第55話
「やったぞ!やった!この俺が西城に合格したんだ!」
二人に駆け寄りながら英が飛び跳ねた。
「マジか!」
徹也が目を丸くして和人の方を見る。
和人は微笑みながら右手のこぶしを固め、英へ右腕を突きだした。
英の腕が和人の腕と交差する。
「やったな、英。きっと受かると思ってたよ。」
「俺は五分五分だと思っていたんだ。本当に良かった。はあっ・・・。」
英は全身の力が抜けたようにだらんとなった。
「それにしても・・・何が『掲示板を見る勇気がない』だよ。」
「俺も何かおかしいとは思っていたんだけど・・・、まんまと一杯食わされたな。」
和人と徹也が英をにらんだ。
英がペロッと舌を出す。
「俺の運命のわかれ道だ。自分で確認するに決まってるだろ。」
「で?俺たちの番号は見たのか?」
和人が最も気になっていたことを尋ねた。
「いや、見てない。」
英の返事はそっけない。
「おいおい、それを先に言えよな!」
徹也が血相を変えて駈け出した。
和人も後を追う。
「大丈夫だって。俺が受かったくらいだから。」
後ろの方で英ののんきな声が聞こえた。
「英、和人にはさっき言ったんだけどさ、俺、西城に行こうと思う。」
和人と徹也の合格を確認し、3人は駅へ向って歩いていた。
「本当か?徹也。」
「ああ、3人とも合格すればそうしようと考えていたんだ。」
「ひゅ~、いいじゃんいいじゃん。今日はなんて素晴らしい日なんだ!」
「でも徹也、部活は何をするんだ?俺たちはサッカーに決まってるけど。」
和人が尋ねた。
「何でもいいや。俺も高校では何かしないといけないって思っていたんだ。」
確かに徹也の運動神経ならどのスポーツでも成功しそうだ。
「ん!?」
英が急に変な声を張り上げた。
和人と徹也が英の顔を見る。
「そうだ、それだよ!サッカー部だ。徹也が入るのはサッカー部に決まった!」
「まてよ、俺がサッカーはあんまりうまくないって知ってるだろ?」
「ゴールキーパーだよ。お前の身長と運動神経ならもってこいだ。何でこんなことに今まで気づかなかったんだろう。これで打倒北高に一歩近づいたぞ!」
英は有頂天になったが、和人は英の言葉が少し引っかかった。
「徹也の身長って、俺たちとそう変わらないじゃないか。別にキーパー向きってわけじゃないと思うけど。」
「確かに、今は普通だけど、これからどんどん伸びてくるぞ、高3になったら185センチくらいになるはずだ。」
「そんなばかな。俺の親を見てみろよ、日本人のごく平均的な身長だぜ。」
「でも、間違いなくお前はでかくなる。夢で見たんだ。」
「夢?」
和人が英の言葉ではっとした。
「夢か。夢の中で徹也はサッカー部だったのか?」
「いや、それはわからない。ただ高3のときの夢にでかくなった徹也がでてきたんだ。」
「なんだよ、夢なんかで決めつけるなよ。俺はサッカー部には入らないからな。」
あきれ顔の徹也とは対照的に、和人と英の眼は輝いていた。