かい血だけが生む体温が、厚い衣を通してさえ伝わって来る。


「ずっと見ていましたよ……小さくって、蒼空に比べて頼りなかった貴女が、私より強く賢くなるのを。立派になって……」


 紅野は、狭霧兵部と戦う事に、なんの迷いも抱いていない。肉親の情も沸かぬ相手であるからだ。

 狭霧兵部は父親ではあるが、父親から子へ与えられるべき愛情など、ただの一度も受けた事が無い。

 だから――紅野は、心のどこかで、自分は〝その程度〟の存在なのだと思っていた。


「何でっ、なんで今更っ……!」


 見守られていたのだと、初めて知った。

 人の腕に抱かれる安堵さえ、初めて知った。

 胸の内から、自分でも気付かなかった恨み言が、幾らでも湧き出して来て――そのどれも、声にならない。

 本当は、どれ程に言葉を並べ立てたかったか。

 戦うのが怖かった、だとか。

 一人でいるのが寂しかった、だとか。

 何千人の命を背負うのが苦しくて、息も出来ない程だった、だとか。

 戦う度に増える傷だって、本当は痛くて、目を背けたくなる程に辛いもので。

 そういう弱音を吐いても、受け止めてくれる人間が居るという事を知らなかったから、ずっと黙っていただけだったのだ、と。

 それを、言えなかった。生まれてからずっと、そういう事は言わないで生きてきたから、どうやって吐き出せばいいかも知らなかったのだ。

 代わりに、たった一言、


「おかあさん……」


 母の温もりを抱き返し、雪の上に膝を着いて、紅野は泣き崩れた。

 自分が何の為に走っていて、今から何をしようとしていたか、紅野は全てを忘れた。

 もう戦いなど、どうでも良い。

 誰かに称賛される必要も無い。

 欲しかったものが何なのか、手に入って気付いた。自分は――


「――学ばない子」


 思考を掻き消す、声がした。


「えっ……?」


 とすっ、と。紅野の背に、短い針が突き刺さった。

 紅野は知る由も無いが、この針に塗られていたのは、言うなれば一種の麻薬であった。

 即効性が強く、視界が歪み、正常な思考力を奪い――過剰に摂取すれば、人として壊れる。

 そういう薬物が、針を通じて血管から、紅野の体に浸みこんで行った。


「ぅあ……っ!?」


「紅野、本当に大きくなって……可愛い子。和敬様も、貴女が立派になった事を喜んでてね」


 足をふらつかせ、立つ事すらままならない紅野の耳元へ、吉野は口を近づけて、


「あの人、そろそろ孫が――次の玩具が欲しいんですって」


 しゅる、と紅野の首に腕を回す。

 抵抗する力を削がれていた紅野は――あっけなく、落ちた。

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