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第77話

「ちょっと裏に来い」。

矢島は部室から出てきた和人を見ると、部室の裏に呼んだ。

「はい。」

和人の顔から一瞬に血の気が引いた。

(やっぱりショルダーチャージだ・・・。それと最後のロングシュート。)

和人は矢島の後を恐る恐るついて行った。


その光景をグラウンドの中から英が見ていた。

(ちょっと厄介だな。3年になるまでは大人しくしておこうと思っていたのに。)

英は足元のボールをゴールに蹴りこむと、部室の裏へ向う二人を追った。


「一昨日は恥をかかせてくれたな。」

部室の裏で、矢島が口元をゆがめて冷やかに笑った。

「いえ、そんなつもりは・・・。」

「まさか1年坊に突き飛ばされるとはな、俺もなめられたもんだ。」

そう言いながら、矢島はちらっと和人の後ろに目をやった。

「お友達が心配して見に来たぞ。」

矢島は表情を変えず、和人が後ろを見るように、あごをちょっと上げた。

振り返ると、英と徹也が少し離れた位置でこちらを窺うように立っていた。

「3対1か、それでも俺は負ける気がしねえな。やってみるか?」

矢島が和人を睨みつける。

「・・・。」

「びびってんじゃねえぞ。まったく・・・、サッカーのときは体を張ってプレーするくせによ。」

矢島の顔が少しゆるんだ。

笑い方がさっきとは違ってとげとげしくない。

「まあいい。ところで、お前を呼びだしたのは昨日のゲームのことじゃない。ボールを取られた腹いせにそいつを殴るなんて、そんなかっこ悪いことができるか。」

矢島は部室の壁から3mほど離れたブロック塀にもたれ、和人にもっと近づくように手招きした。

和人は緊張をまだ解いていない。

だが、一昨日のことではないとすると、矢島は何を言おうとしているのだろうか。

和人は矢島の次の一言を待った。


「中森ゆきのことだ。」

「ひぇ?」

矢島の意外な言葉に驚き、和人はすっとんきょうな言葉を発した。

「ぷっ、はははは、なんて声を出してんだお前は。そんなにびっくりしたか?」

「いえ、その、何で・・・。」

「何でゆきのことを知っているのかって?ゆきは俺の妹だ。といっても血のつながりはないけどな。」

「妹、ですか?」

和人にとってそれは二重の驚きだった。

「昨日お前とゆきはデートしたんだろ?知り合ったばっかりですぐにデートするなんて、お前も結構ず太い神経してるな。」

「いえ、それはゆきさんが強引に誘ったから・・・。」

「ゆきが?」

矢島は少し驚いたような顔をした。

「へえ~、ゆきが?そういやあ、あいつも最近性格変わったからなあ。・・・それで?どうだ、ゆきのこと好きなのか?」

「ま、まだそこまでは・・・。それにゆきさんもまだ俺のこと好きってわけではないようだし。」

矢島がボサボサの頭を右手で掻いた。

「わっかんねえな~、お前ら。好きでもないのにデートするなんてよ。でもまあ、一応お前とゆきは付き合っているってことだろうから、ま、ゆきのことよろしく頼むわ。そのかわり、お前が誰かにいちゃもんつけられたら、俺に言いに来い。ちょちょいと振り払ってやるからよ。」

そう言い終わると、矢島は英たちの方へ歩き出そうとした。

「ちょっと待って下さい。あの・・・。」

和人は意を決して矢島に尋ねた。

「矢島さんとゆきさんは、血がつながっていないけど兄弟って、どういうことですか?」

「恵みの園では、みんなが家族なんだよ。」

「え?」

「え?って、恵みの園のこと、もしかして聞いていなかったのか?やべえ、まずいこと言っちまったかな。ゆきには俺が言ったこと内緒だぞ、いいな。」

矢島はしまったというような顔をして、和人を置いて歩きだした。

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