表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/99

第43話

3人は20分ほどで緑丘駅に着いた。

受験会場の西城高校がある町田駅までは電車で15分かかる。

そこから5分歩けば受験会場だ。

電車の待ち時間を考えても、受付終了時間には十分に間に合う。


「英、何度もあくびをしているってことは、寝不足なんじゃないか?」

「あくびっていうのは緊張しているときにも出るもんなんだよ。俺にとっては今日が一世一代の大勝負なんだ。受かって当り前のお前や、落ちてもどうってことない徹也と一緒にするんじゃねえ。」

「ということはちゃんと寝たんだな?」

「寝たよ。なかなか眠れなかったけど。」

「何時間くらい眠ったんだ?」

英が少し下を向いた。

「・・・実は4時間くらいなんだ。寝ころんだのは早かったんだけど、なかなか寝付けなくて眠ったのはおそらく2時半すぎだな。」

「大丈夫かよ。」

「コーヒー飲んできた。」

「それで最後までもてばいいけど。」

「休憩時間にも飲むよ、ほら。」

英は切符の自動販売機の前で鞄を開けて、和人と徹也に中身を見せた。

缶コーヒーが3本入っている。

「そういうところはちゃっかりしてるんだよな。え~と、250円分買えばいいんだな?」

徹也は財布を取り出し、販売機にお金を入れた。

「250円ね、え~と財布、財布・・・。」

英が財布をズボンのポケットから出そうとしたとき、鞄が肩から外れて床に落ちた。

ガチャン、コロコロ・・・。

缶コーヒーが床に散らばる音だ。

英が鞄を閉めていなかったために、缶コーヒーが2個、鞄から飛び出し床を転がってしまった。

「わっ、やべえ!和人そっちのを取ってくれ。」

英は真下に落ちているのを取ろうとしたが、販売機の前は人だかりができていたため、缶コーヒーは何人かの足に当たり3メートルほど離れた所まで移動した。

「ちくしょう、だせえ。」

言いながら英は小走りに移動して缶コーヒーを拾った。

和人もあわててもう一本を拾う。

「ほら、英。同じ学校のやつに見られなくてよかったな。」

和人が英に缶コーヒーを渡した。

「まったくだ。早く来たのが幸いしたぜ。」

英は缶コーヒーを受け取り鞄に入れると、今度はすぐに閉めた。

徹也はすでに切符を買い、改札の方で待っている。

「徹也のやつ、他人のふりをしているぜ。友達がいのない奴だな。」

「いいから急ごうぜ英。」

和人と英は切符を購入し、徹也の方へ向った。


「あははは、うけたぞさっきのは。」

改札を抜けた後、徹也が立ち止まり笑った。

「いいから行けよ、できるだけ早い電車に乗ろうぜ。」

英は少しむっとしたようだが、話に乗らなかった。


階段を降りていると電車が止まっているのが見えた。

発車のベルがちょうど鳴っている。

「おっ、ラッキーだ、乗り込もう。」

徹也の声に和人と英が頷く。

3人は駆け出し、ベルが鳴り終わらないうちにその電車に乗り込んだ。

電車の中の椅子はすべて空いておらず、通路にも人がぎっしりと立っている。

3人は仕方なく扉近くの吊皮を握った。

それから町田駅までの15分間は3人ともほとんど無言のまま過ごした。


「はあ~、息が詰まるかと思ったよ。」

町田駅を出ると、英が背伸びをした。

「でもまあ、かえって眠くならないでよかったじゃないか。」

「さすがポジティブ和人君、言うことが違うねえ。」

「からまない、からまない。ところで今さらだけど英、忘れ物はしてないよな。」

徹也がふと気になったことを聞いた。

「当たり前だろ、さっきも言ったように一世一代の大勝負なんだ。何回も点検したよ。」

英は歩きながら鞄を開けた。

「筆記用具に受験票、筆記用具に・・・。あれ、受験票が、受験票が・・・。」

英の声がか細くなった。

顔も見る間に真っ青になっている。

「まさかテレビドラマじゃあるまいし、受験票がないなんて言わないよな?」

徹也が英の顔を見つめた。

「・・・ない。受験票が、本当にない。」

英が茫然自失の表情でつぶやいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ